はい、海岸に落ちてました
碧視点
後書きは歩視点
夏だ、夏休みだー。
暑い、そしたら海だー。
ということでこいこい荘のみんなと海に来ている。
何故か誘ってもない人たちもいるが気にしない。
今日の自分の目標は海に入ることと西瓜割、メインは前原を邪魔する!だ。
前原のやつ色気づきよってからに。
七海ちゃんの友達の瑠美ちゃんと夢ちゃんは良しとしよう。
まぁそれだけだと悪い男が寄ってきては大変なので藤井と夢ちゃん彼氏も許可しよう。
だが前原、お前は駄目だ。
何自分の七海ちゃん見てデレデレしてんだ。
引っ込め!家帰れ!
「先輩も来てたんですね」
「何かな前原君、自分がいると都合が悪いのかな?」
「いえ、ただ確認しただけです。
にしても、先輩のとこ大所帯ですね」
「可愛いうちの七海ちゃんに何かあったら大変だかね」
まぁ予想以上に来たから自分もびっくりしている。
自分が誘ったのはこいこい荘のみんなだけだった。
そこから何故かえんさんが加わり(ここは保護者枠で良いとした)、どこで聞きつけたのか先輩が加わり(お財布要員と考えることにした)、アリスさんの彼氏が加わり(まだ認めてないけど仕方ない)、最後に何故か兄までついてきた。
一番最後の人は特に解せぬ。
そんな兄は今、傍から見ればば美琴さんをバックハグしてパラソルの下座ってイチャイチャしてるように見える。
実際は美琴さんを羽交締めにしてブルブル震えているだけだ。
せっかくの海きたのに、何やってんだかあの人。
暑い中、熱苦しいことされてる美琴さんが可哀想。
「本命の弟は来れなかったのが残念だよ前原」
「なにかあるんですか?」
あ、今こいつこっそりため息ついたな。
自分、先輩だぞ。
「七海ちゃんに紹介しようと思って。
そしたら絶対相性良いと思うんだよね。
数年後にはお義姉さんって七海ちゃんから呼ばれてるよ」
「はぁ、何言ってんすか?」
「ちぃ、ちぃ、ちぃ、前原君、うちの弟舐めてもらっては困るな。
うちで一番顔がよくて甘え上手なんだよ?
自分の顔が好きな七海ちゃんにはもってこいじゃない?
弟に愛囁かれて落ちない女はいないね」
前原が自分を上から見下げて威圧してきた。
自分より高いが所詮背だけだ。
それもたかだが10㎝。
睨み返していると、遠くから自分の名前を呼ばれた気がした。
聞き慣れない声に気のせいと思う。
「おい、なんか知らんが呼ばれてるぞ」
「知りません」
あきらか自分の名前だが、今、目をそらした負けたみたいで嫌だ。
七海ちゃんはウチの嫁にするんだ!
「碧さーん」
後ろからすごい衝撃がきたと思ったら抱きしめられた。
ちなみに衝撃がきたとき前にいた前原にあたりやつは倒れた。
ザマーミロと思うのと同時に誰だこいつとなった。
後ろにいるから顔が見えないが影から背は自分より少し高いとわかる。
抱きついてる腕は筋肉質で碧さんと呼ぶ声は甘く低い。
「こんなところで会うなんて運命ですね、碧さん
いつもLIMEもいいですが、やっぱり会うって大切ですよね」
「とりあえず離して」
離れてもらって顔を確認したが、なんか見たことある?くらいしか思い出せない。
誰だっけ?とこっちがなっているのに、相手は嬉しそうなキラキラした目でこっちを見てくる。
なんか思い出しそうでだせない。
「碧さん、水着もかっこいいですね。
でさっきの男と何してたんですか?喧嘩ですか?
一緒に埋めましょうか?」
埋める?確かにいいなそれ、埋めたら七海ちゃんに付き纏えまい。
ってちょっと待て、こいつ自分の付き纏いじゃないだろうな。
「一人?」
「いえ、いつもの奴らと海に来たんですが碧さん見かけて走ってきました。
ちょうどあいつらのどうせできもしないナンパに付き合うのって無駄だなって思ってたんですよ。
最悪だなーって思ってたんですが、今日こうして碧さんに会えたのも奇跡。
僕の日頃の行いがいいからですよね。
いやーラッキーです。
あ、碧さんこの前のLIMEで海の家好きだって言ってたじゃないですか、僕何か買ってきますよ。何がいいですか?
やっぱり焼きそばですか?
あでも暑いからかき氷もいいですよね。
どうします?」
「……歩君?」
「そうですよ、碧さんの忠実な後輩の歩ですよね。
まさかわからなかったんですか?
