表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【日本最強の裏方4人組、無能と捨てられた先で『地球ショッピング』を解禁する~善行を積むほど現代兵器も肥料も買い放題。  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/47

EP 10

もう、地獄にはいない

圧倒的な破壊の嵐が吹き荒れる中、彼女の歩みだけが、まるでそこだけ切り取られたように静かだった。

「……輝夜! 来るな、逃げろッ!!」

宙に吊るし上げられ、首の骨を軋ませながら信長が血を吐くように叫ぶ。

義正もシールドの出力を最大にして彼女をかばおうとするが、システムがエラー音を吐き出して火花を散らす。

だが、輝夜は立ち止まらなかった。

漆黒のアーマーから立ち上る致死量の『赤黒い闘気』。一般人であれば、近づくだけで精神を破壊され、呼吸すらできなくなるほどの巨大な殺意の渦。

輝夜の肌がヒリヒリと焼けつき、足がガクガクと震える。

それでも彼女は、一切の逃げ腰を見せることなく、DEATH4の真正面へと真っ直ぐに歩み寄った。

『ギ……、ギギ……』

漆黒のバイザーの奥で、感情を失った龍魔呂の瞳が輝夜を捉える。

無慈悲なシステムのように、彼の右腕が機械的に動き、愛銃『Korth』の冷たい銃口が、輝夜の眉間へとピタリと押し当てられた。

「……ころす」

引き金に指がかかる。

あと一ミリ指が動けば、彼女の頭は吹き飛ぶ。

だが、銃口を突きつけられた輝夜は、怯えるどころか、泣きそうなほど優しい微笑みを浮かべた。

「……うん。でもその前に、少しだけお休みしましょ」

輝夜は、自分に銃口を突きつける漆黒のアーマーに両手を回し、その冷たい鋼の胸を、力いっぱい抱きしめたのだ。

『――――ッ!?』

「痛かったわね。一人で、ずっと寂しかったわね」

輝夜の体温が、鋼鉄の装甲を越えて、内側で凍えている『無力な少年』へと届いていく。

「大丈夫。あなたはもう、あの暗くて冷たいゴミ捨て場にはいないわ。……一緒に帰ろう、龍魔呂さん」

その言葉は、呪いのように彼を縛り付けていた鎖を断ち切る、絶対的な赦しの光だった。

『ドクンッ……!』

龍魔呂の右手で凶悪な光を放っていた『鬼王の指輪』に、ピキリと亀裂が走る。

主の殺意トリガーが消失したことを悟ったかのように、赤黒い闘気がふっと霧散した。

同時に、漆黒のアーマーが『プシュゥゥゥッ』と排気音を鳴らして強制パージされ、パーツが次々と剥がれ落ちていく。

「がはッ、ゲホッ、ゴホッ……!」

拘束を解かれた信長が地面に落下し、激しくむせ返りながら空気を吸い込む。

パージされたアーマーの中心。

そこには、力なく立ち尽くす龍魔呂の姿があった。

虚ろだった彼の瞳に、ゆっくりと理性の光が戻ってくる。そして、彼自身も気づかないうちに、その頬を大粒の涙が伝い落ちていた。

「……輝夜」

彼が、震える声でその名を呼んだ瞬間。

ゼロ距離で致死量の闘気を浴び続けていた輝夜の体から、ふっと力が抜け、糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。

「っ……!」

龍魔呂が咄嗟に手を伸ばし、その細い体を抱きとめる。

かすかに触れる、温かい呼吸。

気絶した彼女の顔には、彼を救い出せたことへの、安堵にも似た静かな表情が浮かんでいた。

銃声も、爆音も消え去った。

夜の荒野に、深い静寂が訪れる。

空を覆っていた分厚い雲が晴れ、美しい満月が静かに姿を現した。

青白い月明かりが、まるで彼女だけを選ぶように、スポットライトのように優しく照らし出している。

龍魔呂は、腕の中で眠る輝夜を見つめたまま、血の滲む手でポケットからマルボロの赤を取り出した。

カチリ、とライターの火をつけ、深く紫煙を吸い込む。

「……面倒な女だ」

それは、彼が生まれて初めて口にした、自分自身の感情を誤魔化すための、極上の照れ隠しだった。

『カチッ』

隣で、別のジッポライターが鳴る。

ボロボロになったスーツ姿の義正が、自分の赤マルに火をつけながら歩み寄ってきた。

彼は無言でもう一本のタバコを取り出すと、首をさすりながら立ち上がった信長へと放り投げる。

「ああ……俺達の算盤を狂わせた、月だからな」

義正が、呆れたように、しかし最高に愛おしいものを語るような声で笑う。

受け取ったタバコを咥え、義正の火を借りた信長が、深く煙を吐き出して肩をすくめた。

「おどれ……逃げ場が無くなったのう」

狂犬の牙を隠し、信長が龍魔呂へと歓迎の言葉を投げる。

最強の武人と、最強の資本家。そして、最強の処刑人。

同じ地獄を知る男たちが、たった一人の「月」の引力に捕らわれ、完全に一つのチームとなった瞬間だった。

龍魔呂は、何も言わなかった。

ただ、三筋の紫煙が月夜に昇っていく中、自分の腕の中で静かに眠る輝夜の顔を、いつまでも大切そうに見下ろしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