表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【日本最強の裏方4人組、無能と捨てられた先で『地球ショッピング』を解禁する~善行を積むほど現代兵器も肥料も買い放題。  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/78

EP 8

悪魔の算盤(独占禁止法違反)

キャルルの『超電光流星脚』によって、ポポロ村の郊外へと叩き落とされた青龍。

土煙が晴れたクレーターの底で、粉々に砕けたサファイアの装甲が不気味な青い光を放ち、ひび割れた巨体を強引に繋ぎ合わせようとしていた。

『……深刻な物理的損傷。自己修復リカバリープロセスを起動。特異点排除のための「絶対規律」を再構築する……』

青龍のシステムは、まだ死んでいなかった。

神の法とは「無謬(絶対に間違えない)」であること。どれだけ物理的に破壊されようと、彼らの根本である『ルール』が存在する限り、無限に再生を繰り返す。

だが、地下指令室のモニター越しにそれを見下ろす義正の目には、哀れみすら浮かんでいた。

口の中でガリッと砕けたコーヒーキャンディの、ほろ苦く甘い味が広がる。

義正は、セブンスターの紫煙をゆっくりと吐き出した。

「神様。あんたのルールに『市場開放』を付け加えてやるよ」

義正の合図と共に、隣でキーボードを叩いていた蘭が、エンターキーをスパーンッと勢いよく弾いた。

『侵入完了! 青龍の管理プログラム(OS)に、義正さん特製・《自由市場フリーマーケットウイルス》、注入ッス!!』

クレーターの底で再生を始めていた青龍の巨体が、ビクンッと不自然に痙攣した。

修復のための青い光が、突如として赤や緑の乱高下するノイズ(まるで暴落する株価チャートのような光)へと変色していく。

『……警告……未定義の概念【自由競争】……【規制緩和】を検知。……法の執行に、他者との【競合】が発生……エラー……エラー!!』

青龍の無機質な声が、初めてパニックを起こしたように歪み、裏返る。

「……何が起きたんじゃ?」

地上で息を整えていた信長が、苦しみもがく青龍を見て眉をひそめる。

通信機越しに、義正の冷笑が響いた。

「簡単なことだ。独占してる神様はな、“競争”を知らねぇ」

義正は、手元の端末で青龍のシステムが自壊していく数値を眺めながら、かつて5大商社で培った『悪魔の算盤』を弾き鳴らす。

「あのデカブツは今まで、自分だけが『唯一の正しい法律』だと思い上がっていた。完全なる【独占市場】だ。だが、そこに蘭が『他にも無数のルール(価値観)が存在し、それぞれが自由に競争している』という市場経済のプログラムをぶち込んだ」

「……競争?」

キャルルが不思議そうに首を傾げる。

「あぁ。今まで『俺がルールだ!』と一存で決めていた神様の脳みそ(CPU)に、『本当にその法は一番価値があるのか? 他のルールと競り合って、入札オークションで決めろ』と強制させたんだよ」

神のAIは完璧がゆえに、その論理矛盾に耐えられなかった。

一つの行動を起こすたびに、「自分の法の価値」と「架空の法の価値」を比較し、終わりのない価格競争(計算)を強いられる。

『……執行権の入札を開始……価値の暴落……インフレーションを検知……我が規律の市場価値が……ゼロ……ゼロ……!!』

「お前みたいな『独占禁止法違反』のシステムが、自由競争の荒波に放り込まれたらどうなるか。……答えは簡単だ」

義正が、冷たく言い放つ。

倒産パンクするに決まってんだろ」

『ガ、アァァァァァァァァァッ!!!!!』

青龍の内部から、致命的な爆発音が連続して響き渡った。

絶対的な「規律」という名の足場を失った神のシステムは、論理の無限ループに耐えきれず、自らのCPUを焼き切って完全にフリーズしたのだ。

装甲の修復は完全に停止し、巨体は力なく地に伏せる。

そして、その粉砕されたサファイアの頭部の奥――神の命そのものである『メインコア』が、一切の防御を持たない無防備な状態で、夜風の中に露出した。

「……見事な手腕ハッキングね、義正君、蘭ちゃん」

霞が関の月である輝夜が、インカム越しに最大の賛辞を送る。

「仕上げの時間は稼いだぜ。……あとは頼んだぞ、処刑人」

義正がセブンスターを灰皿に押し付ける。

その言葉に呼応するように。

強化アーマーをパージし、満身創痍となった龍魔呂が、静かにクレーターのふちへと歩み出た。

ユウの幻影を見せられた絶望の底から、キャルルの温もりによって人間の心を取り戻した男。

彼の右手に握られた『Korth NXS』の銃口が、完全に無防備となった青龍のコアへと向けられる。

「……あぁ。俺の仕事だ」

龍魔呂の瞳には、DEATH4の空虚な殺気はない。

因果律を撃ち抜き、自らの地獄を終わらせるための、静かで、重く、絶対的な『意志』だけが宿っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