ちょっと僕傷つきました。
これは今日一緒に遊んでくれないと立ち直れないなー」
両手を握られ、じーとキラキラとした熱視線が来る。
なんか見えないはずの耳と尻尾が見える。
おやつを前にした犬が見える。
「いやあの自分友達と来てるから」
「いや行ってこい。俺が許可する」
「そうですよ先輩、せっかくのお誘い可哀想ですよ」
「ここは大丈夫だから行っといでー」
声がする方に顔をやると、うんうんと満面の笑みで頷く男性陣。
こいつら絶対自分のこと邪魔だと思ってただろう。
うっせー自分の方がみんなと仲良いんだ。
今日は水着のみんなとワイワイしてハーレムする予定だったんだからな!
「皆さんの許可いただきましたし、あっちに海の家ありましたよ。行きましょう」
「嫌だー、みんなと遊ぶー、縁さんに膝枕してもらって、七海ちゃんにアーンしてもらってかりんちゃんと追いかけっこして、アリスさんと貝殻拾うのー」
逃げようと両手を引っ張るが抜けないんですけど?
歩君投げ飛ばすわけにはいかない、それだと自分の印象が悪くなる。
どうする?どうする?
今まで笑ってた歩君が真顔になり、手を急に離したのでびっくりして尻餅をついた。
歩君がしゃがみ真顔で目線を合わせてくる。
「碧さん、僕と遊びますよね」
「いや自分はみんなと「僕と遊びますよね」
はい以外認めてくれないじゃん。もう強制じゃね。
何も返事しないでいると、美琴さんが助け船を出してくれた。
「君、ほら碧君困ってるから」
「ふーん碧さん僕と遊ぶと困るんですか?
あー傷ついた。とっても傷つきました。
ね、碧さん僕、あなたを困らせる気はないんですよ。
純粋に一緒に遊びたかっただけです。
最後にもう一度だけ聞きます。僕と遊んでくれますか?」
自分の片方の手を両手で握られ、キュルンって効果音がしどうな上目使いで見られる。
うー、あー、まー、はー負けた。
「歩君と遊んできます。ちょっとだけだからすぐ帰ってくるから」
歩君じゃなくて歩でいいと思う。
自分の中で雑に扱っていいグループに入れる。
歩に手をひかれついでに後ろ髪も引かれながら歩く。
遠ざかっていく中で女性陣は大丈夫?と心配しながら手を振ってくれた。
男性陣はハイタッチとガッツポーズをして満面の笑みだ。
OK覚えてろよお前ら。
次はないからな。
「碧さんごめんね。でもありがとう」
「別に」
予定はだいぶ狂ったが、せっかくなので楽しもう。
とりあえず子供じゃないからと手を離そうとしたが離れない。
純粋な男女の力の差もあるが、歩は以外と鍛えてるのかもしれない。
高一にしては結構がっしりとしてる。
あいつらより筋肉ありそう。
「ねぇ鍛えた?前よりがっしりしてる気がする」
「そうですね、碧さんひょろひょろよりは好きかなーと思って。
あ、あの岩場、小さな洞窟がいっぱいあって面白いんですよ」
「へー」
好きとか聞こえたが聞かなかったことにしよう。
あれでも自分、歩には男と思われてなかったっけ?
恋愛対象にならないとたかを括ってたが、歩は対象が男なのだろうか?
それはやばくないか?ん?やばいのか?
自分、女だし、大丈夫だろ。
前を歩く歩の耳が赤い気がする。
気のせい、あ、あれだ暑いからね。そうだよね。と自分を言い聞かせる。
なんだかんだ歩とのLIMEは楽しい。
だけど自分と恋愛望まれても困る。
歩のこと深くは知らないし、それに恋人も欲しくない。
男も女も勝手すぎる。
自分のこと何も見てないくせに意見だけ押し付けないでほしい。
勝手に期待して勝手に泣いて、人ってめんどくさいから嫌いだ。
どうせいなくなるなら恋人などいらない。
無言のまましばらく歩くと歩の言っていた洞窟とやらについたようだ。
思っていたより中は深そう。
「洞窟と言いましたが、ここは割れ目と言ったが良かったかも。
上の裂け目から光が入るので結構奥まで見えるでしょう。
今ちょうど干潮だからいつもより奥に行けますよ。
碧さんこういうの好きでしょ」
嫌いじゃないむしろ好きだ。
冒険みたいでワクワクする。
頷くと歩は嬉しそうにこっちを見て笑った。
おーなんか出てきそうだとキョロキョロしながら二人で中を進む。
いい加減手を離してくれないだろうか。
「滑りやすから気をつけてくださいね。
あ、この流木杖代わりにいいですね、碧さんもどうです?」
「とりあえず手を「えー残念じゃあ僕だけ持っていきますね」
人の話は聞こうぜ、歩君よ。
はーと小さくため息をつき、一緒に奥へと進む。
杖欲しかったな。めっちゃいい感じの棒だったのにな。
「碧さん質問していいですか?」
「何?」
「碧さんって女の人だったんですか?」
「そうだよ。生まれた時から女だけど」
「碧さんの恋愛対象って同性ですか?」
「別に」
そっけなく答えを返す。
人が嫌いになったのっていつだろうか。
恋愛よりも先だったのは確かだ。
「初恋って誰でした?」
「……いない」
「そうなんですねー。
僕は碧さんですよ。
恋愛面は僕の方が先輩ですね碧さん」
そういうことになるのだろうか?
