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第二十二話 こうかは ばつぐんだ !

投稿が1ヶ月以上空いてしまいました。申し訳ありません。ここからは何とかして元の投稿ペースに戻していきたいと思ってます。


 自分は魔族だ、とカーミラから突然のカミングアウトを受けたアオイと獅子尾は、状況が飲み込めないといった様子でポカンとしていた。

 獅子尾は余程ショックだったのか、どこか遠くを見つめたまま瞬きもせず全く動かなくなってしまった。

 アオイの方も一瞬固まったが、すぐに我に返った。そして困惑した様子で表情を歪め、右手をやや前に突き出して「ちょっと待って」を連呼し始めた。


 「ちょっと待ってちょっと待って。え、ちょ、あんまりにも急展開すぎて俺の頭が追いついてこれてないんだけど。…あの、もうちょい詳しく教えてくれない?」

 

 これにカーミラは顎に手を当てて何かを思い出しているのか、うーんと唸ってしばらく考え込む。

 

 「詳しくかぁ…。私ね、自分が魔族の吸血種だってことは覚えてるんだけど、その『吸血種』が一体どんな種族でどんな特徴を持っているのか、そういう詳しい情報は全く思い出せないの」

 

 「……そういうこと言われると余計に気になるんだけど」

 

 それからは二人とも口を閉ざし、俯いてしまった。そんな様子を仏頂面で眺めていたフォックスは、呆れたように深い溜め息をついた。

 

 「こいつら、俺たちがいることを忘れてるな。……おい、お前ら撤収だ。帰るぞ」

 

 長い沈黙の後、フォックスはぽつりと小さな声で呟き、くるりと踵を返しアオイ達に背を向けて立ち去ろうとする。

 

 「はぁッ?!おいッ!ちょっと待てフォックスッ!」

 

 ゴリが慌てて後ろからフォックスの肩を掴んだ。するとフォックスは足を止め、ゆっくりと振り返る。

 

 「…離せよ」

 

 小さな声でそう呟いた彼の目には、見た者を思わずぞくりとさせるほどの冷酷な殺意の光が先程よりも強くはっきりと宿っていた。

 だがゴリは一切物怖じする様子などなく、腕の筋肉が隆起するほどの強い力でフォックスの肩を握っている。そのままフォックスの目を真っ直ぐに睨み付けながら怒鳴った。

 

 「ふざけんなフォックスッ!俺はまだまだ戦い足りないんだッ!しかもせっかくこんな面白そうな奴等が目の前に居るってのに、ここで帰るだとッ?…今ここで逃げたら、二度とこいつらと戦えねぇかもしれねぇんだぞッ!!」

 

 「…うるさいよ、俺だって色々考えてるんだ。お前みたいな脳筋とは違ってな。分かったら俺の邪魔をするな」

 

 「んだとこの野郎ッ!!自分のこと忘れられたからって拗ねるなよッ!」

 

 「す、すすす拗ねてねーし!はぁ?!何言ってんの!?お前は何言ってんの!?」

 

 そして二人は勝手に言い争いを始めた。次第にそれはエスカレートし、とうとう取っ組み合いの喧嘩になった。

 

 「うーん、あれは話終わるまで時間かかりそうっスね…。何か暇潰しになりそうなものないッスかね…」

 

 ポニーは自分の仲間が喧嘩しているというのに全く慌てる様子を見せない。よく見るとキャットもまるでいつもの事だとでもいった様子で退屈そうに欠伸をしている。

 そんな頻繁に喧嘩するのかと、アオイは取っ組み合っている二人を見る。

 

 すると突然ポニーが何か閃いたように手をポンと叩き、口元に笑みを浮かべアオイ達を見た。

 

 「あ、いいこと思い付いちゃったっス。……ゴホン。貴様ら、吸血種について知りたいと申すか。ならば良いだろう、特別にこのウチ……じゃなくて、この私が!貴様らの冥土の土産に教えてやろう!!」

 

 ポニーは嬉々とした表情を浮かべながら、アオイとカーミラの二人を交互に見て言った。

 この場にいるポニーを除く全員がその動きを止め、辺りは一瞬で静まり返る。

 

