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49話 フロース祭りと歌姫 1




五月になった。今日から一ヶ月もの間フロース祭が行われる。

うそかほんとか、今年はフロース様(女神様)が魔王を倒して千年になるという特別な年なんだとか。そこで一ヶ月もの長い間お祭りが開催されるんだって。

それにしても千年て……。

長いな、よくそんなに歴史が続いてるね。や、西暦は二千年以上続いてるか。


このフロース様は大陸共通の信仰神だそうで、どこの国でも大祭が行われるだろうけど、やっぱり大陸一の大国パエオーニアが一番盛大じゃないかって、大陸中からお金持ちやら旅芸人やらが王都にやってくるらしい。

その他、各国の有名なアーチストが招かれるとか。何せ一ヶ月もあるからね。


初日から三日間は色んなパレードがあったり、中頃には剣術大会やら魔術大会やらがあったり、ラストには隣国の歌姫の公演があったりとイベントが目白押しだ。

そういった大きな催し物がなくても、毎日どこかで何があるらしい。


今年に入った頃から、徐々に王都はソワソワとした空気になってきてたけど、四月になったらさらに落ち着かない雰囲気になった。

少し前には広場に簡易の劇場や、ちょっとした小屋なんかも建ち上がったし、お祭り気分も最高潮だ。


フロース祭初日。パレードは、初日が一番すごいらしいけど、あいにく今日はお店がある。お祭りの間中遊んでいられるのはお金持ちだけで、庶民は働かないと生活していけません!

お祭りは一ヶ月も続くし、何日かはお休みになるからその時に遊びに行く予定だ。とりあえず三日目のパレードはお休みとかぶったから、見に行くのがとっても楽しみだ♪


それにしてもお祭り好きな日本人の血が騒ぐよ!

元の世界では、盆踊り系の和風のお祭りとか、町内会のお祭りなんかしか行った事がない。西洋のカーニバル(っていうのかな?)っぽいのって初めて!お祭り気分で、何となくウキウキしながらの仕事になっちゃうのは仕方ないよね!


でもそんなウキウキ気分より、もっと嬉しくなるような事があった!

お昼の鐘の後、ありがたい事に今日も満席で厨房も目の回る忙しさの中、オーダーを通しにきたアシュリーが笑顔で言った。


「ユア、懐かしい人が来てるよ!」


誰だろう?と思いつつ、カウンターまで出て行って示された方を見ると


「ジェニファー! わぁ〜!いつこっちに来たの?!」


リーリウムで別れたジェニファーたちがいた。


「昨日の夕方よ。さっきパレードを見て、ギルドで聞いてユアのところにお昼ご飯を食べに来たの」


相変わらずすごい美人さんだ。いや、去年の夏に別れた時より大人っぽくなって、さらに綺麗になったような〜。

なんて観察してる間はない!忙しい時間だ!

また後でね!ゆっくりしていってと、挨拶もそこそこに仕事に戻る。


そして今日の営業も終わり、私たちは遅いお昼を食べながら久しぶりにジェニファーと話している。

アシュリーとはまた違ったタイプの美人さんに、トーイは落ち着かないようで微笑ましい。いや〜、小さくてもちゃんと男の子だね!


「リーリウムで食べたサンドイッチも美味しかったけど、ユアの作るものは独創的ね!王都にいる間は毎日食べにくるわ」


あら、お得意様がまたできた。

お店は週に一日お休みがある事を伝えて、時間が合ったらお祭りも一緒に回ろうと約束した。




フロース祭三日目。今日はお休みの日なのでみんなでお祭りに行く。パレードが楽しみだ♪

ちなみに人混みが苦手なラックと、ご高齢のリアンさんはお留守番ね。


パレードがあるメイン通りは朝から大勢の人がいた。私たちも期待を込めてまだかまだかと待っていると、ようやく遠くの方から演奏が近づいてきた。


お客さんの話によると、メインはオープンカーならぬオープン馬車?に乗っている日替わりのフロース様(役)。妖精さん役の小さい女の子も同乗しているとか。

その後ろには騎士団の精鋭部隊がキリリと続いているんだって!

