再会
花火大会当日、俺はゲームをしていた。FPSゲームは朝にオンラインでやると、ゲーマーがオールして疲れている頃なので、案外簡単にキルができてしまう。
とはいっても、俺もオールしてやってたんだが。
いつも一緒にやっているメンバーは澄川と、クイルさんだ。三人でよく分隊を作っている。たまにクイルさんのフレンドのスナスさんも来る。
朝の7時頃、俺は疲れたので休む事にした。
「俺一旦休むわ…」
ヘッドセットのマイクに向かってそう話すと、
「俺も寝る」
と澄川が言い、後に続いてクイルさんは「あと一戦したら俺も寝よ」と言っていた。
朝飯がわりに、ウミダーinゼリーを飲んで寝た。少し寝ぼけているのか、力加減がわからず強くウミダーの容器を押してしまった。口からゼリーが溢れて、口周りがベトベトになった。
「ったく…」
洗面所へ行き口周りを水洗いして、自室で仮眠をとった。
俺が住んでいるこの街は、田舎でも都会でもない。そんなに高齢者ばかりいるわけではないし、コンビニもたくさんある。だからといって、都会ほど栄えているわけではない。山だって結構あるし、緑が多い場所もたくさんある。
どうでもいいことだが、俺はそういう街が1番好きだ。
――何時間経ったのだろうか…。変な時間に寝たこともあってか、眠気はとれたが体の疲労が全くとれていない。
軽くあくびをし、勢いよくベットから出た。こうでもしないといつまでもベットに籠もってしまうからだ。
時計を見ると、昼の2時だった。何か食べ物でも食べるかと思い、一階へ向かう。
一度洗面所で洗顔と歯を磨いて、リビングへ向かった。リビングとキッチンはワンルームで繋がっている。
リビングのドアを開けると―――、
「あ、お兄さんだ」
「誰がお兄さんだっ――――ハル…?!」
そこにいたのは、五年前共に花火を見たあの女の子だった。
突然の再会に思わず動揺が隠せず、声が裏返ってしまった。
ハルはあのときとは違って子供っぽさがほとんど無くなり、見た目は女子高生か中学生の3年生くらいだった。
「お前…どうして今頃来たんだ?もっと前に来れなかったのか?」
俺が今驚いているのは、突然こいつと会った事もそうなのだが一番は、なぜこのタイミングで現れたのかだ。
「今日は大事な用があって来たの」
リビングのソファーから体を起こし、ハルはそう言った。
「――そうか」
何の用なのかは聞かない事にした。知りたくない訳ではないのだが、直感的に聞かないほうがいいと悟った。
「あれ?詳しく聞こうとしないの?」
俺の態度に少し違和感を感じたのか、ハルはとても疑問そうに尋ねてきた。
「まぁな…。今は気が向かないみたいだ。それより、飯食ったか?」
「ご飯?あぁー食べてないよ」
ハルはまたソファーに倒れ込み、仰向けになった。
「俺今から飯だから、お前のぶんも作っとくぞ」
いちいち、食うか?なんて聞くのは面倒なので、強制的に食わせることにした。
「お、ありがとー!」
ハルはそう言うと、リビングに放置してあった俺のマンガをテキトーに選んで読み始めた。
ちょっとHな物もあるからそれでドン引きされるのは避けたいところだ。
そんな本リビングに置くか普通、と自分で自分に突っ込んだ。あーなんか悲しくなってきた。
「――そういやー、今日花火大会だぞ」
俺は一応、その事を教えた。町中に貼紙があったから流石に気づいているとは思うが…。
「うん。懐かしいね!」
「にしてもお前、成長したな」
今の姿では5年前の姿は到底想像できないほど、ハルは背も伸び、顔も子供っぽさが少なくなった。
「でしょ?胸も大きくなったんだよ?見る?」
