63話 結婚式と結婚ラッシュ? 1
エリーが足を踏み出した瞬間ーーー
歌姫の歌声が響き渡った。
空気が一瞬にして神聖なものに変わる。
驚いて振り返ったショーンさんとソフィに笑顔で親指を立てる。
ささっ、行きなされ。
目で伝えると、何が何やらわからないまま二人は歩き出した。
サプライズ成功!
妹弟ちゃんたちは知っているから驚かないよ。
ゆっくり歩く二人が講壇の前につくと、歌声もやむ。
ジェニファーがよく通る声で結婚式の開始を告げた。
それから宣誓の言葉が続く。
「ショーン、生涯ソフィを愛し幸せにする事を誓いますか」
「はい。誓います」
ジェニファーはショーンさんに頷いて、ソフィに視線を移す。
「ソフィ、生涯ショーンを愛し幸せにすると誓いますか」
「はい。誓います」
同じようにソフィに頷いて、エリーに視線を向ける。
花カゴから指輪ののったクッションに持ち替えていたエリーが二人の前に立つ。
先にショーンさんがソフィに指輪をはめて、次にソフィがショーンさんに指輪をはめた。
本当はここで誓いのキスというところなんだけど、恥ずかしがった二人に拒否されてなくなってしまった。
見てる方も照れるけど、感動するのにな〜。しょうがない、二人の式だ。
「皆様の承認の元、ここに二人が夫婦になった事を宣言します」
ジェニファーの厳かな声の後、歌姫が歌い出す。
今度は楽しくて明るい系のJポップだ。
ショーンさんとソフィは、行きよりもゆっくりバージンロードを戻ってきた。
白い布の端まで来ると、歌声もやんだ。
サラ、お疲れさま!
着替えたらパーティーに参加してね!
それから全員ちょっと開けたところまで移動してもらう。
「未婚の女性の方、前の方に出てきてくださーい!」
アシュリーがブーケトスの説明をする。
準備をするソフィとお友達たち。会場は、初めて見る結婚式やらブーケトスやらに盛り上がっている。
そして、背を向けたソフィがブーケを投げると、未婚のお友達たちが大興奮で奪い合ったとか……。
私は結婚式だけギリギリがんばって見た!
本当は料理の仕上げをしなくちゃだったんだけど、そこは絶対見たいじゃない?料理出しをちょっと待っててもらっても是非見たかった!
なので、ブーケトスとかその他の色んな話は後から聞いたものだけど。
お友達たち……
そんな勇ましい姿を見せちゃったら、男性には引かれるんじゃない?と心配した。
(多分)世界初の結婚式は滞りなく終わって、披露パーティーになった。
何日も前から仕込んでいるお料理をどんどん出す。お客様は三十人くらい。それから新郎新婦と、一仕事終わったジェニファーたち。
味も見た目もこだわって、量もご満足いただけるようにたくさん作ったよ!
作っているだけじゃなくて、時々料理も運ぶ。次を出すのに、お料理の減り具合なんかを見るためだ。
「美味いね〜!久しぶりのユアちゃんの料理だけど、やっぱり美味い!!こんなの初めて食べたよ!」
「ありがとうございます!今後もショーンさんのお店で食べられますからね!」
今日のお客様は、ショーンさんのお店を手伝っていた時にもよくきてくれた人たちが多い。
最初はさすがに黒髪黒目の私に驚いていたけど、外国人の出入りも多い港町だし、私も遠い遠い異国からやってきたと言うと案外すんなり受け入れてくれた。
何よりこの国では(この世界では)食べた事のない料理を作っているからね、信憑性があったと思われる。
本日のメニューは立ったままでも食べやすいように工夫してある。全体的には日本の食べ放題の、あんな感じだ。好きなものを好きなだけ好きなように♪
基本、減ったお料理や飲み物の追加、使ったお皿やコップの回収だけだから、表のスタッフは四人でなんとかなっている。
裏方は私とトーイだけだけど、あらかじめ作り置きしてあるから温めたり仕上げをするだけでオーケーだ。
いっぺんに四十人近い人の胃袋を満たすんだもん。そうじゃなかったらできないよ〜!
中盤あたりで披露パーティーのメインイベント、ウエディングケーキの登場です!!
ケーキ入刀はかなり盛り上がった。
ライブっていうのは盛り上がるのかも。マグロの解体ショーとか?ちょっと違うか。
大きなケーキはワゴン車で運ばれる時から注目されてたし!
へっへっへ〜♪ 見た事ないでしょ!
ちょっとドヤ顔になってしまう。いや、作ったのはアシュリーとワイアットさんだけどね!
「みなさまお集まりください。ただ今から新郎新婦がみなさまにケーキのサービスをいたします」
アシュリーの紹介の後、ショーンさんとソフィは二人でナイフに手を添えてケーキをカットする。
それからショーンさんがケーキをお皿にのせて、ソフィがお客様に手渡していく。
ちなみに私たちの分はちゃんと別にあるよ!
「ふわっふわ!なにこれ!美味しい〜!!」
「初めて見る菓子だけど、なんて美味いんだ!」
美味しい美味しいと、会場は驚きと喜びで大騒ぎになった。
焼き菓子はあるけど、ショートケーキのようなやわらかいものはないもんね。生クリームとかとろける食感とか、みなさんお初だろうな〜。
そりゃあ衝撃だよぉ! ニヤニヤが止まらない。
美味しいって喜んでもらえるのはとっても嬉しい!!
楽しい時間というものは、あっという間に過ぎていく。
秋の日は短い。夕方近くなると、だんだん日が陰って肌寒くなってくる。
お開きの頃合いだ。
ショーンさんとソフィがお土産を渡しながらお見送りをする。
お土産はアシュリーお手製の小袋クッキーだ。お祝い仕様で可愛くリボンで結んである。
クッキーね、これもロートゥスではまだないだろうから喜ばれるだろうな〜。
味はもちろん保証つき!アシュリーはどんどん腕を上げているよ!
本当にパティシエを目指しているんじゃないだろか?
お客様はみなさんとても楽しそうに帰って行った。
「招待してもらってよかった!」
「こんな経験もう二度とできないだろうよ!」
「こりゃあ自慢になるわ!」
などなど。それはもう、みなさん帰り道まで大騒ぎだ。
ご満足いただけたようでよかったよかった。
結婚式も披露パーティーも、ブーケトスもウエディングケーキ入刀も、そのケーキ自体も、見た目も華やかなパーティーメニューも、全部全部初めてづくしだったろうしね!
他国の一般人では、一生聞く事のできないだろう隣国の歌姫の生歌とか!
何より、花嫁さんの美しかった事!
女神がかったジェニファーも、歌姫仕様のサラも、チラチラ独身男性の視線を集めていたスタッフのアシュリーも綺麗だけど、やっぱり花嫁さんにはかなわないよね〜!
私はお見送りをするソフィを見て、今日何度目か、うっとりと見惚れた。




