第16話 精霊術の本格開花
この3年間、私はフェルディナンド公爵家の令嬢として、精霊術士として、毎日たくさんの勉強に励んできた。
お兄様が招いてくれたのは、王国でも一位か二位を争う最高峰の家庭教師陣だ。
歴史やマナー、語学はもちろん、精霊学の大家である老魔導士の教授を屋敷に招いた。
「リリア様、本日の精霊術の実技指導を始めましょう」
庭園の訓練場で、老教授が穏やかに微笑む。
勉強を始めてから、その才能が驚くほどの速さで花開いていた。
「はい」
私がそっと目を閉じて深く息を吸い込む。
すると、お庭の空気が揺れ、光の精たちをはじめ、風、土、水、そして植物の精霊たちが、歌うように周りに集まってきた。
「リリア、今日はどんなことするの」
「おいらたち、リリアの力になりたい」
私が集中して両手を差し出すと、指先からまばゆいばかりの金色の精霊力が溢れ出した。
それはただの攻撃術や防御術ではない。
荒れ果てた土地を一瞬で草原に変え生命を育む、創世の加護の光だ。
教授は目を見張り、手帳を落としそうになりながら感動の声を漏らした。
「素晴らしい。精霊の意図をこれほど完璧に汲み取り、調和して大きな奇跡を起こせる術士など王国の歴史上存在しません。まさに精霊に愛されし奇跡の令嬢です」
遠くからその様子を見守っていたお兄様とレオンさんも満足そうに頷き合っていた。
「見たかレオン。我が妹のあの素晴らしい才能を」
「公爵様。リリア様のお力とお心映えの美しさは、もはや王都中でも噂になっておりますな」
訓練が終わり、汗を拭いていると、お兄様が温かい紅茶を持って歩み寄ってきてくれた。
「リリア、誇らしいよ。本当によく努力しているね」
「お兄様。私、もっと勉強して、お兄様や公爵家のみんな、レオンさんや精霊さんたちの役に立ちたいの」
お兄様は愛おしそうに私の頭を撫でてくれたが、その瞳には少しだけ寂しそうな光が混ざっていた。
「リリア。お前が12歳になれば社交界への第一歩、デビュタントの準備が本格的に始まる。そして15歳になれば、王立魔法学園への入学も待っている」
「お外の世界、社交界と学園」
「そうだ。お前がどんなに輝かしい才能を持とうと、外の世界には意地の悪い者や、お前の力を利用しようとする者もいるだろう。だが、忘れるな。お前には私と、公爵家の騎士たち、そして何よりお前を愛する精霊たちがついている」
『そうだよ、リリア。意地悪なやつが来たら、おいらたちが吹き飛ばしちゃうからね』
風の精さんが得意げに胸を張ると、私は思わず笑ってしまった。
愛するお兄様の教えと、頼もしい精霊さんたちの温もりに守られながら、わたしは着実に、社交界という新たな舞台へと羽ばたく準備を整えていくのだった。




