間話 ジェイ 3
それから約二年。無力さを嘆いてる間があったら力をつけようと、厳しい依頼をこなしていたらランクが上がった。
ほんのわずかな情報でも聞けば、どんな遠出だってした。
今のところユアは見つかっていない。だけど諦めない。
エマとは手紙のやり取りをしている。
ユアが戻るとしたら、連れ去られたプリュネのブレイディさんの宿屋だと思うけど、もしもこっちの方で逃げだせたとしたら、最後の会話のリーリウムに来ないとも限らない。
二人いるなら二手に別れた方が望みが増える。望みは捨てない。毎日毎日ユアにつながる努力を惜しまない。
我ながらちょっと執着しすぎかと思うけど、嫁妄想までした好きな子が目の前からいなくなったからしょうがない。
それに、あんな女の子は二人といない。
ユアといると人生が楽しくなる。あんな日々を知ってしまったら、ユアのいない人生は、もう余生になってしまうだろう。
ユアの飯が食いたいな……。
俺は硬いだけのパンと干し肉をかみながら思った。
目覚めのいい日は、そのままいい一日になった。
オースティンが厳しいと言っていた依頼も思ったより早く終える事ができた。
俺たちは依頼にあった数の魔獣を手分けして背負い、夕日に赤く染まる道を歩いていた。
「ジェイ、今日一日機嫌がよかったわね。私と一緒だから?」
「リラはブレないな」
夕焼けよりも赤い髪をした女が隣を歩く。
俺はいつも通りに苦笑いをしながら返事をした。
リラは同じ歳だけど、もう女の子とは言えないような色っぽい別嬪さんだ。
こんなに美人なのに、俺の何がいいんだ?リラを狙ってるヤツは大勢いるのに。
リラは艶やかに笑うと、色っぽい流し目を送ってきた。
「ブレないわよ! もう一年も口説いてるのよ? 今日こそ落ちない?」
「何年口説かれても落ちないよ。俺には探してる子がいるって言ってるだろ」
「もう! ずっとそればっかり! この一年全然何も変わりばえしないじゃない! そんな何年も前にほんの少し過ごした子より、ずっと一緒にいる私の方が絶対いいのに!」
そりゃあ俺だって男だし、こんな美人にこんな風に言われたら悪い気はしないけど…やっぱりユアじゃなくちゃダメなんだ。
リラには最初の頃にずいぶん情熱的にせまられたので、好きな女の子を探していてその子以外は考えられないときっぱり言ってある。
元気でいるんだろうか。
ユア、どこでどうしているんだろう……。
適当に話をしながら歩いていると、リーリウムの都市を囲む外壁が見えてきた。
とりあえずギルドで報酬をもらったら飯だ!
俺は滞在している安宿の不味い飯を思い浮かべた。
珍しく、たまにはちょっとだけ美味いものを食おうかと思ったのは、さっきユアの話題があったからかもしれない。
腹も減ってるし、すぐに食えるギルド内の食堂によっていこう。
少し沈んだ気持ちが、たったこれだけで元気になってくる。我ながら単純だ。
でもそうやって、小さいいい事や嬉しい事を積み重ねていくのが幸せって事だと教わった。
もちろんユアに。
どうも今日はよくユアを思う日だ。
まぁ思い出さない日はないんだけどな。
ギルドの扉を開けると、時間帯もあって大勢の人がいた。
これは結構待つことになるかも…。
なんて思っていると、大勢の中にチラリと黒い色が見えた。
服や装備で黒は多い。濃い色は汚れが目立ちにくいからな。
でも、そういうのとは違うとわかった。
一瞬見えた黒はすぐに人の中に見えなくなってしまったけど、見間違えるはずはない。
確信してるのに、声は小さく落ちた。
「ユア……」




