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34話 お弁当屋さん 2




「ただいま〜」


ジェイがドアを開けて入ってくる。後ろにはちゃんとアダムもいる。お祝いはみんな一緒がいいもんね!


『おかえり〜! ジェイ、お誕生日おめでとう!!』


四人声を揃えて言う。


「え!誕生日? あ、俺の? あ、うん。 えと、ありがとう?」


サプライズ大成功♪

ジェイはビックリしすぎてワタワタしている。言葉遣いもおかしいよ!


「今夜はお誕生日のお祝いメニューだよ! 仕上げちゃうから、手と顔を洗ってきて!」


男子チームを井戸にやると、女子チームは忙しく料理の仕上げを始める。

ラックは果実水を取りに行ってコップに注ぐ係ね。


みんな揃ったところで、メインの五段重ねパンケーキをジェイの前に置く。


「私の育った国では、お誕生日にケーキを食べるんだよ。ケーキにロウソクを立てて、吹き消しながら願い事をするの。でもここには細いロウソクがないからなぁ。普通に食べて!」


熱々のパンケーキの上ではたっぷりのバターが溶けてるし、お好みでどうぞと小さいポットにハチミツもスタンバイ。

あぁいい匂い!我ながらめっちゃ美味しそうにできたよ!


「すご……」


ジェイは、ツヤツヤ熱々のパンケーキを見るとポツリと言って、真っ赤になって厳しい表情をした。

泣くのを我慢してるみたい。そんなに感動してくれた?


「こういうの、初めて。 ……何で? 二年も前に、ちょっと言っただけの事、憶えてくれてたんだ」

「私、そういうの憶えてるの得意なんだ♪ ビックリした?これね、みんなで計画したんだよ!」


エヘヘと笑ってみる。

みんなもサプライズ成功に嬉しそうにしてる。


「ユア」


ジェイが私を見た。

熱のこもった目に見つめられて、いきなりドキドキする。


何だこれ!


「けっ、結っこ……。 ……、……、結っこ、、、けっこ、う、すごい驚いた! みんなありがとう!!」


挙動不審。ますます真っ赤になってかなり言葉遣いもおかしいし!

でも私もちょっとおかしかったし、突っ込まないでいてあげよう。

お誕生日だしね!


それから、最初にジェイがパンケーキを少し食べたら他の料理も全部出して『乾杯〜♪』と食事を始めた。


「何だこれ! こんな肉初めて食べたよ!」


ハンバーグね。

この国ミンチがなかったからハンバーグもないんだろな。

お肉料理といったら豪快にステーキか(ラヴィーニアさまのところで出てた)市場で見た一口大の串焼きだもんね。


「この柔らかいじゃが芋美味しいね!星も可愛いし。こんな作り方知らなかったよ」


ポテトサラダね。

マヨネーズもないみたいだから、マヨ系サラダもないよね。

星は可愛いでしょ♪デコレーションは大事です!


「このシチュー懐かしいわ。これを食った時、すごく感動したっけな……」


憶えててくれたんだ、よかった。

あの時はジェイたちがお肉を調達したんだよね。ほんと懐かしい。

涙目作業も思い出して、一瞬食欲がなくなったよ……。


そして何より好評だったのがパンケーキです!

ジェイは主役だから五段。ラックとアダムは三段。私とアシュリーは二段。欲張って作っても食べきれないからね。

バターとハチミツはケチらずたくさん用意してあるから、こそだけは贅沢だ♪


「あぁ美味しい……。 これでまた頑張ろうって気力が湧いてくるね!」

「こんなに美味しいものを食べられて、こういうの幸せっていうんだろな」


ラックも目をつぶってゆっくり味わっている。

ふふふ。フレンチトーストを思い出してるかな?


こうしてサプライズのお誕生会は大成功に終わった。

サプライズはこれっきりね。みんな知っちゃったから、この手はもう使えない。これからは普通にお祝いする事にする。


だけど、みんなのお誕生日にもハンバーグとパンケーキが定番というのが決定した。

何せハンバーグは作るのが大変だし、パンケーキもふつうに食べるには贅沢なものだからね。

お誕生日に特別感は大事なのだ♪




お誕生日の次の日はお休みにしていた。

やっぱり人間お休みって大事だよね!定休を決めている方が予定が立てやすい。

予定といっても普段手が回らないお掃除とか、たまってしまうお洗濯なんかだけど。

それからちょっと手の込んだ仕込みとかね♪


午前中は掃除と洗濯をして、お昼はみんなで(市場調査を兼ねて)屋台で食べながら、お買い物をして家に帰る。

夕ご飯はちょっと手のかかるものを作ってみようか。

アシュリーと二人キッチンに並ぶ。


「ユア、これ、昨日のポテトサラダ?」

「違う違う。今日はコロッケで〜す♪ 中身のじゃが芋はかぶるけど、全然違うものだよ!」


残念な事にこの国には、あの中濃とかウスターとかのソースはない。ソースの作り方はわからないからソース料理は食べられない。

コロッケも、なんちゃってケチャップで食べる事になるけど、うまくいったらコロッケパンをお弁当に出してみたいと、今夜のメニューは試作も兼ねる。


コロッケパンにはソースまみれの千切りキャベツが合うよね!

