56話 ショーンさんと海辺の町 2
あちこち見ていると、あっという間に時間はたつ。そろそろお昼になるよ。
お腹すいたね〜と、味と値段とお店の雰囲気のリサーチに、なかなか盛況しているレストランに入ってみた。
さすが海辺の町だけあって、魚介類のメニューが豊富だ。料理と値段を記憶する。
六人いるから色々頼んでシェアして食べる。
……まぁまぁ美味しい。
料理人の腕もだろうけど、新鮮な素材がいい味を出しているって感じかな?
お客様からお金をいただいてお料理を出している私は、これでも一応プロだからね!評価は辛いよ!
お料理は及第点だけど、掃除が行き届いてないな。混んでいて忙しいからだろうか(うちの店だったらそんな言い訳は許さないけどね!)やっぱりこの国というか、この時代?は衛生面がぜんぜんだと思う。まぁ、二十一世紀の日本と比べちゃダメなんでしょけど。
ゆっくりと食事を終えた私たちは、ランチの時間は過ぎた頃合いかとショーンさんのお店に戻った。
カランコロン♪
可愛いな。うちのお店にもほしいな。
お店の中にはお客様が二組。もう食べ終わって、そろそろ席を立つような感じだ。
私たちはお客さんのふりをしてテーブルに着いた。
「いらっしゃ--- ユアちゃん!おかえりなさい!!」
わ〜!ショーンさんテンション高っ!!
奥の厨房から顔を出したショーンさんは、お客様からお代をいただいてお見送りをしながら?嬉しそうにドアにクローズの札をかけた。
「お疲れさま!もうランチはいいの?休憩?」
「いいのいいの。いつもこのくらいには客足も途絶えちゃうし。
……それにしても、ほんと久しぶりっす!変わらず元気そうでよかったっす。来てもらえるなんて思ってなかったから朝は驚いちゃって。ユアちゃん遠いところありがとう!」
ショーンさんこそ別れた時と変わらない優しいお兄さんのままだ。周りの扱いが扱いだったから、年上なのに私もちょっと弟キャラのように思っちゃってたとこもあったけど。これは内緒の話。
それからみんなを紹介する。ちょっと困ったのが大魔導師様だ。言っちゃっていいのかな?言っちゃったけど。
思った通りショーンさんはめっちゃ驚いていた。
意外な事に、大魔導師様より驚いたのはラックの方にだった。このラックがあの時の子だと知ると、信じられないという顔をした。
軽く頭を下げただけの無表情なラックを見て、あぁ… となったけど。(笑)
時間がもったいない。さっそく行動する。
「ショーンさんのお店って夜も営業するの?営業時間ってどんな感じ?」
「俺一人でやってるんで、今のところ昼の営業だけっすね。全部一人でやるって大変で。だんだん慣れてきたら夜もやるかもしれないっすけど」
「よかった!じゃあ、厨房をお借りしていい?市場でちょっと買ってきたの。久しぶりにショーンさん一緒に調理してくれる?」
「喜んで!」
話がまとまると、料理ができる頃には戻ってくると、ジェニファーたちは出て行った。宿をとってきてくれるって。
「では、さっそくお米を炊きます!」
「はい!」
炊きますといっても、といだお米を三十分くらいお水につけておかなければならない。はず。
うちではもちろん炊飯器で炊いていたけど、おばあちゃんちでお釜で炊くのをお手伝いした事がある。
うろ覚えだけど何とかなるかな〜。
初めては失敗が多いものだ。お客様に出すものじゃないし、気楽にやってみよ〜!
外国米もとぐのかな? ……わからないからといじゃえ!
