「CVSS 9.0:雑誌」
「ボイスが大変好評なようで」
《主、500円は安すぎる》
「えーと……ここで業務連絡です。BOOTHでBost10万円入れた方、返金しますので名乗り出てください」
《ファッ!?》
《待て待て待て》
《はい》
《初コおメねだりネキやないかーい》
「こちらからDMします。必要事項を確認して、希望の返金方法を選んでください。○○Payか銀行振込が最速です」
《主の言ってた雑誌ってこれか? オークションURL》
《主、気づけ! 爆弾が投下されたぞ!!!》
《あかん、事務処理中でコメント読んどらん》
《今日はF1ピットクルー不在か》
イクトの視線が、ようやくコメント欄に移る。
そのまま硬直した。
《あ、気づいた》
目の前の画面が切り替わる。
『本商品は落札されました』
「……誰ですか。今、落札したの。誰ですか?」
最後の一言だけ、声が地を這うように低かった。
《ひっっっっっっっっっく》
《URL貼ったやつも戦犯だぞ》
《主、コメント消した方がいい。》
「ああ……そうでした」
―――○○に2年のタイムアウトが設定されました―――
《2年!?》
《すまんな2年ニキ、さすがに擁護できん》
「……抑止する方法」
イクトはしばらく考え込み、ぽつりと言った。
「生意気ショタボイスの制作、中止かな……」
《そんなーーーーーーーー!!》
《二度とやらないんじゃなかったのか》
「ああ、ごめんなさい。言葉が足りませんでした。もうやらないと言ったのは姉ボイスの方です。恥ずかしいのもありますけど、本当に喉が終わるんですよ。酷使しすぎかなって」
《なるほどな》
「なので、生意気ショタボイスだけならと思ってたんですけど……この話題が続くなら、安心して出せません。連帯責任です」
《そんなーーーーーーーーーー!!》
《主、10万円は本当に返金しちゃうんか? 10万ネキはそれだけの価値があると思って入れてくれたんだろ?》
「それは、ありがたいです。でも、僕はいろんなことを趣味でやっているだけなので。お金を稼ぐのは二の次なんですよ」
「僕が何かしたって、世界が変わるわけでもないですし。いなくなっても、代わりはいくらでもいる歯車の一つですから」
少しの間、コメントが止まった。
《主人公サイドの顔したやつが何言っとるwww》
《ほんま主、自己評価低いな》
《主の中のモブが何と言おうと、少なくともワイらにとっては代わりおらんで》
「……そういうこと言われると、返金しづらくなるじゃないですか」
《そこは返金していいw》
「はい。気持ちは、ちゃんと受け取りました」
「でも、そのお金はもっと自分のために使ってください。僕がスパチャを無効にしているのも、同じ理由です」
「メンバーシップの月300円と、ボイスの500円。それで僕は十分うれしいです」
「もし何か入れてくれるとしても、ちょっとした食事代くらいにしてくださいね」
《主が金額の上限をお願いする配信》
《10万ネキ、気持ちは届いてるぞ》
《了解。浮いた分でうまいもの食うわ》
「はい。それが一番うれしいです」
「設計上問題があるな……改修が必要ですね」
《今、配信中に何を改修するつもりだ》
「購入時に任意の金額を上乗せできる状態が、僕の運用方針と合ってないんです」
《10万ネキをバグ扱いするなw》
「10万ネキは悪くありません。想定していなかった入力を通した、僕の設計の問題です」
《客を責めずに仕様を直すエンジニアの鑑》
「なので、まず返金。それから販売方法を見直します」
《ボイスは消さないでくれよ?》
「そこは……連帯責任の件と別途協議します」
《まだ怒ってるw》
「すでに買ってくれている人が損はしないようにしますので。」
《あの……返金は受け取りました。でも、手数料分まで含めた全額ですよね? 主が赤字になってませんか?》
「ああ、そこは僕のわがままなので……!」
《いや、それは主、無理やろ。精いっぱいの感謝の気持ちが主の赤字につながったと思ったら、ワイなら震えるw》
「……すみません。僕、受け取る側の気持ちばかり考えてました」
《主も10万ネキも、互いの財布を守ろうとしてる》
《返金の着地点まで協議が必要になってて草》
「手数料の内訳を確認して、DMで相談させてください。僕だけで決めるのはやめます」
――前世の頃と今世の標準的なソリューションの違いを、雑談がてら話していると。
再び、招かれざる珍客が現れた。
《イクト様、あなたをお探ししておりました。私、○○プロダクションの者でして》
《AV関係じゃねえか! 帰れ!》
《主は絶対喜ばぬ。回れ右して帰るがよいぞ》
《とある雑誌を拝見いたしまして――》
《ムムッ》
《敵襲ぞ! 皆の衆、かかれー!》
反応速度0.6秒F1ニキ降臨
このコメントははモデレーターにより削除されました。
――○○は永久BANされました。
「で、今ならその構成、もっとシンプルにできますね。……コメント欄、何かありました?」
《何もないよ》
《平和です》
《続けて主》
《主眠そう》
「僕の知らないところで何か構築されてません?」
イクトに嘘をつくというより、不快な勧誘をモデレーターが処理したので、話を続けて大丈夫という空気。前回はコメント欄に爆弾が落ちて本人が硬直したけど、今回は着弾前に迎撃できている訓練されたリスナーによるファイアーウォールh初めて完全勝する瞬間だった。
後日、○○プロダクションには苦情が相次いだ。
「本人の配信中に持ちかける話ではない」
「本人が嫌がっている雑誌を、なぜ勧誘の理由に出したのか」
「所属タレントへの連絡方法やコンプライアンスはどうなっているのか」
イクトがその件を知ったのは、騒ぎが収まってからだった。
「……僕、標準構成の話をしてましたよね?」
《してた》
《こっちは防衛戦をしてた》
《主の配信を交渉窓口にさせるな、って話だよ》
「良いリスナーに恵まれて僕はし幸せだなぁ」
《拙者は主殿をお慕いしておりまする》
《武士ニキすこ》
それ以降、雑誌の話題は配信の禁句になった。新規の視聴者が触れようとすると、常連たちが先に止める。
《新規さん、それだけはアウト!!!》
《主が本当に嫌がるから、触れるのはやめてあげて》
イクトが毎回言い直さなくても、リスナーがその線その後も守り続けた。
「そうか・・・D○○ite・・・あっちなら、決め打ちの金額で売れる。」
《サークルサークル(所属1名)》
《ぼっち》
《ぼっちサークル爆誕》
「僕一人ですけど何か?」
武士ニキユニーク昇格
初コおメねだりネキ⇒10万ネキ