だけど何せソースがないからなぁ。私的には美味しさ半減だよ!

しゃあない。ないものを嘆いてるより代わりになる美味しいものを考えよう!

もう少ししたらトウモロコシも出てくるでしょうし、そしたらコーンクリームコロッケも作ってみよう。

よし! 楽しくなってきた♪


お魚とかエビなんかがあったら、タルタルソースなら作れるんだけどな。

リーリウムは内陸だから海の物はなかなか手に入らない。今度川魚でも見てみよう。鮭フライならタルタルはいける!ムニエルも美味しいしね♪


この国には揚げ物はない。私が見てないだけかもしれないけど。まぁ油を大量に使うから贅沢だもんね。

私も、使う油の量が少なくてすむように揚げ焼きにする。少しの油で揚げるというか、多目の油で焼くというか、というやつね。

それでもしっかり外はサクサク、中はホクホクに揚がったよ!

腕がいいからね〜♪ なんちゃって。


まずはそのまま食べてもらう。


「うまっ!こんなの初めて食った! 唐揚げとは違う感じなんだな!」

「コロッケっていうんだよ! 私も初めて知ったし、食べたのも初めてだけど美味しいね!」


よし! 試食は高評価。


「次はこのパンにはさんで食べてみて。サンドイッチとはちょっと違う、コロッケパンっていうんだよ」


薄切りのパンのサンドイッチとは違って、もう少し厚みのある楕円形のパンにコロッケをのせたら、ふたつ折にしてはさみ込む。

ホットドッグ型とも違う、実家?の近所にあったパン屋さんに売ってるのを真似てみた。


「これも美味い!パンと一緒だと、これで腹一杯になるな」

「ひとつじゃならね〜よ!」

「ひとつじゃな。でも食べではあるだろ?」


なんて男子チームが意見を言い合ってくれている。

そうね、三つは食べ飽きるでしょし、何より水分がほしくなるよね!

千切りキャベツに変わるものは思いつかないけど、好評だから近いうちに売り出してみようかな。




そして次の日の朝。

いつもと同じにお弁当を売りに行くアシュリーと、仕事に出るジェイたちを見送ってから、ラックと後片付けをしたりデリバリーの仕込みをしていると、アシュリーが大慌てで帰ってきた。


「ユア!大変!! お弁当屋さん!お弁当屋さんが、他にもいる!!」


息も絶え絶えのアシュリーを落ち着かせて話を聞くと、ギルドの前に同じようにサンドイッチを売るお姉さんがいたそうな。


アシュリーファンの冒険者のお兄さんは、他にも大きな店前とか人の集まるようなところなんかで、お持ち帰り用のサンドイッチ売りが目立つようになってきてると教えてくれたって。


「そっか〜、意外と遅かったね」

「驚かないの?ユアの考え真似されて悔しくないの?」


そんなの想定内だよ。だいたい屋台だってパンみたいのにお肉をはさんだものを売ってるじゃん。

売るタイミングとか、お弁当専門にしたっていうのが今までなかっただけだし。

それに正確にはサンドイッチだって私の考えじゃないしさ。と言えば、アシュリーは拍子抜けした。


「私たちだけじゃ、ほしがってる人たちに回りきらなかったからよかったよ。それにさ、自慢じゃないけど味ではどこにも負ける気がしないもんね!」


アシュリーは一瞬ポカンとして、それから大笑いした。


「ユアったら! 焦って損しちゃったよ!!それにその自信ってば!ほんと大好き!!」


抱きついてきてからも笑いはおさまらない。

その自信はアシュリーたちや、お弁当を買ってくれるみんながくれたものだよ。


目の端にラックがほんのり笑っているように見えた。

おぉ!! ラックの笑顔レアだわ〜!!


「ユアの作るものはどれも美味しい」


ラックからお褒めの言葉が!! これまたレアだわ〜!

だからね、私は不安にならず自信を持っていられるんだよ。


「さぁ、デリバリーの分のサンドイッチを作ろう!」




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