ハルは読んでいたマンガ本をテーブルに置き、両手で自分の胸を持ち上げた。
5年前はほぼ平野だったのに、今は巨乳ではないが、準巨乳くらいの大きさにまで育っている。
「見ない。その部分の話は今していない」
「相変わらずだなー、お兄ちゃんは」
先程からハルは俺の事を、お兄ちゃんと呼ぶのだが、なぜそう呼んでいるのかよくわからない。まず俺に妹はいないていうか、そもそも兄弟がいない。
両親は母が病気で俺が2歳の時に死に、父は外交官で海外にいる。そのため、俺は小さいときから一人で暮らしてきた。
祖父の家に行くつもりだったのだが、この街からとても離れていて、澄川達に会うのが困難になりそうだったので俺は断った。
父は俺の一人暮らしに早すぎると大反対だったか、俺が家事を本気で練習して生活するには充分な能力を習得すると、許可してくれた。
「お前なんで俺の事お兄ちゃんって呼ぶんだ?」
冷蔵庫から緑茶を取り、コップに注ぎながら俺は質問した。
「お兄ちゃんだからだよ」
何言ってんだコイツと思ったが、緑茶と共に飲み込んだ。何かもうこの話は面倒だからいいやと思い、もう一つのコップに緑茶を注ぎ、ハルの所へ置いた。
「お、ありがとー」
ハルは緑茶を見てそう言うと、一口飲んだ。
その後ハルと久しぶりに昼食をとり、夕方まで他愛のない話をしようと思ったが、ハルは久しぶりに街を歩きたいと言ったので、ぶらぶら歩くことにした。
今日の最高気温は34℃とのことだった。今は3時なので勿論超暑い。外に出て数分で汗ばんできた。
「暑いのに、よく外に出ようと思ったな」
「いやだって、久しぶりだもん。暑いのは我慢するよ」
ハルは立派な発言をしたと思ったのか、少し誇らしげにしている。そのへんはまだ昔と変わっておらず、少し安心した。
俺が通っている高校や、スーパーなど色んなところへ行った。普段来ているため何も思わないが、ハルはとても懐かしんでいた。
にしてもとても暑い。俺は大丈夫だが念の為、隣を歩いているハルに、「大丈夫か」と聞くと、
「喉が乾いたー」
と襟元をパタパタさせて言った。こうなるとわかっていたので財布をポケットに入れていた。
ここから自販機は…、 少し近くにあったはずだ。
チャリンと小銭を入れ、ハルに選ばせた。ハルはコーラのボタンを押した。
俺はエナジードリンクを選んだ。
「どうする?帰るか?」
とコーラを飲んでいるハルに聞くと、
「うん、もう帰ろう」
と言っていたので、帰ることにした。
帰る途中、ハルは久しぶりの花火大会がとても楽しみだと言っていた。確かに今日は澄川も来るので、五年前と同じメンバーが揃う。そのこともあってか、俺もさらに楽しみだと思った。
家に着くと、時計は5時を回っていた。そろそら澄川が来る頃だろう。
「なぁ、澄川って覚えてるか?」
玄関で靴を脱いでるハルにそう尋ねた。流石に覚えているとは思うが、なんとなく聞きたくなった。
「うん。覚えてるよ」
靴を脱ぎ終えたハルはそう答えた。
「そうだよな。シャワー浴びたらどうだ?服はまた俺のになっちまうけど、汗かいたろ?」
「お、またあの時と同じシチュエーションだね」
「そうだな。んで、入るのか?入らないのか?」
「入るーー!」
とハルは笑顔で答えた。風呂の場所は覚えているようで、何も言わなくても迷わずに向かっていた。
自室へ着替えを取りに行き、洗面所へ置きに行く。
ノックをし、洗面所に着替えを置き終えると、リビングへ戻ってクーラーをつけ、緑茶を飲んだ。
携帯を見ると、丁度澄川から連絡が来た。
用件はさっき家を出たからそろそろ着くと書いてあった。俺はわかったと返信し、ソファーに寝転んだ。




