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【日本最強の裏方4人組、無能と捨てられた先で『地球ショッピング』を解禁する~善行を積むほど現代兵器も肥料も買い放題。  作者: 月神世一


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EP 9

鋼鉄の咆哮と、完全なる降伏

森の静寂が、これほどまでに耳障りなことはなかった。

代官の私兵隊長であるガイルは、荒い息を吐きながら周囲の闇を睨みつけていた。

胃袋の奥底が氷を飲み込んだように冷え切り、額から噴き出した脂汗が目に入って視界を滲ませる。

「……あ、あぐっ」

すぐ隣にいた部下の喉から、空気が漏れるような音がした。

振り返るよりも早く、部下の巨体が糸の切れた操り人形のように泥の上へ崩れ落ちる。

「ヒッ……! ま、またやられた!」

「どこだ!? どこから攻撃してきやがる!!」

生き残った十人の部下たちは、背中を合わせ、暗闇に向かって無茶苦茶に剣を振り回している。

ガイルは柄を握る自らの手が、カタカタと痙攣していることに気づいた。

闘気を最大まで高めているというのに、指先からは急速に熱が奪われていく。

『カサッ』

落ち葉を踏む、微かな音。

ガイルが弾かれたように振り向いた先。

漆黒の森の奥から、ふわりと『二つの緑色の光』が浮かび上がった。

「ヒィィッ……!」

ガイルは肺の空気をすべて吐き出し、無様に後ずさった。

木の根に足を取られ、泥水の中に尻餅をつく。

暗闇に溶け込むような真っ黒な装束。顔の半分を覆う、不気味な三つ目の緑のレンズ。

それは、彼らの知るいかなる魔獣とも違う、純粋な『死』の具現だった。

「……おどれら、随分と威勢がええのう」

緑の悪魔――信長が、特殊警棒を肩でトントンと叩きながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。

ガイルは泥まみれになりながら剣を構え直した。

「ふ、ふざけるな! 俺の闘気は鋼をも両断するんだ! 死ねぇぇぇっ!!」

恐怖を振り払うための、渾身の唐竹割り。

だが、緑の悪魔は避けることすらしない。

『ガキィィィンッ!!』

剣撃は信長のベストに直撃したが、刃は表面の繊維に絡め取られ、信長の肉体に届く前に完全に勢いを殺された。

ケブラー繊維とセラミックプレートの複合装甲。異世界のナマクラ剣など、最初から計算外だ。

「な……ば、馬鹿な……」

ガイルの喉の奥で、乾いた音が鳴る。

「……遊びは終わりじゃ」

信長の警棒が、空気を裂いてガイルの手首を打ち据えた。

骨が砕ける嫌な感触と共に、剣が手から滑り落ちる。

「ぎゃあああああっ!!」

ガイルが手首を押さえて叫び声を上げた、その時だった。

『ルルォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!』

突如、森の奥から『地響き』のような唸り声が轟いた。

巨大な魔獣の咆哮ではない。それは、大気を震わせ、内臓を直接揺さぶるような、硬質で暴力的な『重低音』。

「な、なんだ!? なにが来る!?」

ガイルが顔を上げた瞬間、森の木々を薙ぎ倒しながら、二つの『巨大な太陽ヘッドライト』が暗闇を切り裂いて現れた。

『バキバキバキィィィッ!!』

太い幹をマッチ棒のようにへし折りながら姿を現したのは、黒光りする巨大な鉄の塊。

善行ポイントを惜しげもなくつぎ込み、義正が地球から取り寄せた『軍用大型四輪駆動車』だった。

排気ガスと、焼けたオイルの匂いが森を満たす。

圧倒的な質量の暴力。

「……あ、あぁ……」

四駆の強烈なライトに照らされたガイルの膝から、完全に力が抜け落ちた。

股間が温かい液体で濡れていく感覚すら、今の彼には認識できなかった。

運転席のドアが開き、算盤を持ったスーツ姿の男――義正が降りてくる。

「時間通りだな、信長。輝夜が村で豚汁を温め直して待ってるぞ」

「おう。ゴミの掃除は終わったところじゃ」

義正は算盤をチャラリと鳴らし、泥に塗れて震えるガイルを見下ろした。

「さて。お前たちの命の価値、きっちり計算(査定)させてもらおうか」

「ひっ……! い、命だけは! 命だけはお助けをぉぉっ!!」

剣も、闘気も、代官の権力も、すべてが無意味だった。

ガイルは頭を泥にこすりつけ、涙と鼻水を流しながら、ただひたすらに許しを乞うことしかできなかった。

ポポロ村を狙った悪意は、たった一夜にして、絶望的な敗北と共に完全粉砕されたのである。

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