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011◇地域&隣人◇人外密度

☆☆☆


 開かずの踏切を渡り、総合病院の次に大きな病院である塩野医院の前を通過して、全国区でちょっと有名な道場の前を過ぎ、こちらはご近所のみでちょっと有名な地下道を潜り抜ければ、直ぐに私たちの家が有ります。私と彼女はご近所さんなのです。

 そして、学校だけでは無く、ご近所も魔窟だと私は思っています。

 彼女、私の友人の千夜ちゃんは、本当に腹が立つくらい普通の人だけど、そして、一応はそれが多数に位置するのも間違い無いけれど。


 私は私の正気を疑う「住人」の率が、このご近所には多過ぎると思うのです。

 クラスメイト同様に。


 先に述べた道場もそのひとつです。あそこは全国区でも強い人が多いと有名らしいですが、それはそうだろうな……と思うのです。人外率半端無いです。

 そもそもが、あそこにはご近所で有名な兄妹が身内に居ます。特に大会に出る訳でも無く、しかし強いと噂の兄妹は、塩野医院の院長の義理の弟妹でも有ります。院長は普通っぽいですがね。

 その兄妹が何で有名かと云えば……誑しで有名です。いや……語弊が有りますね。ええと、………そうですね。一応は美形兄妹で有名です。

 しかしアレですよ。ぶっちゃけ人外って美形率も半端無いので、彼らは容姿だけなら特に目立たないです。我が家のお向かいさんも相当美形で、ご近所のアイドルですし。………吸血鬼ですけど。


 因みに、我が家も通りすぎて山を目指せば、広い敷地を持つ大きなお屋敷に辿り着きます。お屋敷に住むのは若い夫妻と使用人たちですが………そこは最早魔窟中の魔窟です。誰一人まともな「人間」は居ないかと思われます。お屋敷のご主人からしてキラキラしい美貌を誇る人外です。

 アレに比べるなら、兄妹は平凡と呼んで良いでしょう。

 単に美貌の問題ならば、兄妹はお屋敷の使用人レベルです。しかし、兄の垂れ流す艶と妹のカリスマ、兄妹二人の求心力を加味するならば、使用人よりも主人側と列べて語られるでしょう。とはいえ屋敷の若い夫妻は、奥さんのほうはそうでも無いですが、主人のほうは半端無いので列べるのは厳しいかもですがね。

 ご近所の人外率が半端無いと云いましたが、彼はハッキリキッパリ「ラスボス」レベルです。不動のナンバーワン人外ですよ。


 但し、どんな人外かは知りません。


 何でしょうね。昔はね……思ってましたよ。人外たちの一部の種族を知ってしまう迄はね。

 私の妄想では無いのかと………。


 しかし、人外だと思った相手を見ていれば、彼らは吸血鬼だったり食人鬼だったりする訳ですよ。種族を知ればソレなりに私も驚きますが、然程では無いのは「人」で「無い」事は知っているからですね。

 お屋敷のラスボスは何でしょうね?あのレベルの人外は本当に見た事が有りません。お向かいの吸血鬼のご主人さまを、以前「見た」事が有りますが、その「人」はぶっちゃけ超が付く化けも……もとい人外でしたが、彼より凄まじいとか何でしょう。その割に然して恐ろしいとも思えないし、やたらフレンドリーですが。

 吸血鬼のご主人も意味深にフレンドリーでしたがね。

 非常に迷惑なのですが。いつも思いますが、仲間みたいに見るのはやめて欲しいです。


「………こんにちは。」


 家の前で、また明日…と、友人に云おうとしたところで、お向かいさんとかち合いました。吸血鬼らしく遅くにご出勤ですね。ですが、吸血鬼ならついでに暗くなる迄お待ちになったらヨロシイと思います。クラスメイトも夜間吸血鬼学校に通うといいよ。そんな学校が有るかどうかは別として……。


「やあ。こんにちは。今帰り?」

「こんにちは。お出掛けですか?」


 ご近所のアイドルが、その他大勢に向ける作り笑顔を捨てて、親しみを込めて私を見つめました。本当に本当に迷惑だと思います。

 私を仲間扱いする人外にはウンザリなのです。

 友人が誤爆されて、憧れに満ちた眼差しで嬉しそうに吸血鬼に話し掛けると、冷ややかな眼差しで胡散臭い笑みを向ける人外。

 ご近所のアイドルは人間嫌いですよね。

 お隣の深雪ちゃんと私以外に、彼が優しい表情を向ける姿を見た事が有りません。


 胡散臭い笑顔は、しかしご近所フィルターで、もしくは普通の人の眸には標準装備のフィルターで、優しいお兄ちゃん風味を醸し出すらしいです。

 友人を筆頭に皆が云うから、多分間違い無いのでしょう。

 この冷ややかな視線を浴びて、どうして優しいお兄ちゃんに見えるのか、理解に苦しみます。

 しかし、フィルターは所詮フィルターに過ぎないのか。

 私や深雪ちゃんに向ける笑顔を垣間見た人は、大抵こう云います。


「今日のお兄ちゃんはいつも以上に素敵だった。」


 うん。単に本当に笑っただけだけどね。


 ご近所のアイドルが「仕事なんだ」と告げて、足早に去った後、お向かいの「お隣さん」の玄関が開いた。

 噂をすれば影がさすと云うが、深雪ちゃんである。


「あれ?こんちゃあ。今帰り?」

「惜しい!今お兄ちゃん出掛けたとこよ!」

「マジで!?」


 深雪ちゃんもご多分に洩れず、ご近所のアイドルに夢中です。私はまたしても家に入る機会を逸しました。

 二人のアイドル談義を生温く見守りました。

 とはいえ、二人の気持ちには温度差が有ります。深雪ちゃんはアイドル吸血鬼に「恋」をしていますが、千夜ちゃんは憧れているだけです。二人の温度差はそのまま、人外の二人に向ける温度差と比例しているので問題は無いですね。逆だったら大変です。

 今のままでも深雪ちゃんは大変のような気もしますが、一応両想いですし………見て見ぬふりが一番です。馬に蹴られたくは有りません。

 一頻りアイドルを語った様子を見て、私は声を掛けました。


「深雪ちゃんは行かなくて良いの?」


 恐らく道場に行くつもりで出て来た筈です。頃合いと云うものでしょう。

 案の定、少し周章てて、深雪ちゃんは小走りに駆けて行きました。


 多少物足りない様子では有りますが、同調してくれる相手とアイドルを語れて満足したのか、千夜ちゃんも大人しく帰ってくれました。


 やれやれです。


 不意に姿を顕したエロ影が足下に擦り寄るのを避けつつ、私はやっと自宅に入る事が出来ました。




 はい?

 何故エロ影が此処に居るか……ですか?





 何故でしょうねえ。

 私こそ訊きたいですよ。


 エロ影が学校以外でも顕れるようになってから、ずっと疑問に思っています。



☆☆☆



ラスボスやっと出ましたが、チラついただけと云うww

と云うか、「現在」は彼をラスボスと思っている彼女です。紅い闇との邂逅前ですので。

彼は散歩が趣味ですから、色々と人外と絡む予定です。彼の親友も大概が人外じみてますし、出しても良いかなと悩みます。裏設定に収めとくべきでしょうか……その親友とこの話の主人公はある意味で「同種」なので、その辺りを会話で出すか本人出すかなのですが。

一見?「兄」と同っぽいですけどね「親友」。まあソレも違いませんが。



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