表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【日本最強の裏方4人組、無能と捨てられた先で『地球ショッピング』を解禁する~善行を積むほど現代兵器も肥料も買い放題。  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/47

EP 4

血を吐く兎と、狂った算盤

土と汗、そして酷く鉄錆びた血の匂いが、秋の冷たい風に混じっていた。

「っ……はぁ、はぁ……次、次は……どこですか……」

キャルルの視界は、すでに真っ赤に明滅していた。

膝が震え、呼吸をするたびに肺がヤスリで削られるような激痛が走る。

それでも、彼女は血に汚れた手を伸ばし続けた。

(私がやらなきゃ。村長として、強い力を持つ者として……!)

極限状態を知るが故の、強迫観念にも似た自己犠牲。

彼女は自分の命をすり減らし、他者のメーターを無理やり満タンにしていく。

それが、彼女にできる唯一の『無償の愛』だった。

呻き声を上げる次の難民に手をかざそうとした、その時。

『ガシッ!』

強靭な力で、手首を掴まれた。

「……そこまでだ、ウサギ」

見上げると、力武義正が立っていた。

普段の飄々とした笑みは完全に消え失せている。

その瞳の奥には、氷のように冷たく、そして業火のように熱い『怒り』が渦巻いていた。

「放して……っ! まだ、苦しんでる人が……!」

「自分の血で他人の渇きを癒やすな。そんな三流の取引トレード、俺が許さねぇ」

義正はキャルルの細い腕を強引に引き寄せた。

彼にとって、この世のすべては等価交換だ。

だが、目の前の少女は、自分への見返りを一切求めず、ただ命を削って他者を救っている。

損得勘定の化身である義正にとって、その行為はあまりにも尊く、あまりにも痛々しく、そして――ひどく彼の『算盤』を狂わせるのだ。

無償の愛を向けられると、そいつのために算盤を弾き狂いたくなる。

それが、力武義正という男のごうだった。

義正は、空いた手でポケットから飴玉を取り出し、口に放り込んだ。

『ガリィィィッ!!!!』

飴玉を噛み砕く、残酷なまでの破砕音。

それが、商社のトップエースが『損得リミッター』を完全に投げ捨てた合図だった。

「蘭。今あるポイント、全部吐き出せ」

義正の低い声が、戦場のような難民キャンプに響き渡る。

「えっ? 全部って、今15万ポイントくらいあるよ? これ、国との取引に使う大事な……」

「うるせぇ。全部だと言ったんだ。地球の『最新型総合医療プラント』と『全自動医療ドローン群』を今すぐここに落とせ!」

その命令に、蘭も信長も、輝夜でさえも息を呑んだ。

ポイントの枯渇は、要塞の維持に関わる致命的なリスクだ。

だが、義正の目を見た蘭は、小さく笑ってタブレットを叩いた。

「……了解。義正がここまでキレるの、初めて見たかも。ポイント、全開放オールインするよ!」

『ピロロロロロロロロロンッ!!!!』

システムが悲鳴を上げ、ポイント残高が一瞬にしてゼロへと暴落する。

その代償として、上空に巨大な光のリングが出現した。

ズズズズズズズズッ!!!!

地鳴りと共に、圧倒的な質量の『白亜の巨大施設』がポポロ村の敷地に降臨した。

無菌室、最新のオペ室、そして何万という特効薬を自動生成・投与する医療ドローンたちが、蜂の群れのように飛び立っていく。

「さあ行け! 難民の端から端まで、一滴残らず治療して回れ!!」

義正の怒号と共に、医療ドローンたちが難民たちに特効薬のミストを散布し始める。

魔法すら凌駕する、現代医療の飽和攻撃。

キャルルが血を吐いて救おうとした命が、次々と、安全に、そして圧倒的な速度で救われていく。

「あ……あぁ……」

その光景を見た瞬間、キャルルを支えていた緊張の糸がプツリと切れた。

限界を超えていた彼女の体が、糸を切られた操り人形のように崩れ落ちる。

だが、冷たい泥に叩きつけられる前に。

義正の腕が、その小さな体をしっかりと抱き留めていた。

「……バカウサギ。お前はもう、誰かのために血を流さなくていい」

耳元で聞こえたその声は、ひどく不器用で、ひどく優しかった。

タバコと、甘い飴玉の匂い。

キャルルの瞳から大粒の涙が溢れ出し、彼女は義正のスーツの胸ぐらをぎゅっと掴みながら、安心したように深い眠りへと落ちていった。

無償の愛の連鎖。

冷徹な商社マンの算盤は、一人のポンコツ村長のために、美しく完全にへし折られたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