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13話 プルヌス 3




案内されたラヴィーニアさんの私室は、品のいい家具と女性らしい柔らかな色彩の落ち着いた部屋だった。高級そうなソファーもなかなか座り心地がいい。


目の前にいるラヴィーニアさんは、何ていうか……。

これぞ貴族のお嬢様というか奥様というか……。

奥様は奥様なんだけど、お嬢様といいたいような可憐な方だった。


薄い金色の髪は明るく輝いているようで、紫色の目って初めて見たけど!これぞファンタジーだと思わせる菫色。

全体的に、フワフワしているような、妖精さんのような……。

ボキャブラリーのなさに我ながらイヤになるけど、イメージ通りのお姫様って感じの方だった。


一目でラヴィーニア()()ではなくて、ラヴィーニア()になる。

高貴な方って、どこの世界でも高貴なオーラなのね!

今まで高貴な方と会った事ないけど!


ほぇ〜と見惚れている間に、メイドさんがお茶の用意をしてくれた。

庶民な私は高級なお茶とかわからないけど、何やらいい香りがしている。

メイドさんが下がると、ラヴィーニア様が先に声をかけてくださった。


「いらしてくださってありがとうございます。ラヴィーニア・プルヌスです」

「はじめまして、木崎優愛です。ユアと呼んでください」


私が見惚れている間、ラヴィーニア様も私を見ていた。ただしあちらは見惚れるんじゃなくて観察って感じだったけど。


「本当に黒い髪に黒い目なのですね……」


それは独り言のようで、返事をすべきかちょっと迷ってしまう。

結局私は返事はせずに曖昧に笑った。日本人スマイルだ。


女領主としてラヴィーニア様も忙しい身。

さっそく本題になった。


「ここのところ使用人たちの話題に知らない名前がありました。調べさせましたら、どうやら転移者様らしいと。 皆の不調を治してくださってありがとうございます」


ふんわり笑顔も美人さんだな〜。

女同士なのにうっとりしちゃう。


「いいえ、大したことはしてません。私は医師ではないので、気休めくらいな事です」


私は慌てて言った。


「それでも皆は調子がいいようです。それは事実ですから。

わたくしもちょうど皆と同じくらいの年齢です。健康でいられるためにどうすればいいか、ユア様にお聞きしたいとお出でいただいたのですよ」


この妖精さんのようなラヴィーニア様が、洗濯場のおばちゃんたちと同じくらいの歳! うっそ〜!(おばちゃん失礼!)

イヤイヤ、じゃなくて!ユア様きた!高貴な方から様付け!焦ってしまう!!


「ラヴィーニア様、ユアと呼んでください。様はいりません」


これ、この世界にきてから何度目のやりとりだろう。

生粋の日本人の私は、年上の人からの敬称は違和感ありまくりなのだ。


それからいつものやりとりがあって、何とか落ち着いて、やっと本題になった。


「私の生まれ育った国では、というか世界規模でかな?健康の基本は、適度な運動と、栄養バランスのとれた食事と、良質な睡眠といわれています。

ラヴィーニア様は体調でお困りな事はありますか?」


ラヴィーニア様は、適度な運動と、栄養バランスのとれた食事と、良質な睡眠…… と低く繰り返している。


「それぞれは、どういう事なのでしょうか?

わたくしは今までそのような事は聞いた事はありませんでした」


あら、そこからか。

とはいえ私だって詳しくはない。生まれてたかだか十五年のただの学生だもんね。

私は、私の知る範囲でと、何とか説明した。


ラヴィーニア様自身の不調には、冷え性と寝つきの悪さをあげられた。

冷えなら血行をよくすればいいのかな? それならマッサージなんかいいかも。

寝つきの悪さは、冷えが改善されれば少しはよくなるかもだし。

やっぱりリラックス効果が一番じゃないだろか?


「ラヴィーニア様、今夜入浴される時に私を呼んでください。マッサージをしてみましょう。私のやり方を覚えてもらえば、明日からはメイドさんにやってもらえばいいですし。

では!私はその他の支度があるのでいったん失礼します!また後でまいります」


さて、忙しくなるぞ!

私は頭の中で色々計画しながら、足早に行動開始した。




ラヴィーニア様の部屋を出て、向かった先は洗濯物を保管しておく部屋。

ラヴィーニア様つきのメイドさんも一人、一緒に来てもらう。


「ラヴィーニア様のシーツはどれですか?」

「こちらになりますが…… 何に使うのですか?」

「リラックス効果です。それを持って一緒に来てください」


私はニッコリ笑って外に向かった。


外に出ると、今日もいいお天気。

季節は初夏だから日が落ちるのも遅いし、一〜二時間あれば十分だろう。


目的地に着いた私は、シーツを持って後をついてくるメイドさんに頼んだ。


「さぁ、このラベンダーの上にシーツを広げてください」


ここのラベンダーは野生じゃなくて、ちゃんと手入れされている。

軽いシーツ一枚くらいなら痛めないと思うし、ちょっと協力してもらおう。


いい匂いの洗剤も柔軟剤もないんだもん。直接香りを移そうと考えたのだ。

香りはあまり強くなくていいから、このくらいでいいだろう。ほんのり香る、リラックス効果♪

枕元にポプリもいいけど、今日のところは間に合わないからね。


それから、リラックス効果のあるハーブを適量摘む。こっちはハーブバスの分ね。


私はメイドさんに、そうする理由や効能なんかを話していく。

ラヴィーニア様に気に入っていただけたなら、後々お世話をする彼女たちに覚えておいてもらわないといけない。


ハーブを花束にして、浴槽のお湯に浮かべてくれるようメイドさんに渡す。

シーツは一〜二時間で取り込んで、ベットメイクしてくれるように頼む。


さぁ、後は入浴の時だな。




「あぁ。これは何とも言えない心地よさですね……」


お湯の中のラヴィーニア様をマッサージする。

マッサージといっても、私は資格を持っている訳でもなく血行をよくすることが目的だから、指先から軽く揉み上げていく感じで。

気持ちいいと思ってもらえたならOKだ。


指先から肩まで上がってきたら、肩も揉む。

うわ!何これ!ガチガチじゃん!


「ラヴィーニア様、だいぶ凝ってらっしゃいますね。お辛かったでしょう」

「凝っているとは?」


あら。これもそこからなんだ。

この国マジで医療は大丈夫なんだろか?

お医者さんがいないという訳ではないでしょに……。

貴族ならちゃんとお医者にかかれるんじゃないのかな〜。


「凝りとは、筋肉が疲れて固くなってるような状態です。こうなると血行も悪くなるので、今のラヴィーニア様のように重いような痛いような辛い感じになるんです」


筋肉?血行?と呟いているラヴィーニア様にわかりやすく簡単に説明する。


これもか!

え〜と……。本当に大丈夫か?この国。それともこの世界がなのかな。


心配しちゃったけど、よくよく聞いてみたら、この国のお医者さんは私の知るお医者さんとはだいぶ違っていた。

この国のお医者さんはといわれる人は、治癒魔法が使える魔法使いなんだって。


魔法使い! 魔法きたー!


最初にジェイが見せてくれた、火をおこす魔石以来の魔法だ。

魔法という言葉はやっぱワクワクするね!




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