なんか違う気がするけど、言い返したらめんどくさそうでやめた。
歩が足を止める。
なんだ告白かと身構えるがこっちを向く気配さえない。
何?視線の先が気になって少しずれて歩の後ろから覗く。
そこは洞窟の最奥で地面には大きな穴があき海水は海底が見えそうな澄んだ色をしていて、上からの光でキラキラと輝いている。
おー綺麗だ。
近寄ろうとしてが歩は動かない。
それどころか自分を背に隠してしまった。
何も見えないと抗議をしようとしたら、手で口を塞がれた。
「碧さん、シッ。
あいつらに気づかれる前に帰りますよ」
あいつら?
もう一度目を凝らしてみると、なんか泳いでる。
人?でも下半身がおかしい。魚?
え?人魚?人魚だ。
二体?二人?二匹?まぁ数え方わかんないけど二体の人魚が楽しそうに遊んでる。
縁さんの不思議パワーはここまでくるのか?
いや本人がここに来てるからおこった現象?
自分がプチパニックに襲われてるのに、歩は冷静に来た道を帰ろうとしていた。
もうちょっとなんかないのかな、一人だけあたふたしてるのは解せぬ。
まぁ冷静なのも危険なものに近寄らないのは偉いと思う。
自分も引き返そうとした時一体の人魚と目があった。
思っていたのと違う方にフラフラと足が向く。
ニヤリと笑う人魚の歯とても鋭く尖ってる。
行きたくなくて歩の手を握ると離された。
え?なんで?と思ってるうちに歩が走り出し、岸辺に座って笑ってる人魚一体に持ってる棒をフルスイング。
そのあとも棒でボコスカ殴っていた。
その光景もえ?なんで?だ。
意味がわからない。
逃げようとする人魚の髪を踏みつけ棒で突くいや刺したり足で蹴ったり踏んだりしている。
その間も自分はフラフラと人魚に近づくのをやめられない。
歩は人魚一体を気絶させると、今度はもう一体のほうに落ちてる石を投げ始めた。
コントロールがいいのか全投球人魚に当たってる。
キュキュと鳴いてなんだか人魚の方が可哀想になってきた。
「失せろ。さもなくば殺す」
あの甘く低い声はどこに行った?
殺気まじりのド低音が周りに響く。
意味がわかったのか、それとも殺気を感じ取ったのか人魚は慌てたように海水の中へ飛び込んでいった。
気絶した方は歩が足蹴にして海の中に落とし入れてた。
ちょっと暗くてわからないけど、歩君、瞳孔開いて目がいってませんか?
こちらを見るとキュルンって顔になるが、遅いと思う。
前に君、猫五匹って言ってたけどもっと被ってるだろ。
元ヤンかな?もしかして今ヤン?
見えない力がなくなったせいか足が震えて座り込んでしまった。
歩は駆け寄ってきて抱きしめてきた。
「碧さん無事で良かった」
先ほどと違い、甘く低い声。
あれは白夢中を見たと思って忘れよう。
そっちの方が面倒事に巻き込まれない気がするし精神の衛生面的にいい気がした。
「碧さん」
甘ったるい声にビックと体が震える。
高一のくせになんて声で自分の名前呼ぶんだ。やめて欲しい。
何を勘違いしたのか抱きしめる力が強くなった。
「怖かったですよね。大丈夫ですよ。
あのわけわからんのはもういませんから」
違う。今は耳元で喋る君の声に震えてるの!
自分が耳が弱いと知りたくなかったし、こいつには知られてはいけないと第六感が言ってる。
「ありがとう」と歩を押し離すと、一瞬目をパチクリさせニヤリと笑った。
また耳元にで名前を呼ばれる。
耳を両手で押さえて庇うと、楽しそうな歩の顔が近くにあった。
「碧さんってほんと可愛いですね」
なんか嬉しくない。
歩が脇の下を支えて立たせてくれたが足が震えてうまく立てない。
「お姫様抱っことおんぶどっちがいいです?」
人が弱ってるのに楽しそうだな、おい。
もうちょっとしたら自力で歩けますー。
ふんとそっぽをむいて抵抗する。
視線の先は先ほど気絶していた人魚がいたとこ。
何かキラキラした光るものが見えた。
なんだろう?宝石?