それからもう一つのお米料理、パエリアの準備をする。
確かお米を炒めてスープで炊くんだったよね。
コンソメのキューブなんてないから、お肉の筋とか切れ端とか、野菜の皮とか切れ端なんかでスープ?出汁?を作る。
フライパンにオリーブオイルを回し入れたら、みじん切りのニンニクを炒める。香りが立ってきたら玉ねぎなんかの香り野菜も加えて炒める。火が通ったら魚介類を投入!お魚は身が崩れちゃうから動かさず、焦げ目がついたらいったんお皿に取り出す。
そのままそのフライパンにお米を投入!確かお米は洗ってなかった。ビックリしたから覚えている。
お米の色が透明に変わってきたらスープ出汁を入れて、取り出していた野菜と魚介類をのせて蓋をして炊けばオーケー…… だったような?
あれ?サフランはいつ入れるんだっけ?忘れてたわ。
まぁいいかとスープ出汁の中に沈める。
パエリアはショーンさんにお願いする。作り方の指示はしてるけどね。
私は人生初のお鍋でお米炊き挑戦だ!
確か最初は強火だったよね。それから中火?弱火?おばあちゃんが炊き上がりは三十分くらいっていってたから、火加減の時間配分をする。
初めてだから失敗して元々!お米さえあれば何度でもチャレンジできる。そのうち美味しく炊けるようになるさ!と、諦めていたかなり嬉しいお米に超ポジティブだ。
初めてのお米炊きに苦戦したけど、さあさあできました!
パエリアも初めて作ったにしては美味しそうな、い〜い匂い!
ジェニファーたちも戻ってきて、さっそく試食だ♪
やっぱり見た目のインパクトで、みなさんパエリアに手が出る。
ショーンさんが取り分けてくれたよ。
私はもちろん白米?からだよ!
塩味を強くして焼いたお魚さんと一緒に、いざ!いただきま〜す!!
あ〜、美味し…… う〜ん……
美味しいか美味しくないかっていったら不味くはないんだけどね……。
でもまぁ、久しぶりの炊きたてご飯に私は感動ものだ!しょっぱ目の焼き魚とも合う!!
炊き加減はもう少しかな〜。あと何回か練習すればうまく炊けるようになると思う。
お焦げもできたし!冷めたら塩むすびだ!わ〜い!!
パエリアの方もみなさん大喜びで食べている。
あれ?私たち何時間か前にご飯食べたんだけどな〜?
「ユアちゃん!米にこんな使い方があったなんて知らなかったっす!これ美味いっすね!!」
「素材が新鮮だからだよ〜!それに、ショーンさん腕上げたね!」
ニッコリして、弟子を褒める。
「ショーンさん、手紙にメニューのアドバイスがほしいって書いてあったけど、これなんてどう?海辺の町でなきゃこの美味しさは出ないと思うんだ」
流通が迅速じゃないから遠くへ生ものの搬送はできない。王都までなんて塩漬けのお魚しか届かないもんね。しかもめちゃ高!!
「いいんっすか!わ〜!看板メニューになる!!ありがとうございます!!」
焼いただけのお魚も新鮮だからとっても美味しい!
初めて見る白米にも興味津々手を出したりして、みんな賑やかに食べたり話したりしている。
そんな中。
大魔導師様が何かをたどるように厨房に入っていった。
どうされましたか〜?
後をついていくと、スープ出汁の入った寸胴鍋の前にたたずんでいた。
これが気になるの?
不思議に思いつつ「飲んでみますか?」と尋ねると、チラリとこっちを見た。
スープ出汁を小皿にすくって渡す。
無表情なりになんとなくわかるような気がするのは、日々ラックを見ているからだね。
読みが当たると、勝った気になるという。
なんの勝負だよ!と自分ツッコミをしていると、大魔導師様は小皿に口をつけて、ゆっくりと飲み干した。
「あぁ…、 懐かしい……」
心からのため息と一緒の言葉が聞こえて、私は大魔導師様を見上げた。
わっ! 私は慌てて目をそらした。
大魔導師様が涙ぐんでいたように見えたから。
そらから私は、黙って手を出した。大魔導師様から小皿を受け取って、今度はちゃんとしたスープ皿になみなみスープ出汁を注いでスプーンと一緒に渡した。
大魔導師様はちょっとだけ目を見張って、ほんのり目尻が下がった。
それから黙ってスープを飲んでいたよ。




