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こいこい荘はそこを曲がったところですよ  作者: 蜂蜜
Q.これはあなた(のorが)?

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15/29

いえ、私はコックリさんではありません

七海視点

後書きは前原視点

無事に舞の奉納を終た翌日、まだ私達はぐったりしていた。

昨日は暑すぎた。

時間をずらして朝方開催したが、暑かった。

緊張も相まって危うく熱中症になるとこだった。

来年はもう少し考えて貰いたい。


えんさんが買ってくれたお高いアイスをつつきながら、みんなでクーラーの効いた部屋でまったりする。

お昼ご飯どうしようかな。

と悩んでいた所、えんさんが今日も出前をとろうと提案してくれた。

やったー、今日は流石に作る気力なかったんだよね。


「何にしますー?」

「ピザはピザ」

「奢りですよ。もっといいのうなぎとかどうです?」

「ハンバーグ」

「それなら私ラーメン」


うーん迷う。せっかくならいつも食べないの食べたい。

みんなで迷っていると、ピンポンが鳴る。

みんなそれぞれ互いを見るが誰も動かない。

グーの形の手を出せば、みんなでシャンケンが始まった。

勝負は一瞬、私の一人負け。

しぶしぶ、玄関に向かう。

ガラガラと扉を開ければ、同い年くらいの知らない綺麗な女の子が立っていた。


「妾を待たせるでない」


そう言うと勝手に家に入ってくる。

え?誰?

あとちょっと浮いてない?

固まってるうちにその子がリビングに行くので慌てて追いかける。


「兄上お久しゅうございます」


えんさんの妹さんなのか、そうえんさんに挨拶するが無視されてる。

縁さんはあわあわしてどうにかしようと言う気配は感じたが、途中で諦めたのか大人しくなった。


「私は君とは縁を切ったはずだよ」

「言葉だけではありませんか」

「じゃあ本当に切ってしまおうか。

勝手に入ってくるなと言ったよね」

「なので呼び鈴というものを押して入れてもらいました」


なんで入れたのって顔されたが、そんなの知りませんよ。

開けたら勝手に入ってきたんです。


「まぁまぁ落ち着いて、まずはここどうぞ」

「触るな無礼者、妾が何者かわかっておらぬようだな。

これだから人間風情は好かぬのだ。

そこの犬臭いお前、茶はまだか?」


碧君を指さして名指しだが、やめたがいい。

碧君お茶入れるの下手だ。本人気づいてないけど。めっちゃ苦い。

犬臭いと言われて自分の匂いを嗅いでいた碧君がお茶を入れに行く。

名指しした方が悪い、後は知らない。


「またお前はそうやって人を見下すから、小さいままなんじゃないか?」

「兄上に言われとうございません。

人間の女など囲ったところでたいした役にもたちますまい」

「違う、違うよ縁、囲ってないだろ。オープンだろ。

家主、そう家主として収入のために置いてはいるけど、それ以上でもそれ以下でもないだろう」


え?今私達えんさんの愛人って言われてます?

嘘ですよね。

ごめんなさいえんさんは優しい人ですが、タイプではないです。

縁さん落ち込んでるように見えますけど、私達のことそんな風に思ってないですよね。


「おい、   !いい加減にしろよ。

お前は縁をいい加減義姉として認めろ」

「その女に何ができていると?

証明さえあれば妾もすぐにでも認めますが」


縁さんが下を向いて今にも泣きそうな顔をした。

その横でえんさんがあわあわしている。

これがあれか世に言う小姑いびり。


「小姑だ」

「小姑ですね、しかも性格悪い方だ」

「えんさん頼りな、それにこんな小姑いたら離婚待ったなしだよね」

後ろで四人でコソコソ言ってたのが聞こえたらしい。

小姑さんがワナワナ顔を真っ赤にして震え出した。


「誰が小姑じゃ」


一斉に小姑さんを見る。

顔を真っ赤にして、さらに一段上に浮いた。

自然とみんなの目が上になる。


「妾は神ぞ。名を          と申す。

この名は知っておろう。存分にひれ伏すが良い」

「すいません、お名前聞こえません」


美琴さんの言葉に頷く。

正確には何か言ってるのは聞こえるが、聞き取れないのだ。

神様のお名前だから人間には聞こえないのかもしれない。


「          だ!

ちゃんと聞いておるのか」

「すいませんやっぱり聞こえません」

「これだから人間風情は!」

「まぁまぁそう怒らないで。

ご指名いただきました碧です⭐︎

姫のためにお茶入れてまいりました!

