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38話 王都と水の魔法使い 2

 



リーリウムでは奥様のお墓参りの行き帰りを歩いていたアイザックさん。

ロサに来てそれがなくなったから、リンゴ林を歩くのはその分の運動をかねる。


リンゴの手入れは、リアンさんに習ってラックがする事になった。

私とアシュリーは身長的な事もあるけど、高いところの作業は女の子はあぶないからって。さすが西洋?レディーファーストっぽい。

でも収穫とか、人手がいる時はもちろん手伝うよ!


リンゴ林を歩きながら、アイザックさんとは色んな話をした。

おじいさんに見えるけど、アイザックさん実はまだ五十二歳なんだって!


ジェイに聞いた話では、この国では五十歳はご長寿らしいけど、うちのおじいちゃんより十歳近く下に見えなかったよ。

やっぱあれかな、平均余命八十歳の日本人と三十年の差が見た目にスライドされてるのかな?

それとも西洋人の方が東洋人より年上に見えるってヤツなのかな?


リンゴ林以外でも、アイザックさんの話を聞いたり、私のいた世界の事も話したりした。

アイザックさん知識欲旺盛な人みたい。話すたびに質問が入るし、説明すると理解する。

この世界にはないものを想像して理解して納得してる。アイザックさん頭がいいなぁ。


それに、さすが大商会の会長さんをしていただけあってか人をよく見ている。元気がないとか、いい事があったなとか、話題を振ってくる。

人生の大先輩だからか、話しているうちにいつの間にかいい方向に導いていてくれたりする。


うちのおじいちゃんは今も現役?で働いている。

小さい頃だけど、長い休みには姉弟だけでも泊まりに行った。

おじいちゃんは平日は会社に行っていて昼間はいなかったから、おばあちゃんより話した事は少ないんだけど、物知りで面白いおじいちゃんが大好きだった。


アイザックさんといると、よくおじいちゃんを思い出す。

おじいちゃんを懐かしむ気持ちがそう思わせてるのかもだけど、アイザックさんとちょっとかぶって見えたりする。


落ち着いた生活を送れるようになったからか、ホームシックなんてなってたりするのかな。

大人と一緒に生活できる環境って、やっぱり安心するのかも。




そんな風に毎日が穏やかに過ぎて、八月になった。


暑い〜〜〜

この世界というのか、この国というのか、異世界でもやっぱり夏は暑いのね……。


「アイス食べたい……」


グデ〜とだらしなく伸びながら呟くと、聞いた事のない言葉にアイザックさんがすぐに反応する。


「アイス?」

「アイスとは元いた世界にあった、甘くて冷たくて、口に入れるとスッと溶ける最高に美味しい、美味しいものです!」


あ、美味しいを二回言っちゃった。大好物なもんで。

アイザックさんは、甘くて冷たくて…… と繰り返し呟いて想像してるみたい。


「氷はわかりますよね? 氷がもっと柔らかくなって甘くなってる感じです。柔らかいから口溶けもなめらかなんです。想像つきました?」


アイザックさんは、う〜んと目をつむっている。難しいかな。


「ユア、それはユアに作れるものかね?」

「冷凍庫がないから作れないです。冷凍庫があっても売ってたアイスほどなめらかに作れないと思いますし……」


あぁ、アイス。

あれはもう食べられないのか……。哀しい。


「冷凍庫とは?」

「冷凍庫は……。近いイメージだと、この国には氷室ってありますか?氷室の小さいものみたいな感じですかね……? 氷も溶けない保冷機能のついた家電……、家具です」


家電といってもわからないだろう。何せ電気がないからね。

代わりに魔法があるけど!


「小さい氷室か。それならわかった。その氷室があればアイスというものが食べられるんじゃな?」

「ちゃんとできるかはわかりませんが、チャレンジはできます。でも私の知ってるアイスほどは美味しくできないと思いますけど」

「ユアが美味しいというものはどれも美味しかった。ワシもアイスが食べてみたい」


なんて会話をしたのは二日前の事で……。




目の前には水の魔法使いさんがいる。

名前はワイアットさん。


突然だけど、この国の人の髪色って元の世界と同じく見慣れた茶や金や赤や少数だけど黒なのね。

だけど魔法使いの髪はその属性の色なんだって。水の魔法使いは青で、魔力が強いほど濃くなるんだとか。

ワイアットさんの髪は濃い青だ。

ちなみに目の色も同じね。青い髪と青い目!魔法もだけどファンタジーだわ〜!