歩が自分の視線の先に気づいたのか自分をおろして、キラキラの正体をとってきてくれた。
「碧さん手出してください」
言われた通りに手を出すと、鱗を一枚自分の手に乗せた。
これはあれかドロップアイテムというやつだろうか。
もしくは戦利品?
「碧さん持って帰るんですか?
ばっちいから捨てた方が良くないですか?」
「いや持って帰ろう。戦利品だ」
自分戦ってないしなんなら操られてましたけど、まぁ細かいことは気にしない。
「じゃあそれ持って帰るならおんぶ、捨てるなら自力です。
どっちがいいですか?」
「自力で持って帰ってるのは?」
「駄目です。それにあいつらが仲間連れてきたらさすがに守りきれませんよ」
歳下に正論を説かれたので、渋々おんぶを選んだ。
洞窟出るまで辛抱すれば良いんだ。
割り切ろう。
ヒョイとおんぶしてもらう。重いでしょ、いや軽いよってくだりは面倒なのでしなかった。
途中諦めてた棒を拾ってもらう約束をした。
やっぱ冒険って言ったら棒だよね。
歩のは人魚に触れてばっちいからって持ち帰らせてもらえなかった。
「碧さん」
「何?」
「危ないとこ行く時は僕呼んでくださいね」
「なんで?」
「今回みたいに盾くらいにはなりますから。
あと暴力には慣れてるんで、お役にたてますよ」
やっぱり君、今ヤンだろ。
「考えとく」
「はい。この歩、不肖ではありますが碧さんのためなら火の中水の中ですよ」
本当に行きそうだから怖い。
自分のせいで人が死ぬのはさすが人嫌いでも目覚めが悪い。
「碧さん、また遊びましょうね」
「今度は安全なのがいい」
「そうですね。とりあえずその棒でスイカ割りします?」
「そうだね」
前原にやらせて揶揄ってやろう。
「碧さん、楽しかったですか?」
「…まぁね」
それは良かったと歩は笑った。
いつも友達になれて良かったと思うと同時に線を引く。
これ以上はこないでと幼い自分が必死に守る。
恋人なんていらない、恋愛なんてしたくない。と叫びながら。
いつまでも子供ではいられないわかっているし周りが許さない。
でもそんな世界の常識なんて自分には関係ないと無視をする。
わかっている、怖いからただ見て見ぬふりしてるだけなことを。
それでも怖いのは嫌だ。
歩はそれをわかっているのか好きだと仄めかす割に踏み込んで来ない。
もう少しこのまま楽しい関係に甘えてもいいだろうか。
「碧さん、大丈夫ですよ。
恋愛の先輩の僕がゆっくり教えますから」
うん、やっぱりなかったことにしよう。
洞窟の入り口付近になったのでおろしてもらい、全力で逃げた。
「武藤海いこぜー」
「あーやだよ暑いじゃん」
「水着のチャンねーナンパしようよー」
「勝手に行ってろ」
「いいのかなー愛しのイケメンさんに海の画像送らなくてー」
「そこから海一緒に行きませんかーってなって一夏の恋が始まるかも?」
漫画を閉じ、水着の準備をする。
「行くぜやろうども」
男なんて単純なのだ。
例にもれず僕も単純だ。
だって、そろそろ碧さんに送るネタもつきはじめていた。
代わり映えしない内容、ちょっと違うこと入れるにはちょうどいいじゃないか。
あの人熱帯魚とかよりナマコの方が好きそうだし。
という経緯で海に来たけど、今日こそ神に感謝したことない。
海に碧さんがいたのである。
男と見つめあってる?メンチ切ってるのかよくわからんけど碧さんだ。
感極まって抱きついてしまったがしょうがない。
こっちとらおとなしくLIMEのやりとりしかしてないのだから。
なんやかんやで碧さん強奪できたし、手を繋いで海岸デートもしたし、実質結婚してね僕たち。
本人には言わないけどね。
そういうの仄めかすだけで逃げていくのが会話から読み取れた。
実際ちょっと言っただけで逃げたし。
まぁそこが可愛いんだけど、本人に言ったらまた逃げそう。
行くとこがわかってるので、ゆっくり後を追う。
あー碧さんモテるのにわかってないなー。
僕みたいなのは逃げると追い詰めたくなるんだよね。
とりあえず気に入らないが、碧さんの近くにいたお仲間から攻めますか。
碧さん、獲物は外堀からじわじわとですよ。




