武藤歩の場合
新キャラ歩君視点
後書きは碧視点
「はーい武藤の負けー」
「ちょおまえらなんか仕込んでねーか。
僕だけこんな連続で負けるのおかしだろう」
「そんなことないよなー」
「そう武藤が弱いだけ」
友人達がニヤニヤ笑う。
絶対そこ組んでるだろ。じゃなきゃいつも僕に負けっぱなしのおまえらが連続で勝てるわけないだろ。
「はいでは罰ゲームどーぞー」
くそっと悪態をつきながらスマホの画面を押す。
「1時間立ち続ける」
ただ立ってるだけはそこそこきついがまぁ他に比べれば優しい罰だな。
と安心していると奴らのニヤニヤが止まらない。
「おいおい、連続で負けたんだぜー。
罰ゲーム一回ってのはおかしいだろう」
「そうそう、俺たちが味わった屈辱を一回で終わらせるわけないだろう」
「はぁ?おまえらやっぱりグルだったのかよ。
僕に勝てないおまえらが悪いんだろう」
「負けは負けだぜー、ほらあと四回押せよ」
「ここで逃げるのかな武藤ちゃん、ちょっとそれは卑怯じゃないかな?」
僕以外の四人は楽しそうに笑ってる。
いつも負けて面白くないのはわかるが、四人で一人をはめるのはアウトだろ。
どっちが卑怯者だ。
不満は募るが、負けは負けなのでいやいや罰ゲームアプリのルーレットを押す。
今度から適度に負けてこんなことないようにしないと。
結託されたら流石に勝てない。
出てくる罰ゲームの内容に徐々に血の気が下がっていくのを感じる。
「うわおまえくじ運ないっていうか」
「なんかごめん」
「これはさすがに…」
「いやでも逆に考えろ一貫性はあるからな!」
一貫性があるからなんだというのだ。
僕に出た罰ゲームは
・1時間立ち続ける
・女装
・駅前でナンパ待ちする
・連絡先を聞く
・近くにいる人の手を握り見つめ合う
だ。なんだこれである。
あ、でもその場でスクワットするとか出なくて良かったのかもしれない。
駅前でいきなり始めたら明らか不審者で捕まる。
「最後以外頑張れ」
「最後は流石に一般人に迷惑だしな」
いや他のも迷惑だろ。
ジトーと視線をやればあいつら逸らしやがった。
何が何でも罰ゲームをさせたいらしい。
くそっくそっくそっと悪態をつくが状況は変わらないので、仕方なく演劇部から借りた服とカツラを持って駅前に移動した。
「お姉さん可愛いね、どこからきたの?」
「怖くないよー俺たち優しいから大丈夫だよー」
女装して立っていたら何故かナンパされてる。
何故だ。いや原因はわかってる。
あいつらが面白がって化粧したら予想外に僕の顔は化粧映えするらしくなんか自分でもびっくりするくらい可愛くなってた。
主に化粧した須藤の腕も良かったのが相まって美少女爆誕した。
意外な才能が二つわかったが、僕の方はわかったとていらない。
そんなこんなで立っていること三十分。
何故か複数人からナンパされている。
大抵は一回断るとどこかにいくが目の前にいる二人組はしつこい。
「なーこんなところにずっと立ってたってことはナンパ待ちなんだろう」
その通りだが、そうじゃないんです。
罰ゲームなんです。
声変わりはまだであなた方より身長も低いですが僕は男なんです。
言いたいことはいっぱいあるが、どう断ってもしつこそう。
男って言っても信じてもらえなさそう。
現に自分でも鏡見て自分だと信じられないのだから。
そろそろ助けにあいつら来ないかなと思って目線をやると、なんか大きな×作ってあたふたしてる。
ここからじゃ表情まで見えないが、あっちもどうしていいのかわからないってことだろうか。
わからないじゃない助けにこいよ。
「ごめん、ごめん待ったー?
あれお兄さん達自分の彼女の知り合い?」
不意に後ろから声がして腰を抱かれる。
なんか良い匂いがする。
横を見れば僕と同じくらいの背の見たことないようなイケメンが僕の横にいた。
何故だが胸が高鳴る。
これはやばいのではないか?
いやいやこんな綺麗な顔が近くにあったら誰でも緊張してドキドキするだろう。
「ッチ男連れかよ」
「先言えよな」
ナンパ男達はグチグチ言いながら僕たちから離れていった。
ホッとして深く息をはく。
「大丈夫?余計なお世話だった?」
「いえ、困ってたので助かりました。ありがとうございます」
「よかった。じゃあ自分はこれで」
「待ってください!
