65話 続・結婚ラッシュ 1
あっという間に三月になった。
アシュリーたちの結婚式はもちろんお店で行う。壁際にテーブルを寄せて並べて、ショーンさんたちの時と同じビュッフェスタイルだ。
厨房スタッフにはショーンさんが、ホールスタッフにはソフィが入ってくれる。
アダムはバージンロードのエスコートはするけど、その他はホールスタッフ。
後はショーンさんたちの結婚式と同じ役割分担だ。
お客様は何人になるかわからない。お店の常連さんたちみなさんが祝ってくれるから!
会費制で、銅貨八枚はランチと同じだ。
その他、ワイアットさんのお仕事関係で高位の魔法使いさんが何人かと、高位のお貴族様が何人か。
驚いた事に、直接お仕えしているという第三王子様もお忍びでいらっしゃるという!
身分の高い人同士でお祝いしないんですか?
ビビって聞くと、そもそも結婚式という概念がないのだから特別何かする事はないと言われた。
そういえばそうだった。結婚式ってなかったんだっけ。
そうですか……。
ビビるな!お客様の中にはお忍びでお貴族様もいた。
王子様なんて初めて見るけど、なんてったって王子様だ!
物語に出てくる、お姫様と王子様の、あの王子様だ!目の保養にしよう!
どんな人でも、お祝いに来てくれる大事なお客様だ。心を込めてお料理を作るぞ!
ビビる気持ちを抑えて強気で決意した。
そして結婚式当日。
朝からポカポカ春の陽気で、お天気もアシュリーたちをお祝いしてくれてるみたい。
秋にもショーンさんたちの時に思ったな〜。
懐かしく思い出す。
お日様が高くなってきた。お客様も集まりだして、ホールスタッフがウエルカムドリンクをサービスしてる。
頃合いをみて、私はショーンさんとトーイに後を頼んでアシュリーの部屋に行く。
支度を手伝ってくれていたジェニファーと入れ違いに、私はアシュリーの部屋に入った。
「アシュリー……。 本当に本当に、なんて綺麗なんだろう……」
私はポロポロ泣きだした。
なんだこれ?
「アシュリー、あのべた惚れのワイアットさんなら間違いないと思うけど、幸せになってね!」
何だか感極まって、私は大泣きしてしまった。
家族同然に暮らしてきたアシュリーが、姉妹のように仲良くしてきたアシュリーが、とうとうお嫁にいっちゃうんだ!
私は涙が止まらなかった。
「あのべた惚れのって!ユアったら、涙が引っ込んだじゃないの!」
アシュリーは吹き出した。
うん。泣かない方がいいよ。せっかくのメイクが流れちゃう。
涙でよく見えなくなってるけど、私は綺麗なアシュリーをよくよく目に焼き付けた。
可愛いアシュリーに似合う、可憐なプリンセスラインの純白のドレス。ところどころ繊細なレースで飾られていてとってもよく似合っている。
髪にもドレスにも淡いピンクの小薔薇が散らされている。これもよく似合っている。
ブーケにもお揃いのピンクの小薔薇と、レースフラワーみたいなフワフワした白い小さい花が使われていて、これもとっても似合っている。
どれもこれも春の妖精さんのようなアシュリーにピッタリだ。
「じゃあ、行こうか」
泣いている私の手を引いて先を歩くアシュリー。
これじゃ逆だよ!こんな時まで男前だな!
家の玄関のところまで行くと、エスコートをするアダムが待っていた。
アシュリーを見て絶句。言葉もなく泣きだした。
アダム〜! わかる!わかるよ!!
私たち、本当に家族だね!!
玄関ドアを開けると、真っ直ぐに白い布が敷かれている。
リンゴ林まで続いているバージンロードを、声が漏れないように歯を食いしばって歩く滂沱の涙のアダム。
その腕に軽く手をかけて歩く笑顔のアシュリー。
対照的すぎる!!
アシュリー、可愛いけど……
何か切ない。
サラの歌声も切なく聞こえるよ!
エリーとノアもしっかりお仕事をしてくれた。
二回目だからかちょっと余裕に見えたくらいだ。というか、アダムに引いていたのかも。
アダムはこの日、涙の給仕さんと呼ばれた。
二回目だけど慣れる事はなく、感動的に挙式披露パーティーは終わった。
お客様は可愛いアシュリーに感動して(ファンクラブの中には死にそうな顔の人もいたけど)お料理も足りなくなる事もなく、みなさん満足していただいてお開きになった。
そういえばふれてなかったけど、ワイアットさんは魔法使いの正装だった。
胸にはアシュリーとお揃いのピンクの小薔薇のコサージュをつけていたのが、似合うような似合わないような……。
そして
「おめでと〜!」「お疲れ様〜!」
二次会の始まりだ。
エリーとノアをお迎えに来た、トーイのお母さんも今日はお誘いしちゃう!
トーイも一緒に作ってるんですよ!どうです?美味しいでしょ!あれもこれもお勧めする。
エリーもノアも嬉しそうにきゃっきゃしてるし。
いいね!お祝いってこうでなくっちゃ!と、アダムを見る。
泣きすぎて不細工になっている元イケメン。
おっと、私も人の事をいえないかも!
う〜〜〜ん、っと……
二回花嫁さんを見た事もあるし、姉妹同然のアシュリーがお嫁に行っちゃった事もあるし……。
まぁ、なんていうか……
ずいぶんお待たせしてるし……
うん。私は覚悟を決めた。
決心が鈍らないうちに言わなくては!
プロポーズの公開お返事になっちゃったら恥ずかしいけど、これだけ騒がしかったら大丈夫でしょ!
私はコソッとジェイに告げる。
「ジェイ、プロポーズのお返事だけど。お待たせしてごめんね、今いい?」
「ひゃい!!」
ジェイがしゃっくりみたいな変な声を上げた。
し〜んと……
みんなが注目しちゃってるじゃないか!
おぃ!!
だけど今更返事しないなんて事はできそうにない。
ジェイの、ジェイの……
返事を後回しにしたら死んじゃいそうな顔を見たら、言わないではいられないよ〜!
「待たせてごめんね!よろしくお願いします!」
ちょっとヤケクソになって言うと、ジェイは真っ赤になって何も言わず私を抱きしめた。
わ〜〜!! 見てる! 見てる!!
みんな見てるから!!
何があったか察したみんなから、盛大に祝福を受けたよ。
アシュリーたちの結婚式の九ヶ月後、私が(体感)十八歳になる十二月に私たちも結婚式を挙げた。
二〜三日前から降り出した雪は辺りを真っ白な世界に変えたけど、当日は降り続いた雪も止んで穏やかな一日になった。
アシュリーの時も私の時もお天気に恵まれて、アイザックさんからのお祝いみたいだと懐かしく思った。