 「……へっ?」

 

 しばしの沈黙の後、アオイは真顔のまま間の抜けた声を出した。

 

 これには仲間のキャットもやれやれといった様子で額を押さえて小さくため息をついている。

 喧嘩していたフォックスとゴリも動きを止め『何言ってんだこいつは』という目をポニーに向けていたが、直ぐに喧嘩が再開した。

 

 だが、ポニーだけは満足げにムフーと鼻から一つ息を吐くと、ニコニコと随分ご機嫌な様子で、

  

 「いやぁ、実はこの正統派の悪役っぽい台詞に憧れがあって、チャンスがあれば一回ぐらいは言ってみたいなーと思ってたんス。そんで今がその時じゃね?!とウチの本能がビビッと来たんで……」

 

 恥ずかしいとは全く思っていないようで、飄々とした様子でポニーは答えた。

 そんなポニーにキャットは、まるで母親が子供を優しく諭してあげるような穏やかな声で言った。

 

 「……ポニー?あなた、それ死亡フラグだって分かって言ってるの?」

 

 ポニーは一瞬ポカンとしたが、すぐに声を上げて笑い始めた。

 

 「え、死亡?…あはははは!キャットは面白いこと言うんスね!ウチ達がこんな奴らごときにやられるはずないじゃないッスか!」

 

 ……それが死亡フラグなんだよなぁ。

 と、アオイは思ったがあえて口には出さない。

 

 ポニーは素晴らしい手際の良さでさっき立った死亡フラグの上に、すぐさま二つ目のフラグを立てていく。

 これは故意にやっているのか、それとも天然なのか…。どちらにしろこちらのプラスであることに変わりはない。

 

 アオイはこういう状況でのフラグ行為、特に死亡フラグは中々馬鹿に出来ない威力があることを知っている。『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ』しかり、『俺に任せて先に行け!』しかり、そういった死亡フラグはほぼ間違いなく回収される。

 

 つまり……。

 

 アオイは勝ちを確信したことで思わず表情が緩み、だらしない笑みを浮かべた。

 そしてその笑顔を見たポニーが顔を歪めてドン引きしているのが目に留まる。

 

 「うわぁ、なにあの顔。気持ちわりぃ……」

 

 感情が冷え切った低い声のトーンでポニーが呟いた。

 

 「おい、さらっと傷つくこと言うなよ。泣きたくなるだろ。ただでさえ今は身も心もボロボロなのに、そこにその言葉はいくらなんでもあんまりじゃないか?」

 「だって本当に気持ち悪いんスもん」

 「………………」

 

 アオイが静かに静かに涙を堪えていると、キャットがポニーの耳元に顔を寄せ小さな声で囁いた。

 

 「……ポニー。分かったから、あなたはもう静かにしてなさい」

 

 しかし、空気の読めないポニーは「えー」と不満げな声を漏らし、頬を膨らませる。

 

 「別に良いじゃないッスか。キャットもあの顔見たとき、一瞬頬が引きつってましたよ。ウチはキャットの気持ちも一緒に代弁してあげたんスよ」

 「……まぁ、確かに気持ち悪かったけど……」

 

 「ねぇ、帰っていい?俺もう死にそうなんだけど。この場にいるだけでもう色々と限界なんだけど」

 

 アオイは震えた声でカーミラに言った。

 だがそんなアオイにカーミラは俯いて目を合わせようとせず、申し訳なさそうに言った。

 

 「ごめん、その……私もちょっと今のは……気持ち悪かった」

 

 

 

 

 道の隅っこに体育座りで座り込んでブツブツと何か呟いているアオイを尻目に、ポニーは話を進めていく。

 

 「はい、それじゃあ吸血種の説明に移るっスよ~」

 

 「いや…今それどころじゃないんだけど……。女子三人に真顔で『気持ち悪い』って言われて平常心保てるほどの頑強な精神なんて持ち合わせてないんですけど……。帰っていい?ねぇ帰っていい?」

 

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