EP 5
最強の朝食と、内政のプロたち
「……よし、ショッピング・カート、確定!」
蘭が空中の電子ボードを叩くと、眩い光と共に村の広場に大量の荷物が現れた。
「ヒィッ!? な、なんだこれは……!?」
「空から箱が……!」
腰を抜かす村人たちを尻目に、私たちはテキパキと「物資」を運び出す。
「義正、在庫チェック。蘭は調理器具の設置、信長君は――」
「わかっとる、飯炊きじゃろうが! 任せとけ!」
信長が「キャンプ用高火力バーナー」に火を点ける。
異世界の住人が見たこともない、青い炎が勢いよく吹き出した。
「さあ、みんな! 温かいうちに食べて!」
私が呼びかけると、おずおずと村人たちが集まってきた。
彼らの前に並べられたのは、地球の英知が詰まった「最強の朝食」だ。
「……なんだ、この白い粒は? 宝石か?」
「これは『お米』っていうの。さあ、どうぞ」
村長が震える手で、炊きたての「サシヒカリ」を口に運ぶ。
「……っ!! あ、甘い……! それに、この茶色のスープはなんだ!? 体の芯から力が湧いてくるぞ!」
「それは『豚汁』。信長君特製よ」
信長が巨大な鍋をお玉でかき回しながら、ニヤリと笑う。
「隠し味に『100均のチューブにんにく』をぶち込んどるけぇの。闘気使いの端くれなら、これで元気にならん訳にゃあいかん!」
村人たちは、むさぼるように食べ始めた。
ただの食料じゃない。
「味の素」と「出汁」の暴力、そして現代日本の圧倒的なカロリーだ。
「おいしい……、おいしいよぉ……!」
「神様……、神様が来てくださった……!」
あちこちで啜り泣く声が聞こえる。
『ピロンッ!』
『ピロンッ!』
『累計:5500pt 獲得!』
「うわっ、一気に跳ね上がったぞ!」
義正が電子ボードの数字を見て、鼻血が出そうな顔をしている。
「感謝の念がポイントに変換されてるんだ。……輝夜、これはいける。この『善行ポイント』を通貨にすれば、この村を数ヶ月で近代化できるよ」
「本当? 義正君」
「ああ。次は『高性能肥料』と『魔導を通さない防虫ネット』。それから、村の衛生状態を改善するための『石鹸』と『簡易トイレ』をショッピングする」
商社のエースだった義正の頭脳が、爆速で村の再建プランを組み立てていく。
「蘭ちゃん、技術的なサポートは?」
「任せて。電子ボードの通信機能をハックして、村全体の『魔力マッピング』を終わらせたよ。どこに井戸を掘ればいいか、どこに防壁を作ればいいか、全部最適化済み」
「……よし!」
私は、空になった器を持って微笑む村人たちを見た。
追放された時はどうなることかと思ったけれど。
「信長君、警備の方は大丈夫?」
「おう。ガチャで引いた『暗視スコープ』と『赤外線センサー』を村の周囲にバラ撒いた。ネズミ一匹通さんけぇ、安心して寝にゃあ」
日本が誇る、政策・技術・軍事・経済のトップエリート。
私たちが本気で「村おこし」を始めたら、どうなるか。
「さあ、次は村の『戸籍作成』と『納税システム』の構築ね。みんな、準備はいい?」
「「「「応!!」」」」
辺境のゴミ溜めと呼ばれたポポロ村が、急速に「異世界の異物」へと進化し始めた瞬間だった。




