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69話 平凡チームとたまには甘い話 




「お疲れさん♪」

「わっ!」


玄関の外で、帰るトーイを待っていた私。

出てきたトーイに声をかけると、びっくりさせちゃったようだ。


「そんなに驚いた? ごめんね」

「いえ……」


トーイが気まずそうに答える。

まぁね。母はこれからお節介を焼くから、トーイもそれをわかっているんだろう。


「で? 何が断る理由なの?」


単刀直入に聞いちゃう。こういうのは勢いだ!


「…………」


トーイは黙り込んで目も合わせない。

だけど私は知ってるんだよね。


「トーイだってベニーを憎からず思っているでしょ?そんなの一日中そばで一緒に働いてたらわかるよ。どうしても話したくないならいいけど……。 トーイに振られたベニーが他の男の嫁になっちゃってもいいの?」


トーイが思わずといったように顔を上げた。


「ベニーが他の人と結婚したら、君には暖簾分けをしてお店を出してあげるよ。振った人と振られた人が同じ職場じゃ働きづらいでしょ? もう一緒に働けなくなるよ?毎日会って話してたのもなくなっちゃうよ?トーイ、それでもいいの?」

「師匠は意地悪だ……」


俯いて言う。


まぁ!心外な!大事な娘とトーイに幸せになってほしいという親心なのに!

それにさ、きっと君の気持ちは、私ならわかると思うんだよね……。


「私からしたら両想いに見えるからさ。 トーイ話してみなよ」


私は優しく聞こえるように言った。


「オレは……、ラックやワイアット様みたく長生きできないから……」


それもそうだろうけどさ……。

ちぇ。


「私たちの周りって美形ばかりだよね。私と、勝手に仲間にして悪いけどトーイは平凡チームじゃない? ……ジェイがプロポーズしてくれた頃ね、周りはこんなに美人ばかりいるのに何で私なんだろ、私でいいのかなって思ったわ」


トーイがビクッとして、私を見る。

あぁ、やっぱりね。うん。


「でもさ、私はジェイが好きだったし、ジェイが私と結婚したいって言うんだもん。私が行方不明になっていた二年間、ずっと探し続けてくれてたジェイの愛情は深いしさ。私は美人じゃないけど、その分一生愛情込めて胃袋を掴み続けてやる!って思ったんだよね」


トーイは黙って聞いている。


「トーイも特別美形って訳じゃないけど、歳をとって出てくる魅力って、若い子にはないと思うんだ。真剣に働く男は素敵だよ。自信をもちなよ!ベニーは十年以上トーイが好きなんだから。そんな簡単に心変わりはしないよ」

「師匠!」


トーイがビックリしたように声を上げる。


「こういうのは同じ悩みを持った者同士しかわからないよ」


私はニヤリとした。


「それからさ、ベニーをおいて先立つのも気にしてるなら、淋しくならないようにたくさん子供を作ってあげたらいいじゃない。兄弟がたくさんいたら親がいなくなってからも助け合えるし。たぶん困ったことが起きたらラックやワイアットさんや、きっとエリックも助けてくれると思うけど。そのための家族なんだからさ。

……まだわからない先の事を心配するより、今の気持ちを大切にしなさい」


トーイは瞳を揺らしながら、弱々しく頷いた。


「はい……。よく考えます」


これは少し時間がかかるかな。

長女の時のように次の日って訳にはいかないだろう。

まぁあれは早すぎだけど!




後片づけはベニーに任せてあるから、私はそのまま寝室に行く。

長女の時と同じように、ソファに座ってジェイが私を待っていた。お酒の入ったコップを待っているのもあの時と一緒だ。

隣に座った私に、ジェイがしみじみと言う。


「成人して早々に三人とも片付いちゃうなんて思わなかったよ」

「アイちゃんは結婚じゃないけどね。お嫁に行った訳じゃないけど、そばにいないから、ジェイ淋しいんでしょ〜」


ちょっと茶化すように言ったのに、ジェイは私をジッと見て言った。


「ユアは何が淋しいの?」


え……

あら〜、何か気づかれましたかね?

何となく誤魔化し笑いをすると、スイッと抱き上げられて膝の上にのせられた。


わ〜!

いきなりどうしたっていうんだ?!うちのダンナさん!!


