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35話 転機 1




さて、他にお弁当屋さんが出てくるのは想定内といっても、気にならない訳ではない。

お昼のデリバリーのため、冒険者ギルドと、道をはさんでお向かいにある商業者ギルドに行って様子を見る。


お弁当は需要と供給のバランスが合ってなかったからなぁ。

私たちだけでは、ほしい人の数のサンドイッチは作れない。だけどムリはしたくなかった。

お医者のいないこの世界、安全第一でやりたい。私たちの作ったものを食べて具合を悪くしたり、万一にも死んじゃったりなんて事がないように!


幸い今の売り上げは、日々の生活分とジェイへの返済分にはなっている。借金が終わったら、その分で貯金もできるようになると思うし、あまり欲張る気はない。

ギルドでの注文は数を受けての販売だから売れ残りの心配はない。

まぁ、そうでなくても売れ残る心配はしてないんだけどね。


ギルドの中にはお弁当屋さんと思われるお兄さんとお姉さんがいた。

ほぉほぉ、接客はあんな感じなのね。肝心のサンドイッチの味はどうだろう?


「商品は余ってますか? ひとついただきたいんですが」


私は、売り子のお姉さんに声をかけた。

お姉さんとアシュリーの顔がちょっと引きつった。


え?私おかしな事してるかな?商売相手の事は知っておきたいじゃない?こそこそするのもイヤだしさ、悪い事をするでもない、堂々といこうよ!


「え、えぇ…。 それじゃ私にもそっちの商品を売ってほしいんだけど」


お!お姉さんしっかり切り返して来た!そうそう、堂々がいいよね! だけどごめんね、お姉さん。


「すみません、この商品は全部注文を受けてのお届けなんです。明日の朝でしたらギルドの前でうちの者が販売しておりますので、その時でよろしいでしょうか」


商売相手とはいえ、買ってくれるならお客様だ。私は丁寧に対応する。


「明日の朝ね、わかったわ。こっちも売れ残りは困るから、まぁいいわ。じゃあ、はいこれ」


銅貨六枚は同じ値段だ。もしかして合わせたかな?

それからまた別の、今度はお兄さんにもサンドイッチを売ってもらって、翌日の注文を受けて買い物をして帰った。


注文、少し減ってたな。しょうがないか、新しいものが出たら試してみたいのは人情だ。好みも人それぞれだしね。

よそに目を向けたお客さんが、やっぱりうちの味がいいと戻って来てくれたら、かなり嬉しい事だよね!




家について、さっそく三人でよそのサンドイッチを食べてみる。

一言でいうと……、勝った!


もちろん自分で作った食べ慣れた味だからというのは大きいけど。

元々はジェイたち親しい人にお弁当を作ろうと思ったのが始まりだ。せっかくなら冷めてても美味しいものがいい。美味しいと思ってもらえるように色々考えて心を込めて作っている。

それは、販売している顔なじみになった冒険者の皆さんにも、お世話になっているギルド職員さんにも同じで。

うまくいえないけど、たぶんそういう事なんじゃないかな。


よそのサンドイッチは、当たり前だけど営利目的の販売用のものだ。不味くはないけど、美味しいという程でもなく、小さい頃から食べ慣れた味が一番!という人には美味しいかもしれないけど……。

誰かのためにと心を込めて作ったものと、ただの売り物では思いが違うと思うんだな。

それに私には、美食意識の進んだ現代日本からのスキルがあるからなぁ。


「う〜ん…。やっぱりうちの方が美味しいわね」


アシュリーはモソモソとよそのサンドイッチを食べならが言う。

ラックも深く頷く。


「そうね、私もそう思う。これ、このまま食べるのつらいね」


私は、まだ残っているサンドイッチを見て、席を立った。

味が薄ぼんやりしてるんだよね。お弁当なんだから、もうちょっと濃い味でもいいと思うんだ。肉体労働系の人ならなおさら汗もかくしさ。

という事で、私は味を付け足して二人にサンドイッチを渡した。


「わっ!すごく変わった!これならまぁまぁいけるわ」


アシュリーが驚いたように言って、さっきより食べるスピードが上がった。

だてに家でお料理担当をしてた訳じゃないよ。そりゃあ失敗もたくさんあったさ!そこからの、何とか食べられる味への復活創作料理!捨てちゃうのは材料がもったいないもんね。