さぁグッと飲んでー、一気にのんでー、それ一気一気」


あ、また碧君ホスト動画見たな。

ホストのマネして悪影響しかないから禁止になったのに。


「こら碧君ホスト動画見たらダメって言ったでしょ」

「でもあれドロドロしてて面白いんですよ」

「ダメです。お兄さんに言いつけるよ」

「はーん兄なんて怖くないですよー」


案の定美琴さんに怒られた。

でも最近抑止力だったお兄さんの威厳が落ち言うこと聞かなくなって来た。


「じゃあ歩君に言うよ」

「それだけはそれだけはやめてください。あいつ絶対ネチネチしてくる」

「じゃあもう見ないのよ」


しぶしぶ碧君ははいと返事した。

歩君良い人なんだけど、碧君は怖いみたいだ。


「妾を無視するなー!」

「あはは、で結局お名前なんとお呼びしましょうか?」

「葵で良い」

「えー自分碧だから似てますねー。

で、葵様は何故わざわざ人間風情のいるこの家に?」

「そ、それはそなたには関係ない」

「それってズバリ恋の悩みですね」

「何故それを」

「ははは勘です」


いいえただの占い師動画のマネです。

当ててしまった手前どうしようってなってる碧君は放っておく。

そう言う胡散臭い動画も禁止されてたのに見るのが悪い。


家から解放されたからか、ここに慣れたからかあるいは両方か最近碧君ははっちゃけている。

お兄さんに怒られても知らん顔で、そろそろ歩君の出番らしい。

同じ高一とは思えないほどしっかりしてるな歩君。


「妾はどうしたらもてはやされる?

いい加減婚姻を結ばねば周りから笑われておるのだ」


神様も世知辛い。

でもね葵様。その相談してる人モテるけど恋愛に関してはからっきしですよ。

海で棒拾ってきて振り回す系女子高生です。

愛だの恋だのより唐揚げの話の方がテンション上がる系です。


「……コックリさんに聞いてみます?」

「其奴は誰ぞ?」

「誰って言われると誰なんだろう」

「それ碧さんがコックリさんしいだけでは?」

「それもある。ここでしたらマジもんきそうだなって」

「ダメですよ葵様。コックリさんはただの遊びです。

それより、既婚者にアドバイス貰ったほうがいいですよ」

「そ、そうか」


縁さんはすっかり怯え、それを感じたえんさんは葵様を睨んでる。

あ、ダメっぽい。

またピンポンが鳴ったので、この空気に耐えられずこれ幸いと玄関に逃げる。

戸を開けると両手にいっぱいの荷物抱えた歩君と前原君が立ってた。


「もうお昼食べた?

唐揚げ作り過ぎたから貰って欲しいんだけど」


お昼はまだだったので首を横に振る。


「いやー野郎で唐揚げパーティーしてたんだけど、飽きちゃって、抜けて来たんです。

前原君はさっきそこであったのでついでに連れて来ました」

「あーその昨日凄かったけど熱中症で倒れてないかって思って。

今更だけどスポドリ」


ありがとうとペコリとお辞儀し、袋を受け取る。

前原君は帰ろうとしたので、寄っていくように裾を掴んで促す。

二人をリビングまで案内する。


「碧さーん、

昨日ぶりですね。

昨日は完璧、めっちゃ綺麗でまさに天女のようでした。

もっと感想言いたいですけど、まとまりつかなさそうなんでLIMEでまとめたの送りますね。

で、今日唐揚げ作って来たんですが、いかがですか?

