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47話 開店です! 1




よく晴れて、朝から暖かい春の日になった。こんな日に開店できるなんてとっても嬉しい。

アイザックさんが空からお祝いしてくれてるみたい。


開店準備はオーケー♪

希望通り、白木のテーブルセットに生成りのテーブルクロス。卓上の小さい一輪挿しには、リアンさんチョイスのお庭の可憐な小花が咲いている。


白と淡いピンクのチェックのカーテンは、壁に飾られているオリバーさんの風景画を邪魔しないくらいの色合いだし、入り口のもうちょっと大きい絵には華やかな春の花が咲き誇っている。

大きな窓を作り直した入り口はピカピカに磨き上げられていて、その前のウッドデッキには鉢植えの花を置いてウエルカムアピールになっている。


営業はランチのみ。十一時から三時までと、お昼ご飯の時間としてはちょっと長めに余裕を持たせた。いろんな職種の人がいて、お昼の鐘の頃に食べられない人もいるからだ。

メニューは日替わりをひとつだけ。一人で短時間に色々作る自信はなかったし、食材を無駄にしないためにね!

内容は、私が食べ慣れているファミレスのランチセットを真似てみた。サラダとスープとメインのお肉料理とパン、食後にデザートとドリンク。


これで銅貨八枚!日本円で八百円くらい。

ファミレスのランチくらいの値段設定にしてみたんだけど………。

これでも食材費ギリギリか、ちょっと足が出る。光熱費や人件費はアイザックさんの好意になる。


お値段以上の価値のある味と量だと思うけど、こればっかりは食べた人の評価だからなぁ……。

リアンさんとも相談しながら決めてみた。とにかくこれでやってみようと思う。




十一時になった。

開店前からお店の前には何人かの人が待っていてくれて、アシュリーとラックに案内されてテーブルにつく。

厨房のカウンターからホールを見ると、二席に七名様のご来店だ。


四名様の席には、クッキー売りの初日に強烈な印象を残したあのおばちゃんがいる。第一印象はナンだったけど、その後のお付き合いでいい人だとわかったし、今日だって初日の一番に来てくれた。ありがとうございます!

三名様の席はお母さんとお子ちゃん二人。お初のお顔だった。宣伝効果かな?ご来店ありがとうございます!


私はさっそくメインのチキンを揚げ始める。

一枚肉だから揚がるのにちょっと時間がかかるのだ。


同じくカウンターからホールを覗いていたトーイがソワソワしている。

あぁ、あのテーブルのお母さんと女の子と男の子はトーイの家族なんだね!食後のデザートをおまけしてあげよう♪


お客様にお水を持っていったアシュリーとラックから、それぞれオーダーが入る。


トーイが人数分のサラダを盛り付けて出す。それからすぐにスープの用意に動く。

サラダは予め千切った数種類の野菜を混ぜてある。綺麗に盛り付けて手作りドレッシングをかければオーケーだ。

スープも大きな寸胴鍋にたくさん作ってあるから、煮立たせないように気をつけてよそるだけでオーケー。

厨房は素人二人だから効率を考えてある。いや、これって普通?


私はチキンの揚がり具合を見ながら、窯の中のパンを見る。

焼いている訳ではなくて温めているって感じね。

うちのパンはスカスカの(言い方悪いな)軽いタイプのパンじゃなくて、中身の詰まったしっとりしたタイプ。

自慢だけど!パンだけで食べても美味しいよ!

ちなみにパンは基本二つ出すけど、おかわり自由だ。大人の男の人なんて二つじゃ足りないだろうからね。アシュリーとせっせと作ったよ!


サラダとスープが終わる頃合いでチキンカツを出す。いいタイミングで揚げ上がった♪

サクサクと包丁を入れて食べやすくカットする。香ばしく揚がったチキンの上に、なんちゃってデミグラスソースをかける。これまた試行錯誤してやっと出来上がった、私的には傑作だ。


困った事にこの国には、洋食屋さんには定番のウスターソースがない。お店をするならソースは欲しい。という事で、やるからにはと火がついた!

香り野菜とハーブとスパイス、ワインやビネガー、お砂糖なんかを手に入るだけ入れて煮込んでみる。

そこからは引き算で、ひとつひとつ食材の匂いをかいだり、一口ずつ味見をしつつ、記憶にあるソースに近い味に作り上げた。


もうもう!! 出来上がった時にはトーイと手を取り合って厨房の中をグルグル喜び回ったよ!!