そうしてスキルは磨かれたのだった。なんちゃって。


まぁ、しばらく様子を見よう。味覚の好みはどうしたってあるもんね。私たちにできる事は、うちのサンドイッチを食べたいと思ってくれる人に心を込めて作る事だけだ。




さてさて。六月になって本格的に暑い季節になってまいりました。

そこで私は『美味しいサンドイッチ屋さん』(屋号ね)の従業員に(二人だけど)厳かに通達します!


「みなさん!(二人だけど)暑い季節は食べ物が悪くなりがちです!なるべくいたみにくい食材を選んで調理も気をつけますが、その上で衛生面も徹底してください!食中毒が出ないように、みんなで気をつけましょう!」


チョクチュウドク?と不思議そうな二人に、食中毒が何かを説明する。

実家?で私が作っていたお弁当、特に夏でも普通に食べられたけど、ここではお客さんの保存状態がわからないからなぁ。

そういえば野球部のみんなは、直射日光ガンガン浴びまくりの部活バックの中に入っているお弁当をガツガツ食べていたっけ。意外と大丈夫なのかな〜。

でも安心・安全第一でいくのは食品を扱うんだもん、当たり前だよね!


本当は暑い時期はお休みにしようかとも思ったんだけど、ジェイたちには渡すし、それを見た人が作ってくれと言ったら作らない訳にいかないからなぁ。

よそのお弁当屋さんが出始めて注文が減った日もあったけど、何日かするとお客さんたちは戻って来てくれた。

朝一の販売の方は変わらず売り切れてたし。今まで買えなかったお客さんが買ってくれたりとかね。


お弁当屋さんが増えて売られるサンドイッチも増えたけど、大国第二位の都市の冒険者さんの数はそれより多い。

お昼に合わせて辻売りされてるお弁当屋さんも結構見かけるようになってきた。こんなに一気に増えちゃって、ちょっと心配だ。


そんな事を思いながら、また何日かたった。

お昼のデリバリーの帰り、家に着く少し前に、道に座り込んでいるおじいさんがいた。


「大丈夫ですか?どうかされましたか?」


駆け寄ると、おじいさんの息は乱れていた。


「うち、すぐそこなんです。休んでいってください」


私は、ラックにおじいさんを背負ってもらって家に案内した。

これが新しい出会いになるというか、今後の人生の岐路になるとは思わなかったよ。




歩いて数メートルの家に着くと、ラックはおじいさんをソファーにおろした。

今はお昼のデリバリーの帰りだ。一日で一番暑い時間帯だから、もしかしたらおじいさんも暑さにやられたのかな?


私はラックに井戸から水を汲んできてもらって、冷たいタオルでおじいさんの汗を拭いた。


「迎えにきてくれる人はいますか?」


おじいさんはいい身なりをしてるからお金持ちと思われる。お金持ちなのに馬車も使わず道端に座り込んでいるというのも謎だけど。


汲みたての冷たい水に、ハチミツと、レモンを少し搾って塩を少々。スポドリもどきを作っておじいさんに渡す。

迎えが来るまで横になって休んでほしいけど、先に水分補給しなくちゃね!


「ゆっくり飲んでください」


ご高齢だから誤嚥したら困るし!

おじいさんはスポドリもどきを飲み終わると、やっとひと心地ついたように


「助かったよ、ありがとう。迎えはおらんよ。少し休ませてもらったら帰れるから心配無用じゃ」

「そうですか。では、帰りは送ります。家の者が帰って来るまで休んでいてください」


おじいさんは、世話になるねと横になった。


それ程悪そうには見えないけど、ご高齢だし、しんどいのかも。

まったく、お医者がいないって困るよ!




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