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68話 二度あることは三度ある 2




溺愛してる父親が許すんじゃしょうがないなぁ、とため息をひとつ。

だけどこれは譲れないと、アイちゃんと目を合わせて言う。


「成人したから君の望むままにしたらいいと思うけど、お母さんが心配するのもわかるよね?エリックから転移魔法石をもらうから、それを持って行きなさい。女の子でも男の子でも危ない時は危ないんだから、お守りとしてね」

「わかった。自分の事だから、エリックおいたんには自分でもらいに行くよ」


ショーンさんやサラのところと同じように、うちの厨房はエリックの仕事部屋とも繋がっている。

本当なら面倒な手続きのいる王宮への許可なんかがはぶけていいけど、不法侵入とか大丈夫でしょうかね?毎回ちょっと気になっちゃう。


アイちゃんは言うとさっさとエリックのところに行く。やる事がいちいち早い。決断力も行動力も早いんだよね。

三人娘の中で一番しっかりしている。いったい誰に似たんだろう。


なんて考えているうちにアイちゃんは戻ってきた。エリックも一緒だ。

アイちゃんの手の上には綺麗な緑色の石がのっている。


「急なのにありがとう。エリックはご飯食べた?まだなら一緒にどう?」

「エリックおいたん食べてないでしょ?一緒に食べようよ」


私はエリックの分の料理を用意、ルーシーがお皿やコップの準備をする。そういうのはホール係の仕事なんだな。

アイちゃんはさっさとエリックを席に着かすと、自分も隣に座った。


次女は色味の他に、感性というか、この国で生まれ育ったというのに考え方も私寄りだ。

たとえばエリックに関しても、彼を名前で呼んでいるのはジェニファーと私と、おいたんをつけてるけどアイちゃんだけで、他のみんなは長い付き合いでも大魔導師様と呼んでいる。

エリックも別に何も言わないしね。

ちなみにアダムの事もアダムおいたんだ。アイちゃんの中で二人は同列らしい。


みんなでご飯を再開して、アイちゃんの旅立ちについて話していると


「アイは魔法使いとは対戦した事はあるか?」

「ないよ!今朝冒険者登録したくらいだもん」


エリックは何も言わず、ふっといなくなった。

一瞬後には戻ってくる。


「これも持っていけ」

「エリックおいたん、これなぁに?」

「対魔法使い用魔石だ」


どんなものかと説明を聞くと、この魔石はアイちゃんに攻撃しようとする者の時間を二秒止める事ができるそうな。


「まだ二秒しか止められないが、ないよりはマシだろう」


二秒しかって!時間を止められるなんてすごいよ!!

魔法使いに動きを止められたら剣を振るえないからね!

それから女の子だから、そういう意味でも安心だね!


「アイちゃんなら二秒あればヤレるだろう」

「ジェイ、こわいよ……」


ジェイが壮絶に危険な顔をした。

夫のこんな顔、初めて見るよ!

私の知らない、Aランクの冒険者の顔かぃな!。


それから、これは私たちももらっている、時空間?の魔石も渡される。

エリックと知り合った頃に、ファンタジー小説でお馴染みの便利ボックスがあるのかと聞いたところ、その頃にはまだ時空間魔法?はなかったらしく、詳しく話を聞かれた。

私もふんわりとしかわからない事だったんだけどね。私の拙い説明で、エリックは時空間魔法を研究して、五年くらいで完成させたのだ。


この魔石、カバンに入れると中が見えないからどのくらいかわからないけど、かなり広い空間になる。時間も止まるから入れたままの鮮度でいつまでも保存される。重さも感じないから、いくらでもお買い物ができるのだ。

ありがとうエリック、重宝してます♪


「ありがとう、エリックおいたん!ちょっとズルな気がするけど心強く行ってくるね!」


こうしてアイちゃんはもらった魔石を持って、見た目は小さなリュックを(中はたくさん入ってるよ!)背負って元気に出発していった。


毎日一緒にいたアイちゃんが旅立って、しばらくジェイはションボリしていた。

家族が減るのは淋しいね。一人旅も心配だし。

残った私たちはアイちゃんがケガなく元気に旅する事を祈る事しかできない。




そんな風に家族が減った生活にも慣れてきた、翌年の三女のお誕生日。

二度あることは三度ある。


ベニー、君もか!

