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71話 さよならと、お土産話 2




ジェイが旅立ってから一週間がすぎた。

葬儀にはお店の常連さんや、親しかった冒険者のみなさんが大勢参列してくれて、そりゃあもう賑やかなお見送りになった。

亡くなった日から三日ほどでお店も開けたし、哀しみは残るけど、日常生活に戻っていった。


そういえばこの国には、喪に服すという習慣がなかったんだっけ。日々食べるために、いつまでも哀しんでいられないというか……。

哀しみだけにひたれるというのも、生活に余裕がなくちゃできない事なんだと改めて知った。


私はまだちょっと無気力で、アダムがジェシーの子守をしてるのを見ているだけだった。

みんな優しくて、こんな私の好きにさせてくれていた。


ジェイに、孫と学校のお土産話を約束してるけど、なかなか動きだせない。

最初の一歩になるきっかけがほしいなぁ……。


我ながら甘えてると自覚はある。

そんな、うだうだしていたある日。ちゃんときっかけはきてくれた。




大工さんというのか工事やさんというのか、学校ができたから受け渡しの立会いをしてほしいとやって来たのだった。

不備や追加があったら承りますとの事で、アダムとジェシーと一緒に向かう。


そういえば着工してから半年も過ぎたのね……。

ジェイが不調になる前に発注して、私が看病してる間も滞りなく工事は進んでいたんだね。


後から聞いた事だけど、アダムが職人さんたちと話し合ってくれていたらしい。

トーイとベニーが差し入れを作ったり、アダムとジェシーがお散歩しながらお届けしたり。


私、ほんと甘えていたなぁ。なんか改めてみんなに感謝だ。

ジェイが死んじゃう時、ひとりにしないでって思ったけど、ちゃんと知っていた筈だったのに、私はひとりじゃないんだって。

なんか今、シミジミ思っているよ。私ってば薄情だったよね。

ごめんね。心の中でみんなに謝る。


何か、ふつふつと力がみなぎってきた。

孫をいっぱい可愛がって、きちんと学生を育てて、学校も死ぬまでに軌道にのせて、それから後継者も育て上げなくちゃ!!


忙しくなってきたー!

うだうだくよくよしてる間はない!!


見ててね、ジェイ!

ジェイが安心して待っていられるように、私、がんばるから!!




その学校の方はというと、設計の段階から希望を入れてあった通りのできで、ほぼほぼ満足のいくものだった。


町の中心よりではなく、外れの方を選んだから土地は安かった。おかげで敷地面積が広い。

広い庭には果物の木がたくさん植えてあるし、ハーブや野菜の畑もあって実用的だ。

それとは別に、ちゃんと可愛かったり綺麗な花の花壇も作ってあるよ!

日当たりのいい広場には、芝のような短い草も植えてある。孫が走り回れるようにね♪


座学用の教室と、調理実習室には竃と水場がある。パンやお菓子なんかが焼けるように窯もあるよ!

日本の学校の調理実習室を参考にしたけど、切実にガスと水道がほしい。この世界にきて二十年以上になるけど、あれは本当に便利だったと今でも思うよ!

敷地内に井戸を掘ってもらったから、まぁ共同井戸に汲みに行かないですむだけ楽か。


実習室から外に出たところにあるウッドデッキスペースには、テーブルセットが置いてあって、お天気のいい日にはそこで作った料理の試食をするのもいい。

お天気が悪い日や、暑い日寒い日なんかは、実習室と続きになっている食堂で試食できる。私好みの可愛いカフェちっくだ。


というか、建物の外観から、そのほか全部が私好みの可愛い仕様だから、女子には気に入ってもらえるかもだけど、男子にはどうだろうな〜。

まぁ、校長権限という事で!


それから学生たちの更衣室と、汚れ仕事の学生用にシャワー室も作ったよ!衛生は大事だからね!


この国にはまだシャワーというものはないから(毎度お世話になってます!)エリックに作ってもらったのだ。

私の拙い説明で、魔法の他に物理的に?水圧とか?何やら色々混ぜ合わせて、ほぼあのシャワーが完成した。

探究心の強いエリックは、知らない事を知らないままにしていられない。頭のいい人は違うな。何にしてもエリック様々だ。


石鹸とタオルはこちらで常備しておく。旅館やホテルの感じね。

もちろんお金はとらないよ!