助けて貰った上に厚かましいのですが、もう少し一緒にいてください。
ほらさっきの人達まだその辺うろついてるかもだし。
それに助けて貰ったお礼もしたいですし、そこのカフェに入りませんか?」
「お礼とか気にしないで、でもせっかくだから一杯だけ奢ってもらおうかな」
そう言って笑うイケメンにときめいてしまう。
あーやばいやばいぞ僕。
その扉は開いてはいけない気がする。
イケメンを連れて入ったカフェは落ち着いていておしゃれな所で、間違っても僕を見捨てたあいつらは入れないだろうってところだった。
例え友人でも、この人との時間を邪魔されてなるものか。
なんにするとにこやかにイケメンがメニューを見せてくれる。
そうですねーとこっちも笑顔で対応する。
内心あーでもないこーでもないと計算していた。
どうやったらこの人とお近づきになれるのか。
とりあえず初手はお淑やか女子を偽ろう。
僕が男だってバレたらドン引きさよならバイバイが濃厚だ。
女だからと油断してる今日、連絡先を聞き出さないと。
幸い今僕は美少女だ。いける気がする。
「あの僕歩と言います。あなたのお名前も教えて頂けませんか?」
「あーえーとじゃあ上田で」
その言い方絶対偽名だろ。まぁいいや。少しずつ嘘を剥がしていくのも面白い。
「あの上田さん学生さんですか?どこにいかれてます?
高校生?それとも大学?専門?」
「あー今日は高校行ってさっきまで専門行ってて大学は来週行こうかなーって」
答えになってない。流石イケメンいつも言われてるのだろう。ナンパは慣れっ子か。
好きです付き合ってなんて日常茶飯事なんだろうな。
非モテの僕達ならこんな美少女に質問されたらなんでもデレデレで答えるのに。
だんだんと堅くなるガードに焦る。
このままでは何も成果なく終わってしまう。
次会えるかもわからないのは困る。
自分語りはどうかと思うが、質問責めよりいいかもと思い話題をかえてみる。
「僕結構甘いもの好きで、ここのパンケーキ美味しそうですよね。
上田さんもいかがですか?
季節のフルーツが乗ったのなんてめっちゃ美味しそうですよ」
「そうだね。桃か。どうしようかな、今の時間だと帰ったら夕飯だしな。
同居人が今日は唐揚げって言ってたから楽しみなんだ」
おっとこれは牽制ですね。
でも同居人ごときに怯む僕じゃない。
わざわざ恋人を同居人って言わないだろうと思いたい。
「唐揚げいいですね。僕も明日の昼の学食、唐揚げにしよう。
あ!じゃあパンケーキ半分にします?」
「うーん魅力的な誘いだけど、今日はやめとくよ。
今度七海ちゃんと食べにくることにするね。
とりあえずアイスティーで」
「じゃあ僕も同じものを」
店員を呼ぶ間も二人とも笑顔。
ただ僕は背中に嫌な汗が流れる。
明らか女性に名前を出しての牽制。
店員が来てオーダーしようと手間取っていたら上田さんがスマートにオーダーしてくれた。
何しても絵になる人ってこういうことなんだろうな。
それはさておき、オーダーまで終わってしまった。
あとは商品が運ばれて来て飲んだら終わりだ。
あまり残されていない時間に一際焦る。
どうする?どうしよう。
ふと女だから警戒されてるなら男ならどうだろうという考えがよぎる。
そこらにいるような一般人顔の僕なら近づきやすいんじゃないか?
これ以上女で詰め寄っても距離はかわらないどころか遠のいているのは気のせいではない。
それなら真実話して近寄る方が誠実さが出ていいんじゃないか。
よしと覚悟を決めて学生証を取り出す。
「僕、上田さんに謝らないといけないことがあって、実は男なんです。
この格好は罰ゲームでやってて不快ですよね、すみません。
でもナンパに絡まれて困っていたのは本当です。
一緒にいて欲しいと思ったのも本当です。
揶揄ってる訳ではなくて、僕は正直上田さんのようなかっこいい人目指しています。
できれば秘訣など教えて欲しいと思いましてどうか僕と友達いや師匠になってくれませんか?」
「あー、えーと」
そういうと困ったような顔をして黙ってしまった。
やっぱり駄目か?