あ、青い目は元の世界にもいたか。


その水の魔法使いさんに氷室を作ってもらうという……。

魔法使いって雇うとすごくお金がかかるって聞いた事がある。高位な魔法使いだと料金も比例して上がっていくとか。

アイザックさんどんだけお金持ちなんだろう。お砂糖やハチミツはケチらなくていいですかね?


「死んで持っていけないからの。元気なうちに余生を楽しむんじゃよ。ユアのおかげでこの歳になって新しい事をたくさん経験できるわい」


楽しそうに笑う顔を見ていたら、そうだよね、楽しんだり美味しいものを食べたり、できるだけそうしていきたいよね! とこっちまで笑顔になった。


ワイアットさんに一メートル四方の氷の箱を作ってもらう。

溶けないように、アイスが出来上がるまでずっと魔法をかけていてもらう。さすが高位魔法使い。余裕に見える。


アイスの材料はミルクと卵黄とお砂糖だ。それをよく混ぜて適当な入れ物に流し入れて一時間くらい氷の箱に入れる。少し凍ったくらいで取り出して、かき混ぜてまた氷の箱に入れる。それを何度か繰り返す。


できたかな〜?

なんとなくいけてると思う。

取り分けて、みんなで試食する。


う〜ん……

ミルク風味のシャーベットというか、なめらかさを感じるシャーベットというか……。

中途半端な感じだけど、私的にはこの世界でアイスが食べられて感動した。

売ってたのとは雲泥の差だけど、これからも食べられると思えば嬉しい!


みんなも一口食べた後、言葉にならない感じだった。


「甘くて冷たくて、口に入れたらスッと溶ける………。本当じゃな」

「こんなの初めて……。なんて言っていいかわからないよ……」

「美味しいというか……。不思議な食べ物だな……。食感が今まで食べたどれとも違う……」


おぉ! みんなの反応も悪くない。というか、いいんじゃないかな?

その中で一番感動しているのはワイアットさんだった。


「私の魔法でこんなものができるとは……。これは奇跡の食べ物です!これに私が携われたなんて!」


妙にテンションが高くて、アイスを食べた表情は恍惚としていた。


ちょっと引く。


でもまぁ、みんなにそんなに喜んでもらえたなら私も嬉しい。

日本で売ってるアイスを食べたらどうなっちゃうんだろう?食べさせてあげたいな〜。


せっかく氷室があるのだからと、アイスの他にプリンも作っていたんだ。アイスが失敗した時の保険ね。材料は一緒だし。

という事で、アイスの後にプリンの試食もしてみた。


「ふわぁぁぁ……。何なのこれ? 柔らかくて甘くてしっとりしてて……」

美味うまっ!!」

「…… ……」


おぉっと!アイスより評価は高いっぽい。

ワイアットさんもさらにテンションを上げて


「何という事だ!奇跡が続いた!こんなに美味しい食べ物があったなんて!!」


かなり引く……。


後から聞いた話だけど、魔法使いって回復系じゃないと戦い系なんだって。

実は平和主義のワイアットさん、敵とはいえ戦で多くの命を奪うのは辛かったんだって。

それにスイーツ男子のワイアットさん、自分の魔法で大好きな甘いものを作れたのがかなり嬉しかったらしい。しかも本人的に奇跡の味とかいうほど美味しいんだもんね!


その後、ワイアットさんとのお付き合いはずっと続く事になった。

スイーツ男子のワイアットさん、お休みの度に来るようになって、最初はお茶とお菓子を出してお客さん扱いだったのに、そのうち休日は朝から晩までいるようになった。ちゃっかり朝ご飯から食卓についている。

……ちゃんと食費分労働してもらいますからね!




アイスはできるまでに時間がかかるから、すぐにできるカキ氷がここのところのブームになっている。氷を出してくれる人はいるしね♪


カキ氷器はアイザックさんに説明したらすぐに鍛冶屋さん?金物屋さん?に注文してくれた。

可愛いペンギンさん型じゃあないけれど、取っ手を回して氷を削るアレはできて、さっそく作ってみると、やっぱりみんな大喜びだった。特にワイアットさんが。


カキ氷シロップがないから、お砂糖を水で濃く溶いたものとか、レモン汁にハチミツを混ぜたものとか、ミルクにお砂糖を混ぜてちょっと煮詰めて練乳もどきにしてみたりとか、色々試している。

果汁シロップを使えるように果物の砂糖漬けも作ってみようかな。


そんな感じで一緒に作ったり食べたりしているうちに、ワイアットさんから師匠と呼ばれるようになっていたよ。


師匠……。ここでもか。




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