第19話 王立魔法学園への入学
13歳を迎えたリリアは、貴族の子息が集う最高峰の学び舎、王立魔法学園へと入学する。
公爵家の深い愛によって愛らしく健康的に成長していた。
銀色の髪をなびかせ、上品な学園の制服に身を包む姿は、絵画から抜け出してきた妖精のようだ。
「リリア、学園内でも無理をしてはいけないよ。何かあればすぐに馬車を出させるし、騎士たちも控えているからね」
お兄様は、馬車の前でリリアの手を握り締め、心配そうに眉をひそめる。
相変わらず過保護な眼差しを向けてくる。
「お兄様、大丈夫です」
「悪いの虫がつかないことだけを祈っているよ。何かあればすぐに私に言いに来るのだよ」
お兄様は、リリアの手をとって指先に軽くキスをした。
「リリア。おいらもついている、変な奴が来たらすぐに突撃してやる」
光の精オリオンたちが、リリアの周囲を飛び回り、楽しそうに護衛している。
しかし、晴れやかな入学式の直前大講堂前の廊下で騒ぎが起きていた。
資料を抱えた一人の少女が、角を曲がって先輩と不注意でぶつかり、書類を派手に散らばらせてしまったのだ。
「すみません。 私うっかりしていて」
「怪我はないかい。慌てなくても大丈夫だよ」
少女に手を差し伸べたのは、皇太子セドリック殿下だった。
華美な制服と洗練された佇まい、そして甘いマスクを持つ彼は、圧倒的な注目を集める存在だ。
皇太子に手を引かれて立ち上がったのは、つつましい身なりをした平民の生徒ミーナだった。
ミーナは顔を真っ赤にしながら、皇太子へとお辞儀をする。
その拍子に、手元からポロリとこぼれ出た魔力が、柔らかな輝きを放った。
「これは光魔法の魔力か。これほど純粋な光の適性を持つとは素晴らしいな。君のような人材を学園に迎えられて誇らしいよ」
「はい、ありがとうございます」
皇太子からの温かい言葉と称賛の眼差しに、ミーナはうっとりと瞳を輝かせ頬を染める。
皇太子は爽やかに微笑むと大講堂へと去っていく。
「皇太子殿下が私に優しくしてくださった やっぱり私って特別なのね」
一転して満足げな笑みを浮かべ呟いた。
その直後。
「リリア様、あちらへ向かいましょう」
「ええ、ありがとう」
貴族の生徒たちに囲まれながら歩いてくるリリアの姿が視界に入った。
最高級のシルク仕立ての制服、美しい銀髪、そして周囲から注がれる本物の敬意と憧れの視線。
リリアの圧倒的な品格と可憐さな姿を目の当たりにした瞬間、ミーナの瞳の奥に嫉妬と歪んだ光が走る。
リリア自身の力は、妖精たちの加護と結びついた真の聖なる奇跡。
公爵家が彼女の安全のために厳重に隠し通している規格外の異能。
対して、ミーナは光魔法を持つ特別な特待生として立ち向かおうとした。
「リリア、気をつけろ。あの女さっきから嫌な目で見てる」
光の精オリオンが警戒するように低くささやいた。
皇太子とミーナの接近、そしてミーナのリリアに対する対抗心が、静かに波乱の幕を開けようとしていた。