トーイは意外と味覚が繊細で鼻もよかった。優秀な助手だ。


ウスターソースができたら、後はケチャップもどきがあるからデミグラスソース風もできた。

どれもなんちゃってだけど、この国で作れた、私的には満足できる味ばかりだ。お客様にも自信を持って出せるよ!


それを揚げたてのチキンカツの上にかけて、素揚げした野菜を彩りよく添える。

実家の?近所にあった洋食屋さんの、私の大好物のメニューを真似させてもらった。

本当にあれ、ものすごく美味しかったんだから!

試食でみんなに出したら、やっぱりものすごい高評価だった。でしょ〜♪ と少々お鼻が高くなってしまった。

ふんわり温かいパンも人数分出す。


とりあえず一段落したので、トーイとカウンターからこっそりお客様の様子を見る。

初だからね!ドキドキするよ〜!!


「サクサク!!何これ、美味しい〜!!」

「これ兄ちゃんが作ってるの?!すげ〜!!」


美味しいね。と笑顔のお母さんと、大興奮の妹ちゃんと弟ちゃん。

トーイはもじもじとカウンターから持ち場に戻ってしまった。


「かかってるこれ何だろう? ……初めて食べる味だわ。美味しい」

「美味しいね〜!さっきのスープも美味しかったし、あんなサラダ初めて食べたわ」


ふあぁぁ…… と擬音が出そうな顔をした後、しみじみと語り合いながら食べているおばちゃんたち。


どちらからも好評でよかった。安心したよ〜!ありがとうございます!!


メインが終わったら、デザートとドリンクを出す。

今日はリンゴのパウンドケーキと、リンゴジュースかアップルティー。

なんせうちにはたくさんリンゴの木があるからね!去年収穫したものは全部加工済み。一年くらい食べられる量がある♪ アイザックさんありがとうございます!


リンゴのパウンドケーキは今朝アシュリーが焼いたよ。焼き終わった後の窯の余熱でパンを温められるから節熱?だね!

リンゴのジュースは、リンゴの砂糖漬けでできたシロップを水で割ったもの。

アップルティーは、しっかり乾燥させたリンゴの皮と茶葉をブレンドしたもの。リアンさん自慢の香りのいいグリーンアップルを使ったから一味違うよ!


と、今日のメニューはこんな感じ。初日だから気合いを入れた渾身のお料理たちだ!

けど……、お客様たちは満足してくれただろうか?


私たちはまたカウンターからこっそり様子を見る。

うっとりと満足そうにデザートとお茶を飲んでいるおばちゃんたち。

お腹いっぱいで苦しそうなトーイの妹ちゃんと弟ちゃん。


よかった。美味しかったと思ってもらえたらしい。

七人から五十六枚の銅貨は、確かに私たちの自信になった。


最初のお客様を見送ると、お昼の鐘に合わせて次のお客様たちが来店した。


改装工事をしてくれたおじちゃんたち!ありがとうございます!

後輩?年下に見える男の子を連れたジェイと、また別のグループのアダム。宣伝ありがとね!

四つのテーブルがうまって、私たちは慌ただしく料理を提供する。


ワイアットさんとオリバーさんも来てくれた。

まぁ来ると言ってたけどね。混み合ってきたから二人には相席してもらった。


それから宣伝したお馴染みさんたちが来てくれて、クローズの三時になるまで途切れる事なくお客様で席はうまったよ!


疲れたぁ……

後片付けもそこそこに、私たちは遅いお昼を食べていた。

今日の反省会も兼ねる。


慣れみたいのは数をこなさないとだから今後の課題だ。

味の評価はみなさんよかったようで、まぁ食べた事のない異世界?美食の国の料理だからね。そこは自信を持っていた。けど、やっぱ緊張したよ〜!


お馴染みさんたちには、アットホームなお店の雰囲気も好評だった。だてに築いた信頼関係じゃないよ!

開店初日はまずまずのスタートで安心した。

アイザックさん、がんばりますね!




それから、口コミのおかげか日に日にお客様が増えていく。

お馴染みさんたちのほか、一般人(って言い方、どうもな〜)も増えてきて、売り切れごめんでお帰りになってもらうお客様も出てきた。申し訳なくて胸が痛んだよ。


申し訳ないと思うけど、お弁当屋さんの時と同じでムリなくやっていきたい。

自分たちの力以上にやり過ぎて、何かミスが出たら……

食べ物だけに、お客様の健康や命に関わるような事になったら取り返しがつかないからね!


まぁ、初物(はつもの)って関心を引くものだしね。しばらくしたら落ち着くでしょ。と思っていたけど、全然落ち着かない。

美食の国、日本産の料理をなめていたよ。

アイザックさん、大盛況ですよ!




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