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間話ジェイ 8





夕食時にアイザックというじいさんが同席するようになった。

道端でへたばっていたアイザックさんを家で休ませたのがきっかけだった。


俺は親父と二人暮らしだったから、じいさんばあさんと一緒に暮らした経験はない。だけど村には年寄りはいたし、別に嫌いではなかった。年寄りは大切にするもんだしな。

アダムたちも同じような感じだった。ラックさんは知らないけど。


ユアは一緒には暮らしてなかったけど、じいさんばあさんと仲は良かったらしい。

アイザックさんに自分のじいさんを重ねてるようなところがあった。


やっぱり元の世界に帰りたいんだろか。

そりゃそうだよな、そっちには家族も友達もいるんだもんな。


スッと…… 心が冷えた。


ユアのいない人生なんて考えられない。

ユアのいない生活なんて、もうどう過ごしていいかわからない。


帰りたいのかな……。

聞きたいけど、聞いてもしょうがない事に、しばらくもやもやして過ごした。




そんなある日、どこかの弁当屋がショクチュウドクを出した。ショクチュウドクというのもユアから聞いた。

幸い腹痛をおこしたヤツはすぐに元気になったけど、ユアの弁当屋は売り上げが落ちた。

売り上げより、ユアがやりがいを持って作っている弁当の注文数が減った方が気になる。ユアは思案していて元気もないようだ。


そんなユアを見かねたように、アイザックさんが


「それなら依頼をひとつしようかね。そろそろ妻が迎えに来てくれるらしい。半年ほど五人と過ごす事を依頼したい。治癒魔法使いが言うには冬は越せないだろうとの事だから、そんなに長くならんよ」


いきなりとんでもない発言に、ビックリしすぎてみんな固まったよ!

何て言ったらいいかもわからないよ!!


「期間と、場所も指定したい。わしも生まれ故郷のロサで死にたい。妻と同じ墓に入りたいというロマンチストではないからな。人間やっぱり最後は生まれ故郷じゃよ」


アイザックさんは穏やかに笑った。


アイザックさん、そんなに重病人に見えないけど!

半年で死ぬようにはとっても見えないよ!


だけどきっと本当の事なんだろう。

アイザックさんの話に、みんなまったく反応できないでいると


「私、アイザックさんの依頼受けたい」


ユアがそう言った。


「ユアがそう言うならオレも」


それからラックも。

そうだよな。ここ何日かの付き合いだけど、最後に一緒にいてもいいくらいにはいいじいさんだ。

それに依頼だしな。


「ロサに行く予定が早まっただけだしな」

「私もアイザックさんの依頼受けたい」

「依頼は五人だしな。男手も必要だろ?」


三人ともすぐ賛同した。


それから色々と決めていく。

アイザックさんの体調をみながらゆっくりの旅にしようとか、もっと暑くなる前に旅立とうとか。

ロサはパエオーニアの首都で、リーリウムからは馬車で早くて十日の道のりだ。でもゆっくり行く予定だからもうちょっとかかるな。


ロサにはアイザックさんの家があるそうだ。

アイザックさん、引退してるけど実はかなり大きな商会の会長だったらしい。死ぬまで苦労しない財産はあるから報酬の心配はするなと笑って言った。笑えねぇって……。


慌ただしく準備は進められていく。

正式なものにするために、ギルドに依頼を通したり、弁当屋も店じまいを知らせたり。


最終的にはロサに行きたいと思っていたけど、予定よりだいぶ早くなった。

まぁユアと知り合ってから予定は変更ばかりだけどな。


それでもユアと一緒なら何でもこいだ。

俺は人生の転機というものを特に不安もなく迎えていた。

不安どころか、ユアさえいれば人生は楽しくなる。今までの経験でわかっているんだ。


ユアさえいれば大丈夫。

離れていた二年を思えば何でもできると思った。




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