「ユアを見てればわかるよ。何年見てると思ってるの?娘三人が親離れするからかとも思ったけど、そういうのとも違うようだからさ……。ユアが元気がないのは心配なんだけど。言いづらかったらいいけどさ」


そう言って、ふんわり抱きしめてくれた。

二十年近くになるけど、この人は変わらないなぁ。変わらずずっと優しい。

話すには恥ずかしい程のちっちゃい事なんだけど、心配させとくのも悪いよね。

私はジェイの胸に寄りかかって、小さくため息をついた。


「ちっちゃい事だよ?娘たちはちゃんと私を好きだってわかってるし伝わってるし、家族の愛情に不満も疑いもないよ。だから今夜だけ、これ一回だけね?

…………子供が三人いても、ママっ子はいなかったな〜って、ちょっといじけた」


しょうもない事だよね!恥ずかしくてジェイの胸に頭をグリグリ押し付けてやった。

ジェイは小さく揺れてるし!笑ってるよ!


「パパっ子のアイちゃんがいたから、ジェイにはわからないよ」


ちぇっ!いじけた声が出ちゃったじゃないか。

気づいたジェイは笑うのをやめて、抱きしめる腕に力を込めた。


「笑ってごめん。ユアでもそんな風に思うんだって思ってさ。

……ユアと出会ってから、ユアがずっと俺の一番だよ」

「アイちゃんが一番の時があったくせに」


これはいじけて言うんじゃなくて事実だ。

言い方はちょっとアレだけど。


「そんな風に思わせちゃってたなら悪かった。一番は変わらない。ずっとユアだよ。子供はさ、いつか巣立つだろ?ずっと一緒なのは夫婦だからさ。一番大事でなくちゃと思うんだ」


ふ〜ん。そんな風に考えてたんだ。

でもアイちゃんにメロメロだったあの頃は、絶対アイちゃんが一番だったと思うけどね!

それを不満に思う程、私は狭量ではないよ。子供は可愛いもん。


私が納得してないのがわかったのか、ジェイは苦笑いをして言った。


「本当にユアが一番なんだけどな。俺でガマンしなよ」


よしよしと背中も撫でてくれる。

アラフォーのおっさんとおばさんだけどね。

誰も見てないし、まぁいっか。


「ガマンとかじゃないじゃん。出会った頃からずっとありがとね。私もジェイが好きだよ」


ジェイが微笑んだ。つられて私も笑顔になる。

いい歳をしてバカップルかとも思うけど、たまにはいいか。感謝も気持ちも、伝えるのは大切だよね。


三女の公開プロポーズという三度目のイベントがあったけど、どうやら穏やかな気持ちで眠れそうだ。

また明日も早いからね! もう寝るよ!




さて、トーイのお返事だけど。

一週間ほどたって「結婚させてください」と改めて親へと(私たちだけど)挨拶があった。


させてくださいも何も……。

うちの娘からのプロポーズを目の前で見てるし!


まぁ一週間は頃合いか。

気持ちは決まっていただろうけど、きっと覚悟する時間が必要だったんだよね。

ラックや(エルフ)ワイアットさん(魔法使い)とは違って本当にただの人だから、言っていたように年齢の順番的に先立つ事とか、後の心配しちゃうよね。


「おめでとう♪ 幸せにね!」


もちろんみんなで祝福したよ!


ベニーは家から出たけど、夫婦で毎日仕事に通ってくるからそんなに淋しくない。お店に近いところに家を借りて新婚生活を始めたよ。ラブラブで幸せそうだ。


二年ほどして初孫も抱けたよ!

自分の子は三人とも女の子だったから、初孫の男の子は、何かもうめっちゃ可愛い!!

日本だと四十歳くらいでおばあちゃんは早いかもだけど、この国では普通か、やや遅いくらいだ。平均余命が短くて結婚年齢が早いからね。


ベニーも三ヶ月の産休の後、職場復帰して赤ちゃん連れで出勤してくる。

仕事中は私とジェイで子守をしているよ。ちょうどいいからと、私はこの機会に引退したのだ。ジェイも冒険者を引退して、夫婦で孫とのんびり過ごしている。

ホールは長女夫婦が、厨房は三女夫婦が継いでくれて、仲良くやっていってくれたらいいと思う。


思えばずっと働きづめだった。まぁ当たり前なんだけどね。

ジェイも四十歳をすぎたし、残り少ない人生を(私の平均余命はどっちなんだろ?)ゆっくり過ごせるくらいの蓄えはある。


……というか、有り余るほどあったよ!


そういえば、このお金をこの国の人たちに還元したいと思ってたんだった。

少し休憩したら具体的に考えてみよう。

どのくらい残ってるかわからないけど第二の人生だ!

楽しくなってきた〜♪




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