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11話 プルヌス 1




作戦開始から数日経った。

見張りはいるけど、私は屋敷内なら自由に行動できた。

まずは地理情報。

ここはプリュネと同じカメッリア領のプルヌスという領地。この町の名前もプルヌス。小領都だからね。わかりやすい。


場所はプリュネより馬車で四日ほど移動した西にある。

隣の国と接していて、戦地に一番近い町だという事。

町全体が軍事施設みたいな作りで…… といっても、普通の町と同じように住人もいるし、いろんな施設もあるし、市もたつとの事。


ここに連れられてきて最初に会った、あの偉そうな男はプルヌス領主で、名前はフラヴィオ・プルヌス…… さん。誘拐犯だけど、大人を呼び捨てにはしづらい日本人な私。

領地がそのまま家名になるというのはわかりやすくていい。


馬車に一緒にいたおじさんは、家令のルーカス…… さん。(同文)

あのフードの男は見たまんまの魔法使いで、あの睡眠魔法?は、せいぜい一時間くらいしか眠らせられないらしい。

よかった。何日もたっていたら、今よりもっと帰りにくくなるところだったよ。


私の隣にいた女の人はケイトさん。あのまま見張りを兼ねて私の護衛になった。

敷地には結界がかけられているけど、契約するまでは誰のものでもないから、私を奪われないように護衛をする必要があるんだって。

ケイトさんとは一緒にいる時間が多いから一番話している。


最初の印象は悪かったけど、親しくなるうちに悪い人じゃない事がわかってきた。

ケイトさん、年は十九歳。西洋人イメージの美人さんって程でもない、普通な感じ?

平均的日本人顔のごく普通な私としては親近感がわく。

細マッチョのメリハリボディにはまったく親近感はわかないけど!

頼れるお姉さんって感じで、兄姉のいない私には新鮮だ。

地理の事も町の事もケイトさんに教わった。


女性だけど兵士で、戦闘力を買われて女性陣の護衛になったんだって。

女性陣とは、女領主のラヴィーニアさん。フラヴィオさんは入り婿さんなんだって。(こんなフランクな説明じゃなかったよ?)カメッリア領主の娘さんだからなのか、単に貴族とはそういうものなのか、常に身の危険があって、ケイトさんたち女性の兵士が護衛についているんだって。


肝心の攫われた理由だけど。

この世界では、どこの領主も強い戦士や魔法使いを欲しがっていて、そのため常に国内外の情報を集めてる。

ある程度の統治者や(村長さんも知ってたしね!)高位者は転移者の事も知っていて、今回はプルヌス領主がたまたま一番に私を手に入れた、という事だった。




さて。小領都とはいえ、領館はなかなか大きい。働いている人もたくさんいる。

最初は私の容姿で遠巻きに見ていた人たちも、毎日姿を見て挨拶を交わしていればだんだん親しくなってくる。

私は挨拶も厳しく躾けられたのだ。

親しくならなくちゃ話しもできない。情報はあるだけいい。


私は囚われの身だけどお嬢様ではない。身の回りの事は自分でできる。家族で家事を分担していたしね!

家事の中で特に好きだったのが料理だ。異世界の料理にもすごく興味がある。


という訳で、よく厨房にきている。

領館の従業員(という言い方でいいのかな?)の人数分の食事の準備は大変だ。朝やお昼のピークを過ぎた頃にちょっとお邪魔する。


厨房以外にもあちこち歩き回った。

敷地内なら庭にも出られる。とても庭とはいえないくらいの広さだったけど。

小さな林なんかもあったり、手入れもされていない敷地の外れの方には野生の草花も生えてたり。

今は花が一番綺麗に咲く時期らしく、庭には色とりどりの花々が咲き誇っている。


ハーブもあったよ!

人の手で植えられているものも、外れの方で野生の中に紛れているものも。見つけた時はテンションが上がった!

毎日庭に出ているから庭師の人たちとも親しくなった。


洗濯場のおばちゃんたちとも親しくなった。

洗濯機がないから大量の洗濯物を洗うのは大変だ。水で冷えるし、濡れている洗濯物は重いから体に負担がかかる。この世界の人は皆働き者だ。


手伝おうとしたら笑われた。


「そんな細い腕じゃシーツ一枚洗えないよ!」


おっしゃる通り。

お言葉に甘えて乾いた洗濯物をたたむ方を手伝った。


そんな風にあちこちで顔見知りを作り、おしゃべりをしながら情報収集をしていく。

どこで何が役に立つかわからないからね!




