EP 7
悪意の接近と、12000ポイントの防衛戦術
「ヒャッハー! 燃やせ、奪え! 抵抗する者は殺せ!」
ポポロ村まであと数キロの森の中。
悪徳代官が放った私兵の隊長は、下卑た笑いを浮かべていた。
「無能共を追放したド田舎が、急に豊かな作物を育ててるだと?」
「代官様も笑いが止まらねぇだろうな。全部没収して、奴らは奴隷落ちだ!」
彼らは剣と槍で武装し、微弱ながらも『闘気』を纏っていた。
異世界における暴力の絶対基準。
魔法を持たない村人など、彼らにとっては麦の穂を刈るようなものだった。
◆ ◆ ◆
一方、ポポロ村の広場。
「輝夜様、逃げてください! 奴らは闘気使いのゴロツキです!」
「武器を持たない輝夜様たちが、勝てる相手じゃありません!」
村長たちが泣きながら訴えかけてくる。
だが、私はタブレット型の電子ボードを見つめたまま、首を横に振った。
「逃げないわ。ここには、ようやく芽吹いた希望があるもの」
「それに……武器がないって? 誰がそんなこと言ったのさ」
義正が電子ボードを指で弾く。
「現在の善行ポイント残高、12000pt」
「さあ、地球ショッピングの時間だ。信長、欲しいものを言え」
義正の言葉に、信長が獰猛な笑みを浮かべた。
「おう。まずは『暗視ゴーグル』じゃ。奴らに夜戦の恐怖を教えてやる」
「了解。単眼式ナイトビジョン、カートに追加。次は?」
「『防刃・防弾タクティカルベスト』。闘気がなんぼのもんか知らんが、現代のケブラー繊維をなめるなよ」
「追加。トラップはどうする?」
「『スタングレネード(音響閃光弾)』と、『高出力レーザーポインター』付きの特殊警棒じゃ」
「OK。蘭、これでポイント足りるか?」
「余裕だよ。全部で3000pt。残り9000ptは念のための予備に取っておくね」
蘭が『購入確定』のボタンを押す。
光と共に、見慣れた地球の黒々とした特殊部隊用の装備一式が、村の広場に出現した。
「な、なんだその真っ黒な服は……?」
「武器……なのか? 剣でも槍でもないが……」
村人たちがざわめく中、信長は黙々と装備を身につけていく。
漆黒のタクティカルベスト。ベルトにはスタングレネード。
そして、右目には緑色のレンズが不気味に光る暗視ゴーグル。
完全に、近代戦のスペシャリストの姿だった。
「蘭ちゃん、周辺の監視は?」
「上空のドローンから敵の座標を信長のゴーグルにリンクさせてる。誤差ゼロ。完全に丸見えだよ」
私は、完全武装を終えた信長の前に立った。
「信長君。村の畑と、みんなの家。守ってくれる?」
「当たり前じゃ。誰にモノを言っとるんか」
信長は特殊警棒をカシャッと振り出し、夜の森へと向き直った。
「おどれら、お遊戯の時間は終わりじゃ」
「練馬の狂犬の恐ろしさ、骨の髄まで叩き込んじゃる」
村人たちが固唾を飲んで見守る中、信長は一人で、数十人の敵が迫る夜の森へと消えていった。
異世界のゴロツキと、現代兵器を装備した自衛隊レンジャー。
結果を見るまでもない、一方的な蹂虤戦の幕が上がった。