引いたって感じではないけど、イマイチ好感触という訳でもない。
「お待たせしました。アイスティーです」
定員さんが二人分のアイスティーと伝票を置いて去っていく。
上田さんは無言でガムシロップを入れかき回し飲み始めた。
視線は僕の学生証を見ている。
なんの面白みもない学生証でもじっと見られるのは恥ずかしい。
「顔全然違うね」
「そうなんですよ。須藤って友人が主に化粧してくれたんですけど意外な才能が開花してめっちゃ上手ですよね」
「服と化粧品は?」
「友人の中に演劇部がいて借りてきたんです」
「ふーん、私立百合咲学園だ。めっちゃ頭良いね」
「いやそれほどでも、男子校だからノリで生きてますし、馬鹿ばっかやってます。
今日だってこんな格好してるのも罰ゲームですし」
「何のゲーム?」
「ポーカーです。僕ばっかり勝ってたのが気に食わなかったみたいではめられました」
「そうなんだね。自分より一個下だ。まだ入学したてなのにいいの、そんなやんちゃばっかして」
「大丈夫です。普段は猫五匹ぐらい連れた優等生ですから」
「っはは、優等生は自分で優等生いわないと思うよ」
笑顔かわいいって反則だと思う。
もうあなたになら何されてもいい。
上田さんが少し気を許してくれたのか高校二年生ということがわかった。
「自分がかっこいいかは置いといて、秘訣聞いてかっこよくなってどうするの?」
「とりあえずダサいダサい言ってくる妹にお兄ちゃんかっこいいって言われたいです。
今のお姉ちゃんならもう完璧だったんですけど、流石にですね」
「そ、そうだね」
ちょっと笑い漏れてますよ。
フッと僕もつられて笑う。
上田さんが鞄からスマホを出し少しいじったあとQRコードがついた画面を見せてくる。
「ん、これLIME。師匠は無理だけど友達ならいいよ。
髪型とかならアドバイスできると思うし」
「いいんですか?」
「いいよ。女の子だったら面倒だけど、男なら恋愛云々じゃなくて大丈夫そうだし。
ああ、即レスは期待しないで、スマホ見ない時の方が多いから。
あと他の人に特に女の子に連絡先も教えないで欲しいんだけど」
「もちろんです」
絶対教えません。
死んでも教えません。
でも恋愛云々じゃないのとこはごめんなさい。
バリバリあなたのこと好きです。
言い訳を述べるなら、今まで対象は異性でしたし、同性でときめいたのも一目惚れしたのもあなたが初めてです。
今現在も戸惑ってますし、心のどこかでは男との恋愛ありえないとも思ってますがそれ以上に毎秒好きが加速してます。
「あおさんって言うんですね」
「うん漢字はこれ」
と今度はあおさんが学生証を見せてくれた。
“上田 碧”あ、本当に上田さんだったんだ。
ああ写真でもかっこいい。ちょっと気だるげな感じが余計にかっこいい。
「師匠が駄目ならなんとお呼びしたらいいですか?」
「そんな畏まらなくていいよ。歳一個しか違わないし友達なんだから。
それこそノリでいいよ」
ノリ?お許し出たしノリで行っちゃう?
「碧さんって呼んでいいですか?
僕のことは歩でもあゆちゃんでもあゆむくん♡でもいいので」
「あゆむくん♡は毎回呼ぶのきついんだけど」
冗談で言ったのにこんなに笑ってもらえるなんて幸せです。
しかも語尾にハートまでありがとうございます。
「なんか武藤君って呼んだらガッカリしそうだから歩君って呼ぶね。
じゃあそろそろ歩君、夕飯の時間だから自分帰るね」
「ありがとうございました。
あの最後にLIME頻繁にしないのでたまにならくだらないこと送ってもいいですか?」
「いいよ。あんまりだったらごめんだけどブロックも考えるから」
「もちろんです。今日はありがとうございました。
またお話ししてください」
「いいよじゃあね」
と伝票を持っていこうとしたので、奪い取る。
碧さんはびっくりした顔してた。
「ここは僕が出す約束ですよ」
「あーそうだったね。でもほら自分の方が年上だし」
「ここは僕が出す約束です」
「じゃあ次回は自分が出すよ」
否定も肯定もせずニコッと笑うと、相手もニコッと笑い手を振って帰っていった。
自分の分も飲み、会計をしてから店を出てあいつらを探す。
すぐ見つかったというか、あっちからかけ寄って来た。
「大丈夫だったか?イケメンに襲われなかったか?」
「大丈夫。良い人だったよ」
僕が楽しそうにしてるのが不思議なのか、みんなして怪訝そうな顔をしていた。
今日は唐揚げだと親父殿に伝えていたら、女の子がナンパに絡まれていた。
どうするかと迷っていると、お節介な親父殿が行けと言ってきた。
親父殿言うことは絶対というか強制なのでおとなしく行って間に入る。
すぐに立ち去る予定が女の子に捕まった。
まぁ言い分も間違えではないし、後で何かあってそれを親父殿が知った方が面倒なので一緒にカフェに入る。
適当に頼んで飲んだら帰ろう。
想像通りあれやこれや質問がきたんでのらりくらりかわしていると、急に自分は男だと言い出した。
学生証を出してきたので少し信じることにした。
キラキラとこっちを見てくる。
こういう子って自分のこと好きだなんだで面倒くさいんだよなぁと思っていたが、親父殿に知られたらまた怒られそうなので適当に相手をする。
頭良い学校行ってるだけあるのか、なかなか引き際がよく会話も苦痛ではない。
これくらいなら友人として付き合えそう。
何目線だよと思われそうだが、ある程度上から目線でいかないと相手にのまれる場合があった。
それこそ周りまで巻き込んで面倒をかけたので、それ以降は線引きは厳しくしている。
自分には珍しくLIMEまで交換して別れた。
年下の男の子にキラキラした目、弟を思い出して少し甘くなったのかもしれない。
まぁ面倒ごとになったら親父殿がどうにかするだろう。
これからのことは考えるのをやめてさっさとこいこい荘に帰ろう。
そう今は何と言っても唐揚げだ。
駅に停めてある自転車にまたがり、唐揚げめがけてめいいっぱいペダルを漕いだ。




