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第十四話 最後まで話は聞いてほしい


 アオイは全身を吹き抜けるような心地よい風を感じて目を覚ました。

 

 しかし今、アオイの目の前には部屋の天井ではなく、雲一つなくまるで吸い込まれてしまいそうなほどの澄み渡った青空が広がっていた。

 慌てて体を起こすと、そこは辺り一面が地平線まで続いている草原だった。

 周囲を見渡すと、アオイのすぐ後ろに木製の祠が一つポツンとあるだけで他には何もない。

 

 初めてこんな場所に来た人は誰でも驚くだろうが、アオイはそこまで動揺はしていない。それは、以前に一度この場所に来ているからだ。

 

 「・・・プルトーンか」

 

 アオイは誰にともなくボソリと呟いた。すると、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 『おおっ!大正解だよ、流石だね!オヨミ アオイ 君!』

 

 気配を感じて後ろを振り向くと、以前会った時と同じ黒の球体の姿をしたプルトーンが、アオイの目の高さに浮いていた。

 そんなプルトーンの黄色い瞳を、アオイは睨み付けながらニヤリと笑う。

 

 「丁度良かった。実はプルトーンに色々と聞きたいことが出来たところなんだ」

 

 『聞きたいこと?ふぅん・・・。ま、答えるかどうかは約束しないけど、聞くだけ聞いてあげるよ』

 

 「・・・あんたはオリンポス神族なのか?」

 

 アオイは一つ間を空けると、単刀直入にプルトーンに訊いた。すると、そのせいか僅かにではあるがプルトーンの雰囲気が変わった。

 

 『・・・どこでそれを?』

 

 プルトーンは先程までのちょっと高い声のトーンとはガラリと変わって、ぞくりとするほどの低いトーンで訊いてきた。

 だがアオイは気圧されることなく、こう切り返す。

 

 「まずはプルトーン、君が答えろ。君はオリンポス神族なのか」

 

 だがプルトーンはすぐには答えず、しばらく二人の間に沈黙が続いた。

 

 『・・・まぁ知られちゃったのならしょうがないね。そうだよ。ボクは『オリンポス神族』の一人さ。・・・何か問題でも?』

 

 「ああ、問題大アリさ。君は一度世界を救った英雄なんだろう?そいつがどうして魔王と王国を倒そうとしているんだ?下手したら世界が滅ぶかもしれないんだぞ?」

 

 アオイがこう言うと、プルトーンは何かを考え込むように一瞬黙りこんだが、すぐにこう言った。

  

 『世界が滅ぶ、か。まぁそうかもしれないね。・・・けど、何でこんなことをしようとしてるのか、その理由については今は言えないかな~』

 

 「いや、言えないって・・・。そこが大事なところなのに!それだと俺が納得できないんだよ!」

 

 『まぁまぁ!その話はまた今度すればいいじゃん!それよりもさ!今日はアオイ君が喜びそうな情報を持ってきたんだよ!だからこうして会いに来たんだ』

 

 「喜びそうな・・・情報?ってか今、話逸らそうとしたろ」

 

 アオイは眉を寄せながらも、話を聞く。

 

 『そうそう。流石に一人で二つ倒すのは時間がかかるでしょう?だからね、ボクの方で君に協力してくれる仲間を二人確保しておいたよ!』

 

 予想もしていなかったプルトーンの言葉に驚いて目をパチクリとさせる。が、すぐに頬がひきつったようになる。

 

 「な、仲間?・・・もしかしてその仲間って、俺と同じ様に無理やり連れてこられた人・・・?」

 

 『え?何で知ってんの?もしかしてもう会ったりした?』

 

 アオイの質問にプルトーンは少し驚いた様子で数回瞬きをし、こう言った。それにアオイは言葉を失う。

 

 「・・・もういいです。それよりも、その人達はどこにいるの?」

 

 『世界の何処か、かな。・・・ご、ごめん、そんなに睨まないで。別にふざけて言ったわけじゃなくて、本当にどこにいるか分かんないんだよ』

 

 「じゃあどうやって見つければいいんだよ!」

 

 怒りの感情をあまり外には出さないアオイが珍しく声を荒げると、プルトーンも流石に悪いと思ったのかいくつかヒントを出してくれた。

 

 『その二人も結構面白い魔法を使えたはずだよ。確か『天界の魔法』と『太陽の魔法』・・・だったような気がするんだけど・・・』

 

 プルトーンは自信なさげに徐々に声が小さくなっていった。

 

 「他には」

 

 アオイの迫力に押されたのか、いつもの飄々とした様子とは違い少し狼狽えているように見えた。

 

 『お、お願いだからさ、そんなに睨まないでよ・・・。この二つの魔法はかなり目立つ魔法のはずだから、探せばもしかしたら見つかるかも・・・』

 

 「それっぽっちの情報でこの世界の中から二人を見つけだせ、と?」

 

 『・・・あっ!もうこんな時間だ。そろそろ家に帰らなくちゃ。じゃあねアオイくん、応援してるよ』

 

 アオイが睨みながら訊くと、プルトーンは突然わざとらしい演技をすると以前のように祠が眩い光を放ち始めた。どうやらアオイを無理やりにでも返すつもりらしい。

 だがアオイの話はまだ終わっていない。せめて攻撃魔法の一つでも使えるようにしてもらいたいアオイは、必死に呼び止める。

 

 「おい待て!せめて攻撃魔法を一つ-----」

 

 

 

 

 だが、気がついた時にはそこは既に草原ではなく、アオイは就寝した時のまま自分の部屋のベッドの上で寝ていた。

 まだ夜が明けていないのだろう、部屋の中は薄暗く、窓からは月明かりが差し込んでいる。

 しかし、アオイの目の前には真っ暗な天井が広がっているだけだった。

 

 

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