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遺骨砕きは回収屋の中では比較的には楽な部類の仕事だが、碌な人間が希少種となる街においても嫌悪感や罪悪感を感じる者は意外と多い。その辺を問題無く行えて、体力のある若いアオイはカマから重宝されており他の回収員よりも気持ち程度だが給料は多めに貰えている。
「じゃあこれ鈴木から引いた分の給料ね。後でまとめるのも面倒だから今のうちに渡しちゃうわ。今日は私の呑みに付き合わなくて良いから、好きな所行ってきな」
儀式用の酒が回ったのか、顔を赤くして力なく座っている鈴木を横目にカマは金庫から紙幣を少し取り出した。
名前すらないゴミ箱の様な街だが、不思議と紙幣や硬貨はきちんとした状態で出回っており仕入れに日帰りで行く人間もいる程には経済の機能は維持できている。
「良いんですか? 僕は行かなくて」
「ええ良いわよ。ホントは連れていくつもりだったけど、たまには遊んできなさいな。もう直ぐ15歳なんだから、ちょっと早めのプレゼントよ♪」
「ありがとうございます」
アオイは礼を言うと封筒を二つに折りポケットに押し込む。スリや恐喝で生計を立てる者がいる為に、あからさまに金銭を持っている雰囲気を出さないのがこの街で覚えさせられるマナーとなる。
「おら鈴木さっさと立ちな! 私がキッチリこの街の先生してあげるんだから、シャキシャキしなさいな」
「ウっ...すみません...」
本日何度目の拳か分からない鈴木など気にせず、アオイは焼却場を後にした。
「——今日は上等な酒がアルよー!!」
「——良い女の子、可愛い女の子、選び放題だぜー!」
「——あんた出禁になっただろ! 早く失せなっぁ!!」
焼却場から約5分の所に位置する繫華街。
アオイの住居には繁華街を通るのが一番近く、慣れた身となっては一番安全なルートでもある。
「アオ坊! 今日は煮物が良いぞ」
「今日は遠慮しとくよ。まだ買い置きあるから」
「そうか。なら親父さんの酒でも買うか?」
「ああそれは買うよ。いつもの安酒でお願い」
擦れた看板からは何屋か読み取れない店で、アオイはいつもの様に店で一番安い酒を買う。自分用じゃない酒なのもあり、物にはこだわらない。アオイの事情を知っているだけに、冗談めかしに店主はいつも笑う。
「次はもっと良い酒買っていけよ!」
「あんなくず親父にはこれですら勿体ないよ。今度は飯も買うから」
「あいょー!!」
受け取った酒瓶は非力なアオイには少し荷が重いが、これを買わずに帰れば最低の結末を迎えるのは明白なのもあり耐える。
(荷車欲しいな)
回収屋で使っているリヤカー未満のオンボロでも良いからと、一度だけ父親に相談したことがある。あるが、幼いアオイが血反吐を吐いて4日間ほど寝込む生活をする羽目になった為諦めてた。
「——お兄ちゃんこの髪飾りはどうだい? 今ならコッチもオマケするよ」
「——姉ちゃんにモテるならこの勝負服が一番!! 外から買ってきたばかりの新品!!」
繁華街の中腹には個人の出店が並ぶエリアが広がっている。
装飾や衣服、香水などの街の外から輸入した品々を売り込む者。
手作りしたものを広げて、人の往来を見守る作家。
その場で作品を作る画家くずれの住民。
「今日は輸入組が少ないな」
買い出しで輸入組が少ないタイミング。
アオイの視線は自然と画家くずれ達へと向く。白髪まじりの爺、髭のたくましい老け顔の男、色売りにはまだ未熟な子供たち。
普段なら見ることの無いエリアだが、輸入組がいない時だけは普段は物売りをしない少年少女たちが各々の事情で出店を開いている。
「あぁ......今日も元気そうだ......」
見つけた少女の顔を見て、アオイの表情は和らぐ。
不快な熱や人混み、濁った生活感で溢れる街の中で最も澄んでいて、動かなければ人形と見間違えるほどに美しい少女。
売りにしているのは絵。
似顔絵から、客の不確かな記憶を寄る辺にして言われた風景などを描くため新規から常連まで、その雰囲気と合わせて老若男女問わずに人気の画家だ。




