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懐かしく、そして楽しく……

 澄川が家に着いたのは、あれから5分後だった。庭に自転車を止める音がしたのですぐに気がついた。


 ピンポーンとチャイムが鳴り、俺は玄関の外にあるスピーカーへ繋がるモニターマイクみたいなやつに「入って」とだけ言う。

 もう数え切れないほどこいつは家に来てるので、出迎えるのも正直めんどくさいところもある。

 勿論、その事は澄川に話している。出迎えだるいから「入れ」とだけ言っておくと。

 

 「お邪魔しますー」,


 玄関のドアが開き澄川の声が聞こえると、数秒後にリビングのドアを開け、

 

 「よぉ」


 と手にレジ袋を持って入ってきた。俺は体をソファーから起こすと、何やら手にレジ袋を持っていたので


 「おう。何か買ってきたのか?」


 と言うと、澄川は袋をテーブルの上に置いて


 「あぁ。飲み物とか買ってきた。前は全部お前の家の物だったから何か申し訳なくてだな…」


 どうやら5年前の事をまだ気にしていたらしい。あの時は始めっから家の物だけでやろうと思っていたので何とも思わなかったのだが、澄川はそうではなかったようだ。


 「何だ、そんな事気にしてたのか。すまない、こんなに買ってきてもらって」

 

 「これでチャラでも文句は無いよな?」


 「ああ」と俺が返事をすると、澄川は冷蔵庫に飲み物を入れていいかと聞いてきたので、俺がやっとくと答えた。

 

 澄川が買ってきた飲み物は1日で飲みきれる量をはるかに超え、酒豪達の宴かと内心突っ込むくらいたくさんあった。何せ2リットルペットボトル3本である。1本は飲みきってしまうかもしれないから多めに2本買うのはわかるが、3人しかいないのに3本だと結構多い。

 あの時の分も買ってきたのだろうと勝手に解釈し、冷蔵庫にいれていると、風呂場から大きい音がした。

 あの音はおそらく洗面器でも落としたのだろう…。風呂場はかなり音が響くからな。


 その音に気がついた澄川は、携帯から目を離し


 「誰かいるのか?」

 

 と質問してきた。俺はここにハルが来ている事を知らないまま二人が会ったら、澄川はどんな反応をするのか少し楽しみだったので、 

 

 「いやこの家にはいない。近所でデカイ音でもしたんじゃないか?俺もよくわからん」

 

 うまく誤魔化そうとしたが、理由を作るのが少し下手くそだった。しかし、澄川は「ふーん。そうか」と言い、また携帯に目を戻した。


 「そういえば、俺来月にBE5のβ版先行プレイ鯖に招待されたみたいだ」


 「マジか!俺されてない…。なぁキーボードとマウス自分の持ってきてセッティングするからやらせてくれ」


 「ああ、いいよ。ちゃんとセッティングしろよ」


 「サンキュー!!」


 と何気ない会話をしているとハルが洗面所から出てきた。そろそろ来ると思い、俺は少々笑みが溢れた。澄川に見られていなくてよかったと安堵すると―――


 「お腹空いたー」


 ハルが来た。リビングのドアを開けて。


 「おう、今できるから待ってろ」  


 と俺が皿にメンチカツを盛り付けながら言った。


 「ん?誰だ?   えっ!ハル?」


 澄川はさっきの話よりもずっと驚いた、いやここ数年で1番驚いた顔をしてそう言った。

 ハルはコクッと頷くと、微笑み


 「久しぶり。澄川さん!」


 「ぅえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!久しぶり!」


 澄川は叫んだ。五年ぶりのハルとの再会、俺もあんなに叫んではいないがあれくらい驚いた。澄川は俺の心の声を、現に口に出している。


 俺もこの微笑ましい光景を少し遠くから見ていた。自分では表情がよく見えないが、おそらく、いや確実に笑っていた。


 さて、これで全員揃ったわけなのだが、とりあえず飯にすることにした。食べながらのほうが話も捗るだろう。

 花火大会まであと1時間くらいある。


 「悪いがハル。食器運ぶの手伝ってくれないか?」

 

 「うん。いいよ」


 ハルはキッチンにある料理主にメンチカツなどを運び始めた。5年前と似たメニューにしたのは言わなくてもわかるだろう。少し変わっているのは、さすがに他の料理も食べてもらいたいからだ。


 「俺は何すればいい?」


 「澄川は食後に食器運んでくれ」


 と俺はエプロンを脱ぎ終えてから、お願いした。澄川は了解と言い、椅子に座り3人のコップに買ってきたメロンソーダを注ぎ始めた。


 ようやく準備が終わり、皆口々に「いただきます」と言って食べ始めた。

 ハルはかなり腹が空いていたので、食べるペースが凄く早かった。俺と澄川はそれを見て苦笑した。


 体は成長しても5年前と変わっていなく、見た目の面影はだいぶ無くなったが、雰囲気や仕草など内面的な所はほとんど変わっていない。

 きっと澄川もそう感じたはずだろう。


 だが、俺はあの言葉を忘れていない。あの言葉の意味を、嘘なのか、それとも本当に何かが起きるのか、確かめるのは今しかない。

 ここでいきなりその話題を振るのも少し気が向かないので、少し違う話をすることにしよう。


 「うまいか?」


 必死に食べているハルに俺が尋ねると、口の中の食べ物を飲み込み、お茶を飲み干して


 「うん!やっぱりお兄ちゃんの料理はおいしい!」


 と言った。


 「お兄ちゃん!?どういう事だ多賀」

 

 お兄ちゃんという単語を聞いた瞬間、澄川はまた驚き質問した。


 「俺もよくわからん。今日会ってからずっとそう呼ぶんだ。なぁ?さっきも聞いたが教えてくれないか?あと5年前、お前が言った『あとでわかる』ってどういう事なんだ?頼む、教えてくれ…」


 俺がハルへした質問は、澄川も一番聞きたかった事だ。さっきのお兄ちゃん事件から切り替え、俺と共にハルの答えを待っている。てか切り替え早すぎ。


 「――わかった。全部話すよ」


   


 

 

 

 

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