第6話 双子と伯爵家の秘密
地下牢の入り口の階段のあたりから、ひそひそと話す人の声が聞こえてきた。
おとう様と、聞いたことのない男の人の声だ。
「伯爵、本当にあの子をフェルディナンド公爵家に出すつもりですか。忌み子の片割れなど外に出すだけでも王国法に触れますぞ」
「背に腹は代えられん。公爵家からの援助がなければ、我がグラーツ伯爵家は破滅だ。強い精霊の力を宿す娘を求めている。精霊の才能が皆無なアリアーネの代わりに、地下で精霊を集めているあの子を差し出すしかないのだ」
鉄格子の近くまで忍び寄り息をひそめて耳をすませたる。
「なぜそこまで双子を忌み嫌うのです。リリア様は幼いお子様ではありませんか」
「知らんのか。ローゼンベルク王国において、精霊の加護は一人にひとつだけなのだよ。双子が生まれるということは、二人で奪い合ったということだ。国に災いをもたらす忌み子それが双子なのだよ」
「リリア様が秘めているその精霊力は忌み子の力」
「本来ならアリアーネの持つはずだった精霊力を、忌み子が奪って生まれてきたのだ。おぞましい銀の髪が証拠だ。アリアーネが伯爵家の光の愛娘として立つために、リリアは生まれたときから存在しないものとして地下室に閉じ込めたのだよ」
お父様の冷ややかな声が響く。
わたしがお姉様の力を奪って生まれた。
手をぎゅっとぼろぼろの衣服を握りしめた。
好きで銀の髪に生まれたわけじゃない。
お姉様から奪いたかったわけでもない。
ただ、この世界に生まれてきただけなのに。
「まあ、フェルディナンド公爵家も精霊の呪いを受けて冷徹の公爵などと恐れられている狂気の家系だ。呪われた者同士お似合いだ。公爵に身代わりがばれて殺されようが関係のないことだ」
足音が遠ざかり再び静けさが戻る。
膝を抱えるわたしの周りに、光の精オリオンたちが集まってきた。
「リリア、気にしちゃダメだ』
「お姉ちゃんの力を奪ってなんかいない。リリア自身の心が優しいからおいらたちが集まってきたんだ」
光の精さんが、羽を頬にすり寄せてくる。
風の精さんも、やさしく銀色の髪をなでてくれる。
「ありがとう」
涙がこぼれたけれどゆっくりと立ち上がった。
おとう様もおかあ様も、わたしのことを忌み子だという。
でも、精霊さんたちは、髪の毛も心も好きだと言ってくれる。
わたしは忌み子じゃない。
精霊さんたちが側にいてくれるもん。
公爵様が恐ろしい人だとしても、暗くて冷たい地下牢でゴミみたいに扱われ続けるより、お外へ出て自分の足で歩きたい。
涙をぐっと拭うと、精霊さんたちに向かってちいさく頷いたのだった。