僕的には生姜がおすすめでって人浮いてる。

はぁ、大丈夫な感じです?追い出します?」

「さっきから妾をなんじゃと思っておる!」

「まぁまぁ、一緒に唐揚げ食べて考えましょう」

「碧さんとりあえずこんにちはのハグしましょう。

それでホスト動画見たのは聞かなかったことにしますので」


碧君はびっくとしながら歩君のハグを受け入れる。

いつもより長めなのは気のせいじゃない。


「美琴さん…いつ言ったんですか」

「葵様が来る前くらいかな、碧君がお約束守らないから」

「うー最近、君自分のこと子ども扱いしてないかな?」

「碧さん、僕はいつでも大人扱いしていいんですよ」

「……大人しくします」


碧君の負けー。

ニコニコと歩君は碧さんを離し、紙袋の中からタッパーを取り出す。

多分効果音つけるなら唐揚げドーン、焼き飯ドーンって感じだ。

彩、栄養なんだそれ。気にしないで黙ってこれ食え!って感じのザ漢飯。


「これはなんぞ」

「唐揚げです。鶏のお肉を味付けして揚げた料理です。

葵様もいかがですか?」

「妾は、そのようなもの食さぬ」

「えー美味しいのに」


葵様はソワソワとしながら宙に浮いている。

なんかちょっと可愛い。

お皿の準備をして取り分け全員に配る。

それでも余るとは、どんだけあげたんだろう。


「あ、兄上も食すのか」

「当たり前だろ」

「でわ、妾も一口頂いても良いぞ」


浮いてる葵様に小さめの唐揚げと一匙分の焼き飯を小皿に取り分け渡す。

それを恐る恐る口に入れると葵様が目を開いて止まった。


「なんだこれは今まで食したことない味じゃ。

そこの者歩と申したな、褒めてつかわす」

「ありがとうございます。

で、結局あの方はどなたで?」

「葵様は神様でえんさんの妹さんらしいです」


改めて聞くとパワーワードすぎるなーと考えながら唐揚げを食べていたが、ふともう一回さっきの文面を思い出してみる。

葵様=神様、葵様とえんさんは兄妹、つまりえんさん=神様なのでは?!


隣にいるかりんちゃんに、必死に手振り素振りで伝える。

伝わったようで、かりんちゃんもあ!って顔をした。


「えんさんも神様じゃないですか!

あの神社で働いてるって神様としてですか?」

「えーまーそーかなー」

「だから歳とらないのか!」


アリスちゃんが閃いたって顔してるけどそこじゃない。

身近に神様とか気付くわけない。


「あ!じゃあ神様なら巫女舞の時期ずらしてください!

暑くてえんさんも舞を見る余裕ないですよね。

こっちは命かかってるんです」


碧君の言葉にみんな頷く。

昔からの伝統だからでは済まない。

昔と現代では暑さが違うのだ。

日差しなど暑いじゃなくて痛いだ。

暑過ぎて祈りどころじゃない。

神様だってこんな暑い中呼ばれても迷惑でしょうに。


「えー私が神って知って、まずするお願いそこ」

「そこ以外あと何願うんですか?」


はいと手をあげ、スマホのメモに打ち込みかりんちゃんに読んでもらう。


「靴下の裏返して洗濯物に入れないで欲しい。

わかる!あれ地味に面倒だよね!

ということでえんさん、靴下を裏返しで入れないでください。

あ、あと私達と同じシャンプー使うのやめてください。

おじさんから甘い匂いするのなんか嫌」

「じゃあ私も、お茶ずずって飲むのやめてください。

おしぼりで顔拭くのもおじさんだからって我慢してたけど外だとこっちが恥ずかしいのでやめてください」

「ちょちょっとまって、もう神様云々の願いじゃないよね。

思春期の娘がお父さんに言うやつだよね。

これで洗濯物も別とか言われたら」

「え?別ですよ。一緒とかなんか嫌」


こっちを信じられない顔で見て来たので、黙って頷いた。

だってなんか嫌だし。

嫌いじゃないけどなんか嫌。

みんなもそうなのかなんか嫌と言いながらこくこく頷く。

しゅんと見るからにえんさん落ち込んだので申し訳ないと思うがなんか嫌だから仕方ない。


「さて、盛り上がって来たところでしますかコックリさん」


碧君はまだ諦めてなかったのか。

歩君の方を見ると、コックリさんでよく見る紙と十円玉を用意してた。

え?やるの?てっきり止めると思ってた。


「歩君ノリノリじゃないですかー」

「碧さん止めても一人でもするだろうし、それより僕が近くにいた時の方が安全だからね」


あ、うん。確かに。一人部屋でされて大変なことになるよりはマシだ。

なんて言ったって神様二人もいらっしゃるし。


「はいじゃーしますよ。

参加は僕と碧さんでいい?」


ありがとう歩君。むしろごめんね強制参加で。

私は絶対参加したくない。

二人はコックリさんコックリさんと呪文を唱え始めた。

すると十円玉がはいの方に進む。

え?マジで来たのこれ、すご!

碧君も嬉しそうだ。


「質問かーじゃあ葵様はどうして結婚できないの?」


おおーとそれはストレートすぎる質問じゃないかな碧君。

いつものデリカシーはどこに置いてきたのかな?

十円玉が行ったり来たりして、鳥居の方に行こうとしたところ、歩君が指の力で止めた。


「おいおい、帰んなよ。

まだ質問中だろうが。働けコックリさん」


歩君の低い声にビビったのか十円玉が止まる。

歩くーんちょっと出てはいけない面が出てきてるのでは?

