第4話 顔なき奇跡
半年前、おとう様とおかあ様は地下牢の少女が持つ異能に気がついた。
思い切り殴ったあとや靴のヒールで酷く踏みつけたはずなのに、リリアにはなにも傷がない。
重い扉のすき間から見ていると、自分には見えない妖精が傷を治しているようだ。
リリアが何かささやく。
試しに、おとう様が、リリアを大きく切り裂いてみた。
傷はあっという間ふさがってきれいな肌になった。
おとう様とおかあ様、姉のアリアーネが、この機会を逃さなかった。
高位貴族に重い病気を治す娘アリアーネがいると噂を流す。
病を癒してほしいいう、高額な依頼が入った。
リリアは顔や姿が知られるわけにはいかない。
きつく目隠しがされ頭から分厚い布をかぶせられ地下牢から引きずり出される。
「お前はただの道具。外へ出るときは目を開けるな、声も出すな」
依頼人の屋敷に連れて行かれると、おとう様とおかあ様は、姉のアリアーネの神秘的な力で病を治しているかのように振る舞う。
「我が家の愛娘の力をお見せします。始めなさい」
リリアは背中を強く叩かれ、目隠しの暗闇の中で必死に妖精に呼びかける。
「オリオン。おねがいあの人をたすけて」
「こんな酷い目隠しをされて可哀想に。 おいらの力で病気払ってやる」
光の精が可憐に舞い、病人を包む黒い気を浄化していく。
病が癒え歓喜する高位貴族たち。
彼らが差し出す金貨の山を両親は笑みを浮かべて受け取る。
「素晴らしい。流石はグラーツ伯爵家のご令嬢だ」
感謝と称賛を受けるのは隣で美しいドレスを着て微笑んでいる姉のアリアーネだった。
用が済めば、頭から布をかぶせられたまま粗末な荷馬車に押し込まれ、冷たく暗い地下牢へと送り返された。
「私の力なのよ。病の人を治してお父様たちはお金を稼いでいるのよ。ドブネズミは生かしてやってるんだから」
姉のアリアーネの嘲笑と、両親が金貨を鳴らす音が地下牢の向こうへ消えていった。
金貨はリリアの食事には回されず、姉の豪華なドレスや両親の贅沢へと消えていく。
「大丈夫か。おいらの力を横取りしての金儲けは許せない」
「大丈夫だよ、オリオン。お役に立てたかな、病気の人が治ってよかったね」
目隠しを外されたリリアは擦りむけた手首を抱え微笑んだ。
光の精オリオンがすぐに治してくれた。
高位貴族中心に、大枚な金貨と引き換えに重病人を治していく、美しいドレスを着て微笑んでいる姉のアリアーネがいるというグラーツ伯爵家の噂が呪いに苦しむ冷酷な公爵家当主の耳に届くことになるとは、そのときは誰も知らなかった。