騎士とかちゃんと見た事ないし!めっちゃファンタジーだ!ワクワクする!!


そのフロース様(役)、初日は王女様が真っ白なドレスで、二日目は貴族のご令嬢が真っ赤なドレスで大いに盛り上がったって。

三日目は庶民という事だけど(といってもお金持ちのお嬢様ね)どんな感じなんだろう?


パレードは、まずは先頭の楽団のみなさんが賑やかな曲を奏でながらやってきた。

その後ろを、オープン馬車から手を振りながら通り過ぎていくフロース様(役)。妖精さん役の女の子が色とりどりの花びらをまいている。

鮮やかな黄色いドレスのお嬢様、確かに綺麗だけど……。


(うちのアシュリーの方が可愛いよね!)


ワイアットさんとアイコンタクトでハイタッチ!

アシュリーは顔を赤く染め、アダムはうんうんと頷いていた。


騎士さんたちカッコよかったけど……。

ジェイの方がカッコいい!なんて本人には言えないけどね!

まぁ恋のフィルター効果もあるかもだけど!なんて思っていたらアシュリーが


「騎士様と魔法使いは違うけど、私もワイアットさんの方がカッコいいと思う」


顔を赤らめて小さく言う。

あら、何か伝わりましたかね?


うんうん!!

私たちは手を取り合って悶えてしまった。

恋ってすごいね!


パレードを見たら、屋台の美味しそうなものを食べ歩きする。

いつの間にやらはぐれて?しまったアシュリーとワイアットさんはほっといて、ジェイとアダムと三人でお祭りを楽しむ。


何気にイケメンなジェイとアダム。

超標準な私が両手にイケメン状態はいたたまれないけど、気にしない!なんてったって千年祭だよ!千年に一度の大きなお祭りだもん、思いっきり楽しまなくっちゃ!!

途中で偶然会ったジェニファーたちとも一緒に、私たちはお祭りを楽しみきった。




翌日からはまたお店を開ける。いつもとは違う客層に、大勢の観光客が訪れているんだなぁと実感する。


この国には、というか、この時代には当たり前だけど、グルメ雑誌なんてない。単純に口コミでお客様は来てくれる。嬉しい評価だ。

一見さんの観光客と思われる人たちの他に、常連さんたちの顔もちゃんと見える。


私の倫理観ではイヤな事だけど、身分制度のあるこの国では平民の中でも上下があって、一般人と通りを一本隔てて、貧民街の下の人ってはっきり線引きされている。

下働きみたいなところで混ざっている人たちもいるみたいだけど、たいていの一般人は貧民街の人を見下している。


国としてそういう制度だから、それはもうしょうがないけど、私はイヤだからそういう区別も差別もしない。

それは村出身のジェイたちや、奴隷だったラックも同じ気持ちで、もちろんリアンさんもそうだ。


外でまで大っぴらに刃向かってはいないけど、お店の中は私たちのテリトリーだし、元々アイザックさんの希望で貧しい人たちのためにって始めたお店だ。

その他色々な階級の人も来てもかまわないけど、私たちの大事なお馴染みさんたちを見下したり侮辱するような人にはお帰りいただいている。


そりゃあもう断固として!

だいたいお料理を出さないし!

それから出禁!!


そんな治外法権なうちのお店の中では、お客さん同士が意外とうまくやっている。

さすがにお貴族様に馴れ馴れしく話しかけるような強心の人はいないけど、思わずといったように「これ美味しい!」から始まって


「この前の◯◯が美味しかった!」 とか

「それを言うなら、この前の××も美味かった!」 とか話が弾んでいき

「何それ!どんなのだった?食べたい!!」 とか

「どれが一番美味しいか」 なんて大盛り上がりになっていたりする。観光客さんたちも「美味しい!」話に混ざったりしてる。


美味しいものは人を幸せにするって、アイザックさんが言っていた。

大いに盛り上がったり、身分の隔てなく話す事が楽しかったり、食事の間だけでもそういう気持ちになってもらえたら嬉しい。この仕事ができてアイザックさんに感謝だ。提供する私たちも幸せな気持ちになれるもんね♪




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