学校が始まってからの話だけど。

『持ち出し禁止』の札は立ててあっても、たま〜に石鹸がなくなったりした。

きっと家族にも使わせてあげたいんだろうな。石鹸って安くないものだからね。石鹸を買うくらいなら食べ物を買うと思う。

それが、新しくて大きい石鹸は持って行かないで、小さくなって残り少ないようなものがなくなるのだ。いじらしくて黙認してる。


話を戻して。

あとは校長室という名の託児室だ。孫と同伴出勤だからね!(笑)

託児室の責任者はアダム先生だ。孫はこれからまだ何人かは増える予定だし、もしかしたら学生の中にもお子ちゃん連れがいるかもしれない。

あまり増えるようなら保母さんを雇わないとかも。


あれ?校長室(託児室)の責任者がアダムなら、校長はアダムって事になるのかな?


そうそう、一番重大なのが入学希望者の面談だ!

試験なんてないから、希望者は私が面談をして決める。

学費や実習費にあたるものは免除だし、読み書きと簡単な計算が教われて、調理の技術も手に入る。お金をかけずにそんなに習えてラッキー♪くらいに思ってる人はお断りなのだ。

切実に学びたいと思っている人を、私は親身に教えたい。


入学希望者は、トーイやエリーやノアに頼んで貧民街に(この言い方、いつまでたっても慣れないなぁ)募集をかけてもらった。




そしていよいよ、本日は面談日!色々な年恰好の男女がやってきた。

希望者には教室で待っててもらって、私が一人一人と校長室で面談する。


教えるのは私ひとりだから、午前午後十人ずつが限度だろうな……。

見所のある子がいたら二年目は先生として雇って一緒に教えていきたい。そうすれば教えられる人数も増やせるし、それに後継者問題もあるからね!

なんせ私はおばあちゃんといわれる歳だから、先々の事を考えていかなければならないのだ!


さぁ、どんな子たちがいるんだろう?

私は最初の入学希望者の名前を呼んだ。




面談の結果、予定通り午前と午後十人ずつ入学生を選んだ。

もっと受け入れたかったけど、私一人で始めるからムリはできない。火や刃物を扱うからケガをさせてしまったら大変だ。

十人でも私一人で目が行き届くか心配なくらいだからね!


入学生の平均年齢は十二歳〜十三歳ってところかな。やっぱり一人前の働き手になってる年齢の子は今更学ぶ時間は取れなそうで、大人は一人もいなかった。

日本でいったら中学生か。

この子たちを立派に育てようと強く決意する。


しっかり学ぶ意識をつけるために、入学式なんてものも行った。

午前と午後の子一緒に、午前のちょっと遅い時間から始める。

入学式は一時間もかからないで終了、その後はお店に移動してランチの流れだ。

こういうものを作るようになるんだよ、と食べさせる。

見て、味わって、感じて、学ぶ意欲を高めてほしい。


子供達は初めての、お店での食事に落ち着かない。

運ばれてきた料理を見て驚く子供たち。すぐに食べずじっくり料理を見ている子、さっさと頬張って歓声を上げる子、一口食べて(たぶん美味しくて)固まってる子、色々いて面白い。

どの子も全身から希望と情熱があふれてきてキラキラしている。


入学生分の二十席は予約席にしてあったけど、残り席は通常営業だ。

常連さんたちは私が学校を始めるのも、今日が入学式で、ここにいる子が入学生だという事も知っている。


「どうだ、美味ぇだろ!」

「ボウズも早くこんな美味い飯を作れるようにがんばんな!」

「チャンスを掴んだんだ、しっかり学べよ!」


口々に声をかけて、激励してるんだろなぁ。

中には強面の親方もいて、女の子たちはビビっていたりもしてたけど。

何にしても、この子たちにとって初めての経験だ。一生の思い出に残る入学式だったと思う。

これから一緒にがんばろうね!!




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