お嬢様のかりんちゃんがビクビクしてるからその辺で。


「おーすごい。歩vsコックリさんが力勝負してる。

このままだとコックリさんが可哀想だから質問かえまーす。

葵様は結婚できますか?」


またしても鳥居に一直線なコックリさんを力ずくで歩君が止めてる。

碧君は呑気にこれもだめかーと言ってる。


「じゃあじゃあ、なんで帰りたいの?」


今度は文字の方にスルスルと動いた。

「に」「が」「お」「も」「い」

荷が重い。それはそうだ。神様のことを聞かれてもだよね。

それも婚活、普通の女性の相談でも荷が重いのに女神様になるとね。

なんか可哀想になってきた。


「もう返してあげたら」


美琴さんの言葉に反応したのか十円玉が動いてはいの周りを円を書くように回ってる。


「じゃあ最後に僕から一つ質問。

碧さんはホスト、怪しい占い師以外に何の動画を見ていますか?」

「はははー何言って、え、ちょっとコックリさん」


今日一のスピードで「き」「や」「ば」「く」「ら」とさした。

キャバクラかー、どうせドロドロ人間関係見て面白がってるな。


「はい、ではありがとうございましたコックリさんおかえりください」


帰るのも速かった。流れ星のように帰って行った。

よっぽどだったんだろうな。


「結局妾は婚姻できるのか?」

「あなた何故結婚したいのですか?」

「だから周りの者が妾を馬鹿にするから」

「周りのために好きでもない方と結婚するのですか?

どんな方でもいいのですね」

「それは良くないが…」

「これだって言う方がいないのなら別にいいのでわ?

海外には結婚しない女神様もいらっしゃいますよ。

結婚できないのではなくしないのです。

葵様もできないのではなくしないのだと言うスタンスでパートナーに頼らなくても一柱でも強いと見せつけてみては」


歩君のアドバイスに葵様も浮きながら考えている。

コックリさんより頼りになるのでは?


「でも、寂しいじゃろ妾だけでは……」

「家族と友達がいますって」

「…ぬ」

「はい?」

「おらぬ!」


歩君がえんさんを見るが、縁さんを背に隠し、ふいっとそっぽをむいた。


「あー何かご事情が?」

「葵はねシンプルにいって性格が悪いんだ。

我儘で、短気で、気に入らないと暴言暴力に出るし、趣味は拷問だ」


えんさんの言葉に歩君が唸る。

うん、ごめんね歩君。君に全部任せる。

私には荷が重い。

前原君の皿が空だったので、おかわりを聞いてみると、ポカンとしながらも気まずそうにはいと返事が来た。

わかるよ、意味わかんないよね。

皿に唐揚げと焼き飯を盛り付けて前原君に渡す。

意味がわからないって顔しながら食べてるのなんか可愛い。


「ではまず、短気を治されてみては?

イライラしたらその場を離れるとかゆっくり十秒数えるとかやり方は色々あります。

何故気に入らないと感じるのか考えたことは?」

「気に入らんもんは気に入らん」

「それはそうですが、僕が思うに寂しいからではないですか?

寂しいからこっちを見て欲しいから我儘言う。

寂しい自分を見てって暴力を振うのでは?

でもそれは悪循環ですよ葵様。

暴力はその方を遠ざけますし、我儘は嫌われ呆れられます。

それさえしなければ、僕の話を何も言わずに聞いてくださっている葵様は大丈夫です。

趣味はその色々なので仕方ないですが、この際もう一つ増やしてみては?

