41話 この世界に来た意味を考える 1
クッキを売りに行き始めて、週に一度のお休み以外毎日通っていると顔見知りさんも増えてきた。
初日のあのずうずうし…… ゴホン。パワフルなおばちゃんとも親しくなった。
アイザックさんに言われて二日ほど寄りつかなかったけど「美味しかったから」と買いにきてくれるようになった。
ちょっと気まずそうにしてたから、きっと根は悪い人じゃないと思う。
トーイともほとんど毎日会っている。
私たちが通りにいる時には、まだ買えなくても近くに来たら顔を見せてくれたり、後からお屋敷の方に買いにきてくれたりする。
一番最初にお屋敷に来た時にちょっと緊張してたのが可愛らしかった。配達で大きなお屋敷には慣れているけど、仕事じゃなかったからだって。
そんな中、今日も朝からうちにワイアットさんがいる。
いつの間にやら私たちのお休みに自分のお休みを合わせているし。
ワイアットさん、宮廷魔法使いと聞いていたけど、そんな自由でいいのかな?宮廷って国に勤務してるって事だよね?日本でいったら公務員?
それとなく聞いたら、高位の魔法使いは色々優遇されるんだって。
実力は知っているけど、性格的にそんなすごい人に思えないんだよね……。
なんて失礼な事を考えていたら、お土産にメロンを持って来てくれた。頂き物だって。やっぱ偉い人なんだ!と高級メロンで思ってしまう単純な私。
さっそく朝ご飯の時に切って出す。
全員で八人いるから八等分したけど、一切れが小さくならないくらい立派なものだった。
「あれ?ユアは食べないの?」
「うん。お昼の後にカキ氷をするでしょ?その時にメロンミルクにしたいんだ」
「メロンミルク?何それ美味しいの?」
「カキ氷の中で私が一番好きな味だよ」
「マジか!もうメロン食べちゃったよ!」
今朝も賑やかだ。
ワイアットさんが遊びに来た日は、お昼ご飯の後のカキ氷がお約束になっている。ワイアットさんがいると氷ができるからね♪
ワイアットさんも、カキ氷なんていくらでも食べ放題でしょうに、自分で作っても美味しくないってここでみんなと食べるのを楽しみにしてるっぽい。
そうだね!一人で食べるよりみんなで食べる方が美味しいよね!
ついでに、ご飯やおやつも楽しみにしてるっぽい。
朝ご飯の後、午前中は掃除や洗濯やあちこちの手入れなんか、それぞれやる事をやって、お昼になったらみんな揃ってご飯を食べる。
そしてお待ちかね、週に一度のカキ氷の時間で〜す♪
ふわっふわのカキ氷。
カキ氷器を作ってくれた職人さん!いい腕してますね〜!
あ、ワイアットさんの氷もいい味してますよ!
テンションが上がってしまう。なんせ暑いしね、カキ氷は至福だよ!
特に今日は、かなりお楽しみのメロンミルクがあるんだもん!わ〜い!!
ふわっふわのカキ氷の上に、メロン果汁と練乳もどきをかける。
ふわぁぁぁ……
今、私の目はハート型になっている事でしょう!
では一口。
「ん〜〜〜!!!」
目を閉じて堪能する。
記憶にあるメロンミルクと遜色ない美味しさ!と思われる。
「そんなに美味いの?」
美味しさに悶えている私に、思わずといった感じでジェイが聞いてきた。
「そりゃあもう!食べてみる?」
私はひと匙すくうと、ジェイに差し出した。
ガチッと音が聞こえそうに固まったジェイ。
みるみる赤くなっていく……。
え? え? あ!
気づいた私も固まって顔が熱くなる。
えっと…、 間接キス的な?
そんなつもりじゃなかったんだよ〜〜〜!!!
ど、ど、どうすればいい?!
脳内大混乱!!
「今日もひとつください!」
どうしていいかわからない空気をぶっ壊すようにトーイがやってきた!ナイスタイミング!!
トーイは来た事に気付かれなかった時は、自由に食堂まで入って来てもいい事になっている。
「わぁ! それなに?」
トーイは初めて見るカキ氷に目を輝かせる。
そういえば、トーイはワイアットさんがいる時に来たのは初めてだったか。
トーイ、ほんとナイスタイミングな登場だよ!
「カキ氷っていうの、食べてみる?」
「ユアッ」
焦った声が聞こえたと思ったら、ジェイは私の手首を持って、パクッとスプーンを口に入れた。
え! え! え! か、か、間接……。
無言再び……
それからジェイは猛烈な勢いで自分のカキ氷を食べだした。
しゃくしゃくしゃくしゃく!!!!
あ、そんなに急いだら!
「……っ!!」
ほら、頭がキーンってなるんだよ〜!
額にグーを当てて耐えているジェイ。一体どうしたっていうんだ?!
大丈夫?と声をかけると、うんうんと無言で頷いた。
とりあえず仕事中で時間のないトーイにカキ氷を作る事にする。
「味は砂糖水?とハチミツレモンと練乳と、どれがいい?」
「えっ! えっと… わからないから、お任せで!」
トーイは走り回っている仕事だからなぁ。
疲労回復にハチミツレモンにしてみた。
「さぁどうぞ!」
興味津々、恐る恐るという感じでスプーンを持つトーイ。
「あぁ、作ってやるのか」
「何これ!! すごい!!」
二人の声がかぶったけど、ジェイの声はしっかり聞こえちゃった。
えっと……
「トーイに食べさせてあげちゃうと思ったんだね〜」
アシュリーが残念な子を見るようにジェイを見る。
うん。そういう事なのかもね。
何となく、自惚れていいなら、えっと……。
額にグーをしたままアシュリーの声が聞こえないふりをしてるけど、ジェイ、顔が真っ赤だし!
つられて私もどんどん顔が熱くなっていくし!
何だか周りはニヤニヤ妙な雰囲気だし!!
「えぇぇ!! そういう事なの?!」
「そういう事なの」
トーイとアシュリーの会話がとどめを刺した……。パタリ。
そんなちょっとした事件?はあったりしたけど、日々は穏やかに過ぎていく。
クッキーを売りに行き始めてひと月たって九月になった。九月はアイザックさんのお誕生日がある。できたらリンゴのケーキが焼きたかったけど、収穫するにはもうちょっとかかるね。残念!
お誕生日にはお約束のハンバーグとパンケーキ。
それから出始めだけど秋の味覚と、まだまだ出回っている夏野菜のメニューも色々。もちろんワインも用意する。
ハウス栽培なんてないから、本当にその時期のものしか食べられないけど、それが一番美味しかったりするんだよね♪
そろそろ終わりの夏野菜。トウモロコシと牛乳で作った冷製スープは、アイザックさんがすごく気に入ってくれたからそれと、残暑が厳しくてあっさりした味付けがいいかと、ハンバーグのソースにはトマトと玉ねぎを煮込んだ酸味のあるものにして、仕上げに刻んだバジルを散らしてみよう。
個人的には、大根おろしと青じそにお醤油をかけた和風が食べたかったけど作れない。
みんなは和風なんて知らないし、トマトソースも美味しいからまぁいっか♪




