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45話 開店準備と画家さんもゲット 1




年末年始はお休みもあったけど、改装工事は着々と進んでいる。

元々は、工事をしてくれている職人さんたちの休憩の時にお茶とお茶菓子を出していたけど、ある日お弁当を忘れたおじちゃん一人にご飯を出すと大好評で、それならとお店で出す試作を食べて評価してもらう事になった。


おじちゃんたち、それをものすごく喜んでくれて、そういう効果もあるのか、リアンさん曰く仕事が早くて丁寧らしい。

おじちゃんたち、開店したら通うからな!と、いかつい笑顔で言ってくれた。あら、開店前にお得意様ができたよ。


厨房とお手洗いは要望を伝えてあるけど、客席の方をどうしようか。可愛いアシュリーとイケメンのラックがホール担当になっているので三人で話し合う。といっても、ほとんどアシュリーと二人でだけどね!


元々社交用のホールだけあって、壁や床や窓なんかはそのまま使える。むしろ豪華すぎるくらいだ。もっとアットホームな感じがいい。

という事で、テーブルセットは白木で素朴感を出す。テーブルクロスは、まんま生成りの綿にしよう。卓上には小さな一輪挿しに季節の花なんかを飾りたい。


カーテンは季節で色を変えたい。白と淡い色のチェックなんかはどうだろう?

準備に時間がかかるから開店は春になる。最初は春色のピンクなんて可愛くていいな。個人的にはそれでスタートしたい。

真っ白な壁には、素朴なパステルカラーの風景画なんかがほしい。

今飾ってある高価そうな絵画は外させてもらおう。アイザックさんすみません。

大理石の床はもうしょうがない。モップがけが楽だと思っておこう。


揃えるものはまだまだある。考えるのも楽しい♪

制服は大事だよね!コックコートと呼ばれるコックさんのユニホームは、やっぱ白だよね!動きやすいようにパンツスタイルだけど、前掛けをロングにしてちょっと女子力?を上げてみる。


ホールの制服は、アシュリーの目の色に合わせて水色のワンピースに白のエプロンにした。◯ィズニーのアリスの配色だ。

髪の毛が落ちるなんて論外!という事で、私とアシュリーはシニヨンにする。あ、アリスじゃなくなった。

でもメイドチックで可愛い。アシュリーは何を着ても可愛いなぁ。


ラックは白シャツに黒のパンツ。ただのファミレスの制服みたいだけど、イケメンが着ると何でもカッコよく見える。

美少女とイケメン、最強だな。


そうそう、仕事の合間に立ち寄ったトーイ。お店を開く事を知ると、働かせてほしいと言いだした。

アイザックさんのお誕生日に食べたお料理が衝撃的だったようで、あれに携われるならどんな事でもすると言う。


元々従業員を募集しようと思っていたから、知ってる人ならこっちも助かる。何やら思い入れもすごいし、小さいのに真面目に働いている姿もずっと見てきたから信頼もある。

最初はあまりお給料は出せないよと言いつつ、余ったらご飯を持たせてあげるねと、一緒に働くことになった。


配達の仕事をやめたら、開店まではうちのご飯作りのお手伝いをしてもらう。包丁に慣れてもらわないとね!

トーイはお揃いのコックコートだ。


とりあえずこの四人でスタートしてみる。人手が足りなくなったら募集すればいい。

何せ初めてだから何が何やら。手探りでやっていくしかない。


ちなみにジェイとアダムはこれまで通りギルドでお仕事をする。

一家全員でやってコケたら露頭に迷うと、現実的なアダムの意見だ。


その他、食器やカトラリー、お鍋や調理器具なんかはアイザックさんのツテを使ってリアンさんが手配してくれた。

鍛冶屋さん?金物屋さん?(もういいや、金物屋さんで!)にオーダーのフライパンとかね。

開店準備は順調に進んでいる。




せっかくなら、開店の日は三月のアシュリーのお誕生日にしようという事になった。

それじゃあアシュリーのお誕生会はその前ね!なんて話しながら、今日は久しぶりにクッキーを焼いて売りに来た。


アイザックさんの意向は、貧しい暮らしの人たちでも出せる金額で、美味しいものを食べてもらいたいというものだった。

だから私たちの味を知ってくれているお馴染みさんたちにお店の宣伝に来たって訳。

貧民街(って言い方、何かイヤだなぁ……)の人たちは文字が読めない人も多いから、口伝えで広めてもらおうと思う。

トーイもしっかり宣伝してくれてるよ!


