28話 リーリウムへ 2
オセロで遊ぶみんなを横目に話は続く。
ジェニファーたちもリーリウムに向かっているんだって。
そこでしばらく滞在して、また次の町に旅に出て……と、来年開催されるフロース祭を王都で見ようと、それまで王都周辺を回る計画らしい。
フロース祭?と尋ねると、フロースとは大昔に魔王を倒してこの世界に平和をもたらせた女神様の名前なんだって。
来年はその魔王を倒してから千年にあたる年だそうで、そりゃあ特別に祝うんじゃないかと大陸中の人は楽しみにしているらしい。
きっとそれぞれの国で盛大なお祭りになると思うけど、大陸一の大国パエオーニアがやっぱり一番だろうと。
ん?ちょっと待って。大陸規模なの?その女神伝説?
あら、ユアは何も知らないのね。と、ジェニファーは追加の説明をしてくれた。
大陸には大小幾つもの国があって、その国での神様もいるところはいるけれど、フロース様は大陸で共通に崇められている女神様なんだって。なんたって魔王を倒してくれた女神様だからね。
だから来年は大陸中、どこの国でも盛大にフロース祭をするだろうと。
ついでに、大陸共通語というのもあって、それは今私たちが話しているパエオーニア語なんだそうな。
地球でいうところの英語みたいなものかな?
へえぇぇ。
今更だけど、何かこの世界の基礎的な事を知ったよ。
それにしてもフロース祭かぁ。そんなに大きなお祭りなんて楽しみだわ。私もぜひ見てみたい!私が行った事のあるお祭りって日本のだから和風?だし。西洋風なのって初めて!お祭りっていうより、カーニバルってイメージに近いのかな。
来年どこでどうしてるかわからないけど、余裕があったら王都に行ってみたいな。
それから、リーリウムにつくまで私たちは六人で過ごした。
駅馬車は町から町をつなぐ馬車で、たいていは一つ二つの町の移動に使われる。
中には私たちのように大きな都市まで移動するのに使う人もいるけどね。そんな中でご一緒するとは、これも何かのご縁だと思う。馬車酔いを治してくれた恩人だし。
いや〜、あれにはホントまいったよ。
そしてとうとう明日はリーリウムに着くという前の日、私はジェニファーにオセ◯のセットを一つ渡して言った。
「ジェニファー、馬車酔いを治してくれたお礼と、ちょっと珍しいご縁の記念にこのゲームの権利をあげるよ。元々これの名前はオセ◯っていうんだけど、ジェニファーがこの世界の名前をつけていいよ」
この世界は魔法で満ちている。
目には見えないし、特別何かを感じるって訳じゃないんだけど、言葉での約束もちゃんとした契約になるほどの効力を持つ。
日本で口約束っていうと、ちょっと軽い感じがするところだけど、この世界では口約束もちゃんとした効力を持つ契約になる。契約を解除するのもちゃんと言葉にして、相手が了承すれば成立するという。
実はラヴィーニアさまとの交渉も言葉だけで行なっているんだな。
あ、言葉だけでなく、文字での契約というのもちゃんとあるよ。
「ユアありがとう!これからの旅がずいぶん楽しく過ごせると思うわ」
ジェニファーは喜んでくれた。
「私は今現在の治癒・回復しかできないから、今の時点では何もあげられるものはないんだけど……。もしもこの先、大きな病気やケガをしたら私を呼んで。どこにいてもきっと駆けつけるから!」
「どこにいてもって、どうやって連絡つけるのよ。気持ちだけもらっておくよ」
私が笑って言うと、
「何となくだけど、ルークとラックって妙に繋がれるような気がするのよね……」
「あ。そう言われてみれば私もそう思えるかも。あの二人何なんだろうね」
「ね〜!」
しばらくリーリウムに滞在するのは一緒だから、会おうと思えばいつでも会える。どこか移動する時は教え合おうねと約束をした。
私たちもジェニファーたちもギルドで仕事をする事になる。きっとほぼ毎日、朝か夕方には会えるでしょうし。
そしてとうとうリーリウムに着いた。
宿屋に向かうと言うジェニファーたちと別れて、私たちはギルドに向かった。着いたのはもう夕方だったから、依頼達成報告の人たちが帰ってくる時間だ。ギルドには大勢の冒険者がいた。
ギルドの建物の造りはどこもだいたい同じらしく、一階には受付カウンターと併設して食事処?飲み処?がある。仕事帰りの人たちが早めの夕食をとっていたり、労いの乾杯をしていたり、それはもう賑やかだった。
建物に入った私はキョロキョロとジェイを探したけど、それらしき人は見当たらなかった。
聞いた方が早いな。私は受付のお姉さんに聞くために報告の列に並んだ。
ここのお姉さんも獣人さんで、キツネのような尖った白いお耳をした美人さんだった。
そういえば旅の道中に聞いた話だけど。
この世界は、人間だけの国とか、人間と獣人が仲良く暮らしている国とか、ドワーフの国とか、エルフの国とか……なんて風に、何となく分かれているらしい。
それでもそれぞれの国に色々な種族が少数だけど混ざって暮らしていて、そういう人たちは冒険者だったりが多いんだって。
ギルドの職員もそうで、よその国を見てみたいなんて理由で、よその国に配属される事が多いらしい。
だから人間の国のギルド職員は獣人さんとか、私はまだ見た事がないけどドワーフとかエルフが多いんだって。
話を戻して。
住所?とか、教えてくれるのかな〜。この国でも個人情報は厳しく守られてるのかな。教えてもらえなかったらどうしよう。そしたら毎日張り込めば、遠征でもしてない限り数日のうちには会えるかな。
心配かけっぱなしで心が痛むけど、ジェイ、もう少し待っててね。
わりと長い時間待って、やっと私の番になった。
さっそくジェイの事を聞く。
「ジェイは今日はまだ帰ってきてないわね。待ってたらそのうち帰ってくるわよ」
今日の分の報酬の支払いがまだだからとお姉さんは教えてくれた。
よかった。今日会えるんだ。
ホッとした、その時。
こんなにもうるさい中で、ポツリと零れた声が聞こえた。
「ユア……」