さっき唐揚げを食べたことないと言われていたので、人間の食べ物を食べ歩きすると言うのもいいかもしれませんね」

「……そうか……その時は付き合ってくれるか」

「はいもちろん!碧さんと一緒にお供します」


しれっと碧君巻き込まれてる。

唐揚げ食べてた碧君がええ?自分?って顔になった。

仕方ないよ、丸投げしたの私達だし。

私には関係なさそうなので頑張れーと心の中で応援する。


「ふむ、なかなかためになる助言であった。

唐揚げのことも含め褒美をやろう」


キラキラ空中で光ったかと思うと歩君の元にストンと落ち刀の形になった。

真っ白い刀。

刀のことなんてよくわからないが綺麗だと思う。

歩君は苦笑いでありがとうございますと受け取っていた。


「それはなただの白刀ではないぞ。

神が打ったものだ。

人間の飾りの白刀ちは違い、実用刀だ。

お主も護身用に一振りくらい持っておくといいぞ」

「葵様、言いにくいのですが、今の日本だと歩君、持って外出ただけで捕まります」


かりんちゃんの言葉にみんな頷く。

綺麗だけど、正直貰っても…だ。


「そ、そうか。

でも一度渡したものを返せと言うのもなんじゃな」

「葵様、ありがたく頂きます。

ただ、身につけることは難しいのでここに飾ることでお許しください」

「うむ、許す」


さすが歩君落とし所が上手い。

一人心の中で拍手する。


「あの俺そろそろ帰ります」


前原君が申し訳なさそうに言ってきた。

え?もう帰るの?

まだ来たばかりなのに?

どこか悔しそうなのは気のせいではない。

何か気に触るようなことあった?

思わず耳を触りそうになってすんでのところでやめた。


「あ、じゃあ僕もおいとましますね。

では葵様、また。

碧さんは後でゆっくり聞きますので。

お邪魔しました」


と二人帰っていく。

まだ少しでも前原君といたくて玄関までついていく。

いつも邪魔しに来る碧君は歩君が怖くて来なかった。


「先に出るね」


歩君が気を利かせて二人きりにしてくれた。

何かないかな、引き止めたいが言葉が見つからず、前原君の腕をギュッと抱きしめる。


「どこ、か、いっしょ、にいこ」


前よりスムーズに喋るようになったが、まだまだ声が小さいので聞こえるように前原君の耳元で喋る。

私だってみんなと一緒じゃなくて二人きりでお出かけしたい。

ズルズルと前原君がしゃがむのでつられてしゃがむ。

私が掴んでない反対の腕で顔を隠すが、首まで真っ赤なので意味ない気がした。

可愛い、腕から手を離し頭をギュッと抱きしめる。

つむじにこっそりキスすると、バレたのかビックと体が揺れた。

抱きしめていた腕を掴まれ、向かい合わせで見つめ合う。


「かわいーことしてると襲うぞ」


真っ赤な可愛い顔で言われても説得力が無い。

それがまた可愛いのでニコッと笑うと、顔が近づいてきて口に何か当たる感触がした。

びっくりして固まってると前原君はこっち見ずにじゃあって言って帰って行った。

しばらくして帰ってこない私を碧君が迎えにきたが、真っ赤な顔した私を見て「前原めー」と怒ってた。

私も前原君めーとなってたので同調することにした。

今更だと思ったが、何か贈りたかった。

巫女さん姿の江口が見たいって思ってきたのに、そんな下心が恥かしくなるくらい綺麗だった。

何かしなきゃが次の日になってもおさまらなくて練習後にスポドリやらゼリー買って門の前をぐるぐるする。

スポドリ?今更すぎないか?これは当日渡した方が良くなかったか?

安いゼリーじゃなくてケーキの方が良くなかったか?

ってか俺来てよかったのか?

悩みすぎて中に入れないでいるところを武藤に会った。


「大丈夫、大丈夫。気持ちだよ」


と慰めて貰ったがなんかこの人にも負けてると思うんだよな。

行動力の差だろうか。

みんなから頼りにされてるし、俺もその一人だし。

察し能力が高く江口との仲を邪魔してくる例のあの人もタイミングよく回収してくれるし、なんだかんだで頼ってしまう。


こいこい荘に入ってからは開いた口が塞がらず、始終ポカンと成り行きを見つめるしかなかった。

え?人浮いてる?神様?

コックリさん?刀?何がどうしてこうなってる?

俺だけついていけないのが悔しい。

なんで武藤はそう平然としてられるんだ?

劣等感が押し寄せてきてどうしようもなかったので帰ることにした。

ここにいても俺空気だし。


玄関まで見送りに来てくれた江口と武藤が気を利かせて二人きりしてくれた。

どこまでも気が利くやつで、ムッとするが長くは続かなかった。

江口が俺の腕を抱きしめてきた。

何がって言わないが柔らかいのが当たってる。

その分距離も近く、布越しの体温が生々しい。

それだけじゃなくてあの可愛い声で一緒に出かけたいとデートの誘いを言われた。

内容もだが耳元で囁くように吐息混じりなのがエロい。

こんなの反則だろ。

ズルズルと座り込めば江口もつられて座り、何故か俺の頭を抱きしめてきた。

もう色んな意味で果てそうだ。

これ俺のこと好きだろ。いやもう好きに決まってる。


注意しても可愛い顔するから一秒にも満たないキスをした。

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