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【日本最強の裏方4人組、無能と捨てられた先で『地球ショッピング』を解禁する~善行を積むほど現代兵器も肥料も買い放題。  作者: 月神世一


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EP 6

黄金の雨と、見えざる首輪

夜明け前のルナミス帝国、辺境のスラム街。

静まり返った上空に、突如として無数の低いプロペラ音が鳴り響いた。

「な、なんだ……!? また帝国の徴税ドローンか!?」

路地裏で寒さに震えていた貧民たちが、怯えながら空を見上げる。

だが、雲の隙間から現れた漆黒のドローン群が落としたのは、催涙ガスでも爆撃でもなかった。

チャリン、チャリン、バラバラバラッ……!!

「え……?」

「金だ……! 金が降ってきたぞォォォッ!!」

暗いスラムの路地に、眩い光を放つ硬貨の雨が降り注いだ。

ポポロ・ゴールド(PG)。

偽造不可能な地球のテクノロジーとブロックチェーン技術が刻み込まれた、物理的な『絶対価値』。

昨日、パン屋の前で絶望に泣き崩れていた母親の足元にも、銀色に輝くPGが数枚転がり落ちた。

母親は震える手でそれを拾い上げ、泥だらけの硬貨を胸に抱きしめて号泣した。

「ああ……神様……ッ!」

   ◆ ◆ ◆

翌朝。スラムの光景は、劇的なパラダイムシフト(価値観の崩壊)を迎えていた。

「おい、帝国紙幣なんざもう受け取れねぇよ! ケツを拭く紙にもなりゃしねぇ!」

昨日店を畳みかけていたパン屋の主人が、大声で怒鳴っている。

帝国が発行する法定通貨は、義正たちの空売りによって一夜にして暴落し、文字通りただの紙屑と化していた。

「じゃ、じゃあこれでどうだ……!」

母親が、昨夜拾った『PGの銀貨』を差し出す。

主人はその銀貨を受け取ると、太陽の光にかざし、カチンと歯を立てた。確かな重量感と、絶対に偽造できない精巧な輝き。

「……ポポロ村のゴールドだな。これなら文句ねぇ。ほら、焼き立てのパンだ。お釣りはPGの銅貨で返すぜ」

「ありがとう……ありがとうございます……ッ!」

母親は涙を流しながらパンを受け取り、足元で待つ痩せこけた子供にちぎって与えた。

「ママ、おいしい! おいしいよぉ!」と笑う子供の顔。

街のあちこちで、PGを手にした人々が食料を買い、笑顔を取り戻していく。

その光景を、ポポロ村の地下司令室のメインモニターが映し出していた。

『……ボス! 見たッスか!? 子供たちがパン食って笑ってるッス! ボスの仲間、マジで神様ッスね!!』

通信機越しに、別次元のガジェットが興奮した声でまくしたてる。

龍魔呂は、モニターの中の子供たちの笑顔を見つめたまま、小さく、本当に小さく安堵の息を吐いた。

「……あぁ」

彼を縛り付けていたトラウマの鎖が、また一つ解けていく。

だが。

その心温まる映像の隣のモニターで、冷徹な『数字』を睨んでいた義正が、口に含んだコーヒーキャンディをガリッと噛み砕いた。

「喜ぶのは勝手だがな、裏の現実リアルも見とけよ」

義正がキーボードを叩くと、ルナミスの経済相場と、人々の声(音声データ)が拾い上げられた。

『ポポロ村の方角には足向けて寝られねぇな……』

『あぁ。でもよ、俺たち、もうPGこれなしじゃ明日のパンも買えねぇんだ』

『もしポポロ村がPGの支給を止めたら……俺たち、今度こそ全員飢え死にするしかねぇ。絶対に逆らえねぇよ……』

「…………」

龍魔呂の顔から、安堵の色が消え失せる。

「理解したか。これが、輝夜の描いた『政策』の正体だ」

義正が、振り返って龍魔呂と輝夜を見た。

「パンを与えて命を救うことで、奴らの首に見えない『依存の鎖』を巻き付けた。帝国のスラムも、商店も、今や完全にポポロ村の経済圏(PG)に支配されたんだ。奴らはもう、俺たちに生殺与奪の権を握られた家畜と同じだ」

圧倒的な善意と救済が、最も残酷で完璧な支配体制を完成させた。

輝夜は、何も言い返さなかった。

ただ、自分の両手を見つめ、ギュッと強く握りしめる。

手が、泥で汚れていく感覚。霞が関で嫌というほど味わってきた、大を救うために自由を奪う『為政者の業』。

(……ごめんなさい。でも、私は)

輝夜の心の中に渦巻く罪悪感。

だが、龍魔呂は輝夜の震える手を、不器用な大きな手でそっと包み込んだ。

「……龍魔呂さん?」

「お前一人に、泥は被らせない。……俺も、共犯だ」

彼の静かな、だが確かな決意の言葉に、輝夜は小さく息を呑み、そして弱々しく、けれど嬉しそうに微笑んだ。

「……甘いねぇ。虫歯になりそうだ」

義正が呆れたように肩をすくめた、その時。

『ピーッ! ピーッ! 警告アラート!』

蘭の叩いていたキーボードが、突如としてけたたましいエラー音を鳴らした。

「義正! ルナミスの首都から、ポポロ村に向けて複数の『非正規部隊』が高速で接近中! この動き、正規軍じゃない……!」

「……全財産をスッたダッジ伯爵と悪徳貴族どもの、最後の悪あがきか」

義正の目が、スッと細められた。

富も権力も、法定通貨の価値すらも失った豚どもが最後に選ぶ手段。

それは、自分たちを破滅させたポポロ村のシステム(インフラ)を、物理的な暴力で完全に破壊すること。

「蘭ちゃん、敵の規模は!?」輝夜が叫ぶ。

「数はおよそ50! 全員が対魔力ステルス迷彩を装備してる。……間違いなく、帝国裏社会のプロの暗殺部隊ヒットマンだよ!」

「チッ、負け犬どもが逆ギレしよってからに……」

ソファから跳ね起きた信長が、首の骨をバキバキと鳴らしながら、愛銃のスライドを引いた。

その隣で、龍魔呂が赤いジャケットを翻し、Korthのシリンダーを無音で回転させる。

「大将」

信長が、獰猛な狂犬の笑みを浮かべて龍魔呂を見た。

「さっきは頭にチャカ突きつけてすまんかったのう。……詫び代わりに、あのゴミどもの首、どっちが多く獲れるか競争でもするか?」

「……下らない。だが」

龍魔呂の瞳に、再び一切の感情を持たない『処刑人』の冷気が宿る。

「輝夜のここを荒らす害獣は、一匹残らず駆除する」

経済の知略戦フェーズは終わった。

ポポロ村の夜の闇に、狂犬と処刑人が放たれる。血と火薬の祝祭が、幕を開けようとしていた。

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