間話 ジェイ 6
その日の夕方、ちょうど帰りが一緒になったユアと話していると、苛立ったリラの声がした。
「ちょっと!ジェイと一緒に住んでるって本当? 何でよ!」
ユアはびっくりして俺を見た。
ラックがユアとリラの間に入る。
「何よその男!ジェイに抱きついてたくせに、二股?」
二股という言葉にイラッとした。
ユアはそんな子じゃないし、ラックとはそういうんじゃない。
自分で思ってたより低い声が出た。
「リラ!」
「何よ!聞いてるだけじゃない!」
リラは泣きそうな顔になった。
何故かユアもオロオロしている。しまった、強く言いすぎたか?
夕方で大勢のヤツが帰ってくる時間だ。
何が起こったかと、面白がって周りに人が集まりだした。
リラも何もこんな時にと思っていると、ユアをキッと睨んだ。おぃ!
「私の方が美人だわ」
「そうね」
ユアは可愛いよ!
声には出せず、心の中で褒めちぎる。
「私の方が強いし」
「そうね」
そりゃそうだけど…。ユアには料理があるよ!
これまた心の中で褒めまくる。
「私なら仕事中にジェイを助けられる。私たちは助け合って仕事ができるわ!」
「そうね」
いいんだよ!ユアの事は俺が守るんだから!
過去に守れなかったから、これは心の声も小さくなってしまう。
「何よ!そうねそうねって、私をバカにしてるの!」
「いや、そう思ったからそう言っただけだよ。リラの言ってる事は全部その通りだと思う」
本心なんだろうな〜。
ユアは天然すぎる素直なところがある。
周りは興味津々で聞き耳を立てている。
何だかなぁ……。
リラはメラメラと燃える目でユアを見た。
「私はジェイのためなら死ねるわ!あんたにそれができる?」
「や、それはできないわ」
えええぇぇぇ!!!!
ギャラリーは目が点だ。リラも唖然としている。
びっくり顔の中で目立つかもしれないけど、俺はニヤニヤしてしまった。
ユア、何を言い出すつもりだろう?
三つ数えるくらいの間をおいて、リラが怒った声を出した。
「なら、ジェイを諦めてよ!私の方がジェイにふさわしいわ!」
「死ぬなんてイヤだよ。私はジェイと一緒に生きていきたいの。たくさん楽しい事をして、美味しいものを食べて、綺麗なものを見て、一緒に年を重ねていきたい」
ドヤ顔だ! これ、ユアが言ってたドヤ顔ってやつだ!!
「あははははははは!!!!」
ケンカを売られて見事に返り討ち。
いや、俺のせい?なんだけどな。
それにしても愉快になった。
それから、俺も心からそう思う。
「俺もそうやってユアと生きていきたい!」
「オレも」
「私も!」
俺に続いて、ラックとアシュリーも同意する。
ユアは嬉しそうに俺たちに笑いかけた。
それからさっさとギルドを後にして、市場によって帰った。
リラには俺から何もいう事はない。できる事もない。実はオースティンが長い間の片想いをしてるから、うまくいけばいいと思う。
余計なお世話だけどな。
その後―――
何日もたたないうちに、俺たちが昼にサンドイッチを食うのを見てたヤツが、ユアに同じものを作ってくれと言い出した。
ブレイディさんの宿屋でも同じ事があったなぁと懐かしい。
違うのは規模が大きくなっていく事だ。
今ではお弁当屋さんとかいう、店をもたない商売をしている。
ユアのやる事はいつも新しい。今まではなかった事に、そういう事もできるのかと感心する。
順調にうまくいっているようでよかった。
まぁ、ユアの美味い料理だからな。常連になるのは決まっている。




