表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/90

72話 幸せなその後 1




入学式の翌日からさっそく授業を始める。時間は有限だからね!

授業の時間割はというと、一時間目は読み書き、二時間目は算数。算数といっても足し算と引き算くらいだけどね。日常生活はそれくらいですむんだもん。

それから三〜四時間目は食育とか調理実習。


午前の子はそれをお昼に食べて仕事に行く。

入れ替わりに午後の子が来て同じ流れになる。調理実習で作ったものはお持ち帰りしてもいいし食べちゃってもいい。


さて、初日の一時間目は自分たちの名前を書いて覚えるところから始める。自分の名前が書けるって、とっても大切だと思うんだ。

五十音とかアルファベットみたいな、字母表を覚えるのはそれからでいいかな。

十人ひとりひとりの名前を黒板みたいなものに大きく書く。


学校を創立するにあたって、この国の学校事情なんかも調べてみた。

王都には王立の学校があって、一般教養の他に騎士科、魔法科なんかがある。

それとは別に、商業者ギルドが運営している経済・経営なんかの学校があったり、貴族や裕福な商家のお嬢様が通う淑女のマナーや領地経営(領主に嫁いだ時に必要な経営学)を学ぶ学校など、色々ある。そういった学校で扱っている黒板みたいなものとか、紙みたいなものも同じようにそろえてみた。


子供たちには、その紙のようなものを配ってある。

私の知っている紙とは違うんだけど、羊皮紙とかパピルス紙とも違うと思う。本物見た事ないけど!想像で!

子供たちは嬉しそうに一生懸命自分の名前を練習していたよ!


二時間目は簡単な足し算から始めてみた。足し算は一番使うからね!

貧しい家の子は、働けるようになると出来る事から何でもする。十歳に満たないような子ならお駄賃は現金じゃなくて現物支給だったりで、十歳を過ぎる頃から半人前の、少ないお駄賃がもらえるようになるんだそうだ。


だからここにいる子はお金の数え方はちょっとはわかる。わかるといっても、決められている銅貨が間違っていないか確認するくらいなもんでちゃんとした計算はできない。

一生懸命働いて誤魔化されるとか…… 切ない。


きっちり教えるからね!

君たち、しっかり覚えるんだよ!!


そしてメインの調理実習!

の前に、ちょっとだけ食育と衛生の大切さを教える。衛生は基本だからね!

食育は、知れば食べる事の意味や大切さもわかるから!

それが終わったら、いよいよ実際に調理をする。


初日のメニューはサンドイッチだ♪

調理の技術だけじゃなくて、作る楽しさ、作ったものを美味しいと言ってもらえる嬉しさ、何より美味しいものを食べた時の幸せな気持ち、そういうものも知っていってほしいと思う。


サンドイッチは初めて作るにはお手軽でいいと思う♪

パンの国の基本?お米の国のおむすびと同じようなものかと勝手に思っている。

タマゴサンドは、卵を茹でて殻をむいて刻むだけ。包丁だから気をつけなくちゃだけど、切り方はそれほど気にしなくていいのがいい♪

レタスたっぷりハムチーズサンドは、レタスを手でちぎるし、やっぱり包丁だから気をつけなくちゃだけど、ハムとチーズは薄く切るだけでいいから、こっちも切り方は気にしなくていい♪


マヨネーズは事前に作ってあるから、具材の準備ができたら挟んでいくだけだ♪

ちなみにパンは朝のうちに焼いてあるから、調理する頃にはいい感じに冷めているだろう。しっとりやわらかな自慢のパンだ♪


おうちでお手伝いはしてるかもだけど、学ぶ場では初めての調理だからね。きっと時間はかかると思う。慣れてきたらパンも同時進行で焼いてもらう予定だ。


しっかり手を洗ったら、最初に基本の包丁の握り方、長時間作業しても負担のかからない身体の角度なんかを教える。

それから説明しながら手順を黒板みたいなものに絵で描いておく。まだ字が読めないからね!


我ながら画伯だと思うけど……。

説明しながらだからわかってくれると、思いたい!


調理台は四つあって、十人の学生たちは適当にばらけて調理を開始した。

私は見回りながら、危なげな手つきを直したり、火加減を調節したり、レタスを包丁で切らずに手でちぎる理由を説明したり。

よくばってハムやチーズを厚切りしてる子には、一番美味しく食べられる厚さがある事を教えたり(切っちゃったものはしょうがない、小さく切ってみんなに味見させてあげる)それなりにやる事はある。


具材が用意できたら、いよいよパンを切って挟んでいく。自分の分は自分で作る。みんなとても楽しそうだ。

私は褒めて育てるタイプなので、ミスをしても叱らない。一生懸命やっての失敗は成功の元だと思っている。やる気がなかったりサボっていたりなら怒るけどね!

今日はそれほど難しくはないサンドイッチだから失敗はない。

時間内に余裕をもって出来上がった。それぞれ自分が作ったサンドイッチをのせたお皿を持って外に出る。


季節は春で、日本の新学期と同じく四月から学校が始められたのを嬉しく思う。

晴れてポカポカ陽気だから、こんな日はピクニック気分で外で食べるのが気持ちいいよね!

ウッドデッキに設置されているテーブルに着くと、お待ちかねの試食会だ♪

みんな待ちきれないという風に、いっせいに食べ始めた。


「美味っ!!」

「美味しい〜!!」


歓声を上げる子、無言で貪る子(笑)それぞれ夢中で食べている。

そんなに急ぐと喉につかえるよ!

ミルクとリンゴジュースの好きな方を飲みなさいと、各テーブルに大きなピッチャーで置いてある。


時間はお昼なので、アダムとジェシーも一緒に、こっちは私が作ったサンドイッチを食べる。


タマゴサンドとハムチーズサンドはあっという間に食べ終わって、男の子たちはちょっと足りない顔をしている。食べ盛りだもんね。

先生はちゃ〜んと見越して、お代わりを用意してあるよ!

余分に焼いておいたパンと、バターとジャムをテーブルにのせる。


「足りない子はこっちも食べなさい。しっかり食べて、午後からの仕事もがんばるんだよ!」


今日一の歓声が上がる。男の子たちは我先にと手を出していた。

何故かお腹いっぱいのように見えていた女の子たちも手を出している。甘いものは別腹って事ね!


「食べすぎると動けなくなるよ!大丈夫、明日も明後日も、これから先ずっと食べられるから!」


注意しないと本当に動けなくなるまで食べそうだ。


お皿と使った道具を綺麗に洗って、ゴミの始末をしたら今日の授業はおしまいだ。


「今日はここまで。また明日ね!」

「「「ありがとうございました!!」」」


始まりと終わりに挨拶する事を教える。

区切りだからね!


休む間もなく、午後からの授業が始まる。内容は午前と同じだから特に大変ではない。

みんな学ぶ意欲にあふれていてやる気満々だ。教えられて、ひとつひとつ覚えていくごとに嬉しそうにキラキラしている。


私が中学生だった頃はどうだっただろう?

義務教育だから学校に行くのは当たり前で、私を含めみんなそれほどやる気があるようには見えなかったような……。


それに比べると、学べる機会がなかったこの子たちは本当に一生懸命だ。学べる事が嬉しくてしょうがないように見える。

なんだか胸が熱くなる。私が教えられる事は全部教えるからね!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