クッキーの味を知ってくれているみなさんにはバッチリ宣伝できた。屋台で食べた事はあっても、お店で食事した事がないという人たちだ。私たちの人となりを知ってくれてるから初体験でも来やすいと思うんだけど……。


そういえばこのフリマ?には、自作の野菜や取ってきた果物や木の実なんかの他、やっぱり自作の日用品とか、なんの用途に使うのかわからないような趣味の物まで色んな物が売られている。

お店で使えそうな物があるかと、クッキーが早々に売り切れて店じまいになった私たちは見て回る事にした。

ちゃんと見るのは初めてで楽しみだ。


ウロウロと見て回っているうちに、通りの外れの方に何枚かの絵を置いている画家さん?がいた。

絵が売られているなんてびっくりしたよ。

ここら辺に暮らす人たちに絵を買う余裕なんてないんじゃないかな、なんてちょっと失礼か。


売れてないんだろな〜と思われるガリガリに痩せた身体。

ボサボサの伸びっぱなしの髪は後ろで一つに結ばれている。

この辺りでもさらに貧しそうなお兄さんだった。


お兄さんにも目がいったけど、何よりその絵に目が惹かれた。

何だろう、鉛筆画?ただ黒一色なのに、素朴な風景が妙に和む。

これいいな〜。アシュリーを見ると、アシュリーも気に入った様子だった。


「お兄さん、ここにある他にも絵はありますか?」


冷やかしだろうと目も向けなかったお兄さんは、私の言葉に驚いたように顔を上げた。


「絵に色を塗ってもらうことは可能ですか?」


小娘二人に落胆の色と、もしかしたらの希望の色をのせて、お兄さんは私たちを見て言った。


「絵を、買ってくれるんですか?」

「はい。私たち、今度レストランを開くんです。そのお店に飾る絵を探していたんですけど、お兄さんの絵はほしいと思っていたイメージにぴったりなんです」


私はニッコリ笑って心からそう言った。

本心は伝わるもので、お兄さんは本気にしてくれたようだ。


「絵は家にまだあるけど、色を塗る事はできません。絵の具を買う金がなくて……」

「先に絵の代金をお支払いするか、こちらで絵の具を用意したらいいですか?ちょっと要望もあるので、叶えてもらえたら嬉しいです」


お兄さんの瞳からは落胆の色がなくなっていた。

それから屋敷の場所と特徴を伝えて、とりあえず持って来られるだけの絵を持って来てもらう事にする。

値段交渉とかわからないし。こういうのはリアンさんの出番だ。




屋敷に戻って、待っている間にお昼ご飯の用意をする。

ジェイとアダムは仕事に行ってるから(ちゃんとお弁当を持って行ってるよ!)私たちの他に、お兄さんの分も作っておく。

あの痩せようじゃ、まともにご飯を食べていなそうと勝手に思う。

けど、たぶん当たっているだろう。


工事のおじちゃんたちには、今日はお昼ご飯はお休みでクッキーを渡してある。これはこれで喜ばれた。


お昼もだいぶ過ぎていたので先に食べていると、ドアチャイムが鳴った。

私は迎えに立って食堂まで連れてくる。

お兄さんが抱えきれずに落としそうな絵をラックが半分持ってくれた。


「お兄さん、まずは手と…… 顔を洗ってきて、ご飯にしましょう! 絵の交渉はそれからにしましょ?」


お兄さんは目をまん丸に見開いて、私たちとテーブルの上のご飯を見ている。

驚いているのは、着いて早々一緒にご飯を食べようと言われた事なのか、美味しそうなご飯なのか、両方か。


お兄さんはトーイに案内されて洗面所に行った。

それからオドオドとフォークを持って様子を見ながら一口食べた。後はもうしゃべる間も息をする間もない程ガッついてご飯を食べている。

何かこんな風景見た事あるような……。


ご飯を食べ終えたお兄さんと、改めて自己紹介から始める。

お兄さんの名前はオリバーさんという。今年二十五歳だそうだ。

子供の頃から絵を描く事が好きで、自分で描いた絵を売って暮らしたいと思っている。けれど全く売れず、日雇いの仕事をして画材を買って描き続けているんだって。

食事より画材!という……。確かにその身体に現れてますね。


通りでサラッと話したけど、お店の予想図を見せながらきちんと説明する。

客席の壁と入口の壁に季節の風景画を飾りたい事。入口の方は客席の物より大きい絵がほしい事。全体的にふんわりとした色合いの、和み系でお願いしたい事。


持ってきてもらった絵を見せてもらって、春の風景画を必要な数選ぶ。これに優しい色をつけてもらえば希望通りだ。

後はもう少し大きくて華やかな入口用の絵も注文する。値段と、この先の季節ごとに入れ替える絵の交渉はリアンさんに任せる。

私たちは絵の相場はわからないし、オリバーさんもよくわかっていないようだったから。


この後、オリバーさんとのお付き合いはずっと続く。

季節ごとに入れ替わる絵に目を止めた、さるお貴族様がオリバーさんのパトロンになるのは五年後。

オリバーさんはそれからだんだん有名な画家さんになっていく。

だけどそれはまだ先の話ね。


絵で食べていけるようになってよかったね!

絵の作風が変わってしまったからお店では飾らなくなっちゃったけど、お客さんとして来る…… というか、ほとんど毎日通って来る。

高級なご馳走より、初めて食べたうちのお昼ご飯の方が美味しかったからだって。




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