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公爵様の妹~5歳まで忌み子として地下牢で育てられたリリア~  作者: 春告草


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第46話 新しい家族

卒業パーティーでの劇的な幕引きから数日。

公爵邸の庭園は、心地よい風と陽光が降り注ぎ、精霊たちの気配が揺らめく穏やかな平穏に包まれていた。

真の聖女としての身分と誇りを取り戻したリリアの人生は、いまや新たな未来の選択肢を前に広がっていた。


卒業パーティーの喧騒が遠ざかった静寂の月光回廊で、リリアは隣国の第二皇子と二人きりで対峙していた。

灯火が二人の影を優しく照らし出す。


「リリア。我が国へ来てほしい。君の隣で、生涯をかけて君を護り愛し続けたい」


どこまでも真摯で、熱を帯びた第二皇子からの情熱的な求愛。

王国と隣国を結ぶ最高峰の誉れであり、誰もが羨む幸福な未来への扉だった。

だが、リリアは凛とした佇まいで静かに首を横に振ると、申し訳なさと感謝を込めた瞳でまっすぐに彼を見つめた。


「身に余るお言葉、心より感謝いたします。あの暗く冷たい病室で私という光を見出してくださったこと、そして救いをもたらしてくださったことも、決して忘れません」


一拍置き、リリアは澄んだ声で揺るぎなき決意を告げた。


「ですが、私は隣国へ行くことはできません。私には、どんな暗闇でもずっと支えてくれたお兄様がいます。この国で大切な人たちと共に、己の足で歩んでいきたいのです。あなたの温かなお気持ちには、お応えできません。本当にごめんなさい」


その清らかで気高き拒絶に、第二皇子はしばらく息を呑み、胸の痛みを包み込むように晴れやかな笑みをたたえた。


「そうか。君らしい、あまりにも美しく気高い答えだね。振られてしまったのは切ないけれど、最後まで己の心に誠実な君だからこそ、私はこれほどまでに深く惹かれたのだろうな」


第二皇子は気高く一礼し、穏やかな祝福の言葉を残して夜の闇の中へ去っていった。

恋が結ばれることはなかったが、彼の瞳には最後までリリアを敬愛する深い光が宿っていた。


数日後、リリアの今後の立場について重大な決断が下された。

隣国への輿入れを辞退した彼女を、公爵家と深い絆を持つ名門の侯爵家が、正式な養女として迎え入れることが決まったのだ。

公爵家の養女という立場を一度解き、一人の令嬢として新たな一歩を踏み出すための最善の道だった。


新しい家族となる侯爵家の屋敷は、朝からお祭り騒ぎのような歓喜の熱気に包まれていた。


「我が家についに、愛しき真珠のような女の子がやってくるぞ」


気品と威厳を誇るはずの侯爵家当主は、リリアの姿を見るなり胸を打たれて両手を突き上げ、周囲の執事たちも驚くほどはしゃぎ回っている。

この侯爵家にはこれまで武骨な二人の青年しかいなかった。

愛らしく気高い妹ができると知った青年たちは、大興奮で屋敷の廊下を駆け回っていた。


「やった、僕たちに可愛い妹ができるぞ」

「妹だ。天使のような妹だぞ」


二人の青年たちはリリアの周りを跳ね回り、全身で喜びを表現する。

あまりの熱烈な歓迎ぶりにリリアは目を丸くしつつも、胸の奥が温かな光で満たされていく。


「二人とも、それほど騒いではいけません。リリア様が困っていらっしゃるでしょう」


優しく微笑む侯爵夫人である新しいお母様も、目にうっすらと歓喜の涙を浮かべながら、リリアを温かく抱きしめた。

男の子ばかりだった静寂の館に舞い降りた愛しき少女。

家族全員が、リリアを宝物のように愛おしむ眼差しで見つめていた。


その日の午後、新しい家族との最初の行事として、王都で一、二を争う魔法糸の高級ドレスブティックへ衣装選びに出かけることになった。


「リリア。こちらのドレスはどうだい。精霊のレースがたっぷりとあしらわれていて、君の気高さにぴったりだ」

「いやいや父上、少し華やかすぎます。こちらの淡いサファイア色のドレスの方が、リリアの清らかさに映えます」


二人の青年が色とりどりのドレスを次々と携えては、リリアの体に当ててみる。

侯爵家当主も真剣な面持ちで悩み始め、店内は賑やかな笑顔に満ちあふれていた。


その光景を、一人の男がブティックの装飾柱の陰から静かに見守っていた。

公爵家当主であり、リリアが何よりも深く魂で愛おしむ兄だ。


新しい家族の愛に包まれ、花が咲くような笑顔を見せるリリアの姿。

形式上の兄妹という立場は離れても、あの静寂の夜にまっすぐに告げてくれた彼女の言葉が、彼の胸の奥で温かく響いていた。


「お兄様と歩んでいきたい」


兄が愛おしそうに目を細めて微笑むと、その温かな視線に気づいたリリアが軽やかに歩み寄ってきた。


「お兄様、これ、すごく綺麗ですわ」


リリアが嬉しそうに差し出したのは、かつて兄が贈ってくれた一輪の白薔薇を思わせる、清楚で刺繍が施されたドレスであった。


「ああ、とても美しいよ。リリア、君は世界で一番大切な、私の自慢の光だ」


二人が交わした穏やかな笑顔と深く頷き合う視線。

どのような形に変わろうとも、二人は決してほどけることのない強い魂の絆でしっかりと結ばれた。


温かな新しい家族の愛に育まれ、最愛の兄と共に、リリアの未来はどこまでも永遠の光が続いていく。

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