一番頻繁に行く厨房の人たちとは必然的に一番親しくなる。

私にも何か手伝わせてほしいと言うと、最初はとんでもないと断られたけど、毎日通ううちに下働きの仕事をさせてくれるようになった。皮むきとかね。


そのうち厨房のスタッフの賄いを作らせてもらえる事になった。領主家族や役職についているお偉いさん、その他領館従業員に出した残りの材料で工夫をして美味しいものを作るのだ。


毎日暑いからなぁ……。

アッサリ食べられるものがいいだろう。火を使う厨房は余計に熱い。


お醤油があったらな〜。

やっぱり私は和食が一番作り慣れている。味付けもね。お醤油があったらたくさん美味しいものが作れるのにな。

お味噌もないし、お塩だけで勝負だ。


お塩だけでアッサリとなったら、最初に思い浮かんだのはマリネだ。

香り野菜を薄く切って、お塩とお酢、少しのお砂糖でちょっと漬け込む。

野菜がしんなりしたら薄切りのハムを加えてサンドイッチの具にする。


パンはあらかじめ軽くトーストして、切り口にオリーブオイルをぬっておく。

領館のパンは、村のとも宿屋のとも違って上等なものだったけど、やっぱり日本のパン屋さんのものと比べると雲泥の差だ。少しでも美味しくなるように考える。


広い庭のはずれで見つけたミントの葉っぱを千切って、汲みたての冷たい水に入れる。ミントの清涼感はこの暑さにはバッチリでしょ♪


どうもサンドイッチばかりだな……。

次はパスタでも作ってみようか。


マリネのサンドイッチは大好評だった。ミント水も。

これを食堂で出すメニューに加えてもいいかと聞かれた。もちろんOKした。


この領館にきて半月ほど過ぎて思ったのが、料理のレパートリーの少なさだ。

領主といえば貴族でしょ?貴族なら高級で美味しいものを食べてるかと思ったけど、この世界がなのか、この国がなのか、基本は煮るか焼くかという……。

もちろん素材はいいものを使っていると思われて味はいいんだけど。


そついえば社会の授業で、古代から中世にかけて文化や芸術が発展したのは食べる物に困らなくなって余裕ができてからだ…… とかいう様な事を習った。

この世界に当てはまるかわからないけど、食糧事情が厳しいみたいだし、文化や芸術もこれからなのかな。


という事は、私の料理スキルは武器になるかも。交換条件の時に、形のない【物】になるんじゃないだろか?

知識や技術は財産だ。使い所はよく考えてからにしよう。


と思ったけど、困っている人がいれば助けたくなるのが人情というもので、それが親しくしてる人であるならなおさらね。


洗濯場のおばちゃん、ステラさんの体調がすぐれない。

「もう、しばらく前から何となく体調がスッキリしないんだよ……」との事。

症状を聞いてみたら、どうも中年女性によく聞くあれのようだ。


それなら確か、庭のはずれに生えていた。

紅花を乾燥させて、それをハーブティにする。紅花は婦人科系トラブルの強い味方…… らしい。

私はまだだけど、女性ならいつお世話になるかわからないからって、効能は教えられていたんだ。

それから、カモミールもいい。

紅花をお茶で飲むなら、カモミールはハーブバスにするのもいいかもね。ちょっとリンゴのようないい香りなの♪


ステラさんに、すぐ使えるようにした紅花とカモミールを渡す。

持病があるか、妊娠してないかを聞く。あったらハーブは使えない。副作用とかアレルギーが出る事もあると聞いたけど、私はどの病気にどのハーブがダメか覚えてない。怖いから持病があるようならハーブはすすめられない。


「この歳で妊娠なんかしてる訳ないだろ!」


大笑いしながら、バンバン背中を叩かれてよろける。

さすが重い洗濯物で鍛えてるだけあって力強い。

何だか元気に見えるんですけど……。


「すぐに効くって訳じゃないよ?しばらく続けて飲んでみて、合わないようならやめてね。症状が軽くなったらいんだけど……」

「ありがとね!さっそく今夜から試してみるよ!」


ハーブは即効性の薬じゃない。効果もその人によって違うという事だし。


ほんとの事をいうと、健康な私は効果を実感するような症状になった事はない。どちらかというと、香りのリラックス効果というか、香りが好きなだけというか……。


でも、おばあちゃんやおじいちゃんやお母さんを見ていて、効果はあると思う。ハーブは予防というか、体質改善というか、そんな感じだと思う。


と、説明しつつ。

ステラさんが早くよくなりますようにと祈った。




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