第十六話 活気溢れる町
アオイは背中にダスベルトから借りた青色のリュックを背負い、右手にダスベルトから貰った地図を握りしめ、時折地図を広げて現在地を確認しながら鬱蒼とした森の中を進んでいく。カーミラはその少し後ろを歩いて付いてきている。
早朝のまだ日が昇る前にギルドを出発したのだが、この日はとうとう日没までに辿り着くことが出来ず、仕方なく一晩を森の中で見つけた小川の近くで野宿することにした。
「お腹減ったぁ、アオイ何か食べ物持ってない?」
カーミラは焚き火に当たりながら、顔だけをアオイに向けて聞いてきた。
「あー、持ってる持ってる。実は俺も腹減ってたんだ」
こんな時のためにと、ダスベルトが出発前に渡してくれていた食料を、アオイは側に置いたリュックから取り出す。
その形はパッと見では日本にもあった缶詰そのものなのだが、ダスベルトに聞いたところによるとどうやら缶切りなどを使うことはしないという。ではどうやって開けるのかというと、この缶詰に魔力を込めるだけらしい。半信半疑ながらも実際にやってみると、思った以上に簡単に開けることが出来た。アオイは缶切りの要らない缶詰に安っぽく感動した。
簡単に食事を済ませたところでその日は明日のことを考え、早めに眠りにつくことにした。
翌日は日の出とともに町へ向けて出発し、ようやく町に到着した時には既に太陽は高い位置に昇っていた。
アオイとカーミラがギルドを出発してから目的地である『デルポイ』という町に辿り着くまで、一日と半日ほどが経過していた。
「よ、ようやく着いた・・・」
アオイとカーミラは町の中に入りほっと一息つくと、すぐに歩き出した。
アオイは歩きながらキョロキョロと町の様子を見回した。
この町は結構大きな町のようだが、地面は舗装されておらず土のままだ。そして今アオイ達の周囲には、木とレンガで出来た背の低い家々がたくさん建ち並んでいる。恐らくこの地区は住宅街だろうとアオイは思った。
「プティアと比べると・・・何て言うか、田舎って感じがするね」
アオイは辺りを見ながら、後ろを歩いているカーミラに話しかける。
「うーん・・・というよりも、プティアが他よりも凄いだけだと思うよ。一応、スリーア地方最大の都市だからねぇ。他の町も大体こんな感じだよ?」
「へぇ・・・そうなんだ。そういえば最大の都市とかそんな事言ってたね。そりゃそんなのと比べるのがおかしいわな」
アオイは納得したように軽く頷く。
そこから少し歩くと大通りに出た。その大通りには食品や日用品などを売っている露店が所狭しと立ち並び、そして自分の目当ての商品を買おうとするたくさんの人でごった返していた。ここはどこか日本の商店街のような雰囲気があり、アオイは少し懐かしく感じた。
アオイはそんな町の様子を眺めながらプティアと比較する。確かに単純に建造物や人口だけで比べるとデルポイは田舎だと思う。だが、この町の活気はプティアにも引けを取らない・・・いや、もしかしたらそれ以上なのではないか、と賑わっている市場や町の人々の生き生きとした表情を見てアオイはそう感じた。
その大通りを抜けると僅かではあるが人の数も落ち着いた。そこでアオイは少し立ち止まり地図を広げて現在地からギルドまでの道を確認する。
「・・・っと、ここからはギルドまではあと少しみたいだな」
と、突然後ろにいたカーミラがバンバンとアオイの肩を叩く。
「ちょっ、痛っ!なになに!?」
「ちょっとごめん!先にギルド向かってて!後で追いつくから!」
カーミラは前を歩いていたアオイにそう言うと、突然今通ってきた大通りに小走りで向かい、人混みの中に紛れて姿が見えなくなってしまった。
突然の事態に状況が飲み込めず、人混みを呆然と見つめたまま立ちつくすアオイ。
だがすぐに我に返り、困惑した表情を浮かべる。
「・・・えぇ?どういうこと?何が何だかさっぱり分かんないんだけど」
アオイは腕を組みながら眉間に皺を寄せて考え込む。
(とりあえず先にギルドに着いておいて、そこでカーミラを待っておくか。・・・あれ?そういえばカーミラは地図も持ってないのにギルドの場所は分かるのか?)
最悪な想像が一瞬アオイの脳裏をよぎり、大きな溜め息が漏れる。
「まぁ、どうにかしてギルドまで来るだろ・・・」
アオイは周りに聞こえないくらいの小さな声でそう呟くと、ギルドのある方向に向かってふらふらと歩き出した。




