026◇地域◇明るい死者〜死者から見た少女〜
025で食べられた女性です。今度、菖蒲視点も書きたいかもです。珍しく明るくてキレイ(←血みどろで無い)な死者だと菖蒲の目に映ります。
20130408
☆☆☆
「あの人に出逢ったのも、こんな日だったわ。」
「そうですか。」
柔らかな陽射し。
射し込む木漏れ日に、私は眸を細めた。
隣に腰を下ろした少女は、何だかウンザリした口調だった。
時々、挨拶を交わす程度の近所に住む女の子だけど、まさか「こんな」子だとは思わなかった。
「そして、私があの人に食べられた日も、こんな日だった。」
「そうですか。」
やはりウンザリとした感情が透ける、でも淡々とした口調で返された。思わず笑ってしまう。人が死んだ話を、そんな風に御座なりな態度で聞くかな?でも、そんな当たり前の態度が面白いと思う。
何より。
死んでから誰とも話せなかったから、こうして誰かと会話が出来るのが嬉しいと感じていた。
「普通、こんなに平和で穏やかな陽射しの下に、妖怪とか化け物とか出ないと思わない?」
「………それなら、アナタも消えたらどうですか?」
「………あ。」
そう云えば、私も今は化け物だったか。幽霊と云うのかな?
しかし、随分と平然としてるけど、この子は本当に何者なのかね?
今まで……と云うか、生きてた頃は、キレイな子だとは思ってたけど、ただソレだけだった。近くに住んでる女子高生。ちょっとキレイな女の子。時々、甘味屋や美容院で顔を遭遇して、会釈で挨拶する程度の相手だ。
結構モテる様で、美形と呼べる男の子たちを、迷惑そうにあしらっていたのを見た事がある。
どちらかと云えば無表情に近いけど、大抵の場合、面倒そうだったり迷惑そうだったり今日みたいにウンザリした様子がデフォルトだったと思う。特に強い印象を受けた事は無かった。
でも、イマは違う。
強烈な迄の魅力を感じる。何やら惹かれる。フラフラと牽引され、近くにいるだけで心が浮き立つのが判る。
本当に。
どういう子なんだろう?
死者を惹き付ける女の子。
退屈そうにも見える、ウンザリした態度を隠さない美少女。淡々とした口調は、これが当たり前の日常と知らせて、それは取りも直さず死者との交流が初めてでは無いという事だ。
いや。
死者のみならず、人ならざるモノとの交流がある……と云うべきなのかも知れない。付き合いの有無はともかく、少なくとも知ってはいるのだろう。
何故なら、彼女は驚かなかった。
私が、食べられたって事に。普通、そんな死因は、驚愕の対象にならないだろうか?
「ねえ。人を食べる人を知ってるの?」
「まあ、クラスにも一人居ますからね。」
「え?」
何だ、その日常的な台詞に似合わない非日常は。
「け、結構普通の事だったりするの?食べられるのって。」
「まあ、クラスメイトも一人食べられましたし。」
私には物凄い非日常的なドラマだったのだが、彼女にしてみれば有り触れた日常のヒトコマに過ぎないらしい。自分の死がその程度の出来事だと指摘されるのは、結構なダメージだった。
しかし、そんなモノなのだろう。
恋愛も、死も、世の中に氾濫している。当事者にとっては一大事でも、周りの人間には些細な問題なのだろう。
それでも、私のソレは……比較的普通では無いと思うのだが………どうだろう?
「心で訴えるのヤメて貰えますか?声に出して話すなら聞いてあげますから。」
「………どうして?」
ウンザリとした嘆息と共に云われた台詞を、私は疑問に思う。どうしてか判らないけど、何故か「話す」方法は他にもあると知っていた。死んだら身に付くスキルなのだろうか?
その方が、簡単に全てを語れるし、誤解の仕様も無いのに。
生きている彼女がソレを知っているらしい事にも驚くが、言葉で語るなら……彼女は私に結構な時間を割かないといけないだろう。面倒そうな癖に、ウンザリとしてる癖に、どうしてそんな手間を掛けるのか。不思議に思うのは仕方ないだろう。
それとも………。
「もしかして誤魔化そうとしてる?」
私の話を、結局は聞かずに済ます積もりだろうか?そんなんだったら呪ってしまうけど。ああ、でも。
この子は「強い」。何故か呪う方法も判るけど、この子には効かないかも知れないとも思う。
どうしようか?それでも呪ってみようかな?
悩みつつ見つめていたら、嫌そうに云われた。
「………喰われて快感に溺れるのをトレースするくらいなら、通って聞いた方がマシですよ。」
物凄く納得した。
☆☆☆