三女も公開プロポーズしたよ!!


二度あることは三度あるという諺は知っていたけど、身をもって体験するとは思わなかったよ。


「ベニーのお誕生日には一回帰っておいで。成人とダブルのお祝いだから」 と言っておいたアイちゃんも帰って、久しぶりに家族が揃った恒例のお誕生会で


「トーイ好きです。結婚してください」


真っ直ぐにトーイを見てプロポーズする三女。

うちの娘たちは一体どういう事なんだろう?

サプライズ好きにも程があるよ!


ベニーのプロポーズを聞いて、トーイは固まらなかった。けど、挙動不審に変な汗をかいている。

これはあれだな。今までもせまられていたんだろうな。初めて告白されたって感じじゃないもんね。

公開プロポーズかぁ。ベニー強硬手段に出たな。


それにしても……

そうじゃないかと思っていたけど、やっぱりベニーはトーイが好きだったか。

物心がつく頃からずっと調理場に入り浸っていたもんね。

やっとママっ子が現れたかと嬉しかったり、よっぽど料理が好きなんだな〜なんて思った事もあったけど、彼女が見ているのはずっとトーイだった。

調理場に立てるようになってすぐに下働きから始めたのは、トーイと一緒に仕事がしたかったからだよね。


「トーイ、ずっと好きだったの。私が成人するまでに誰かと結婚しちゃわないか気が気じゃなかった。お願い。私と結婚して」


我が子ながら情熱的だなぁ……。


これはジェイに似たんだな。

この国の人はけっこうロマンチストで情熱的だと思う。というものの、ジェイもアダムも顔を赤らめてオタオタしてるシャイなところもある。


ルーシーとアイちゃんは気にせずご飯を食べてるし、ラックは通常の無表情だ。

メイちゃんは興味津々キラキラした目で当事者二人を見ている。

メイちゃん、人の事よりそろそろ自分の恋愛はどうですかね? 君も適齢期真っ只中だと思うんだけど?


「ベニーの気持ちには応えられない。おれは十五も年上だし、ベニーは可愛いからいくらでも同じ歳くらいのいい男がいるよ」

「あら、そんな事をいったらラックは私より百以上年上よ?」

「ワイアットおいたんだってアシュリーおばちゃんより六十以上年上だしね」


姉二人が応援する。

トーイは困ったように私を見た。さすがにこういう場合、父親の顔は見られないのだろう。私も満面の笑みで言う。


「小さい頃から見てるけど、トーイは働き者でしっかりしてるし、ベニー見る目あるわ〜♪一緒になってお店の厨房を継いでくれたら、私も安心して引退できるし」


母も応援したつもりだったんだけど、違う方に大騒ぎになった。


「え〜!お母さん引退するの?」

「えっ!お母さん引退なんて考えてたの?」

「引退して何するのよ?働いてないと死んじゃうお母さんが?」

「そんな話聞いてないよ?」

「師匠!引退って早すぎます!!」


君たち私を何だと思ってるんだぃ?!

私だってそのうち引退するよ!


「今すぐにって訳じゃないよ。ベニーが一人前になったら、厨房はトーイとベニーに任せようと思ってるって事だよ。二人が夫婦になってくれたらちょうどいいかなって思って」

「何か、その言い方って簡単に聞こえる……」

「結婚って重大な話と思うんだけど……」


あら、話が戻った。


「そうそう、その結婚ね。トーイ、理由が年齢の事だったらうちでは通らないわ〜。別の理由があったら聞くよ?」


トーイは、グッとつまって、それから黙り込んだ。

こういうのはやっぱり考える時間がいるよね。覚悟する時間というか。


「とりあえずご飯を食べよう♪せっかく美味しくできてるんだから冷めたらもったいない」

「お母さん……」

「ベニー、諦める気はないんでしょ?持久戦がんばれ〜♪」


ベニーは、もちろん!と強気の顔をして、場は仕切り直しへとなった。

三度目だからか、わりとあっさり食事は再開されたよ。



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