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11.不穏な内乱ルートへの道



「しかし、年は少し離れているがなかなか似合いの二人じゃないか。俺は安心したよ」


(どう言う事……? てっきり辺境伯の怒りを鎮める為に公爵邸に連れて来たのかと思っていたのに…)


ただ旧友同士が久し振りの再会を喜び合っているようにしか見えない。


辺境伯は公爵閣下との若き日の武勇伝や、失敗談などを面白おかしく語り、皆でお酒を飲み交わし楽しい時間が流れていく。


(もしかして、王宮で話し合いはもう済んでいるの……? 陛下や公爵閣下が辺境伯の怒りを上手く鎮めたのかもしれないし……)


そうやって思い込もうとしても、やはり違和感は消えてくれない。


王宮で見たあの青白い怒りの炎が、そんなに簡単に吹き消せるとは思えなかった。


「あら、もうこんな時間。そろそろクリス達は部屋に戻って休みなさいな。お二人はお酒が入るとここからが長いのよ、いつまでもお若いつもりで困ってしまうわ」


「ははは、確かに!」


「それでは私達はこれで……。お二人ともあまり飲み過ぎないで下さいよ」


「なんだクリスまで、口うるさいと未来の妻に嫌われるぞ」


「はいはい。酔っ払いは放っておいて行こう、ルイーズ嬢」


私とクリストファー様はお義母様に退出を促され、和やかな笑い声を聞きながらご挨拶をして応接室を出る。


(これでお終い? 私は本当に紹介の為だけに呼ばれたの? 閣下の怒りを鎮めるのに青い瞳(ルシェルアイズ)を必要とされたんじゃ無かったって事……?)


この国では伝説の建国王ルシェルへの信奉が強く、青い瞳を受け継ぐ者は則ち黄金の龍様のご加護の現れと尊ばれる。


もし加護を持たない王太子が今回の失態で責任を取らされ、次代はクリストファー様と私だとなれば王国内はその正統性に沸くだろう。


国民の支持が大きければ大きいほど、カライラとの国交回復を推進する王太子派を抑えられ、辺境伯を始めとする反対派の意見を押し切りやすい。


だから振り上げようとしている拳を下ろして欲しい、と説得するのかと考えていた。


(クリストファー様が二度も婚約者としての紹介を確認したのは、王妃になる覚悟の確認だったんじゃ無かったの……?)


そして扉が閉められる瞬間、辺境伯の呟きが耳に滑り込んできた。




「……あんな小さかったクリスに婚約者か……そうか。……()()()はどんな嫁さんだったかなぁ」




咄嗟に振り返ってしまったけど、もう扉は閉じた後だった。


あの子……。

ぽつりと溢したその言葉に、どんな想いが込められているのか分からない。

安堵、憧憬、悲哀、悔恨


その声色を聞いた途端、感じていた違和感が霧散していく。


辺境伯はカライラ侵攻時に当時の国王陛下の指示によって援軍が遅れ、妻と生まれたばかりの息子を失っている。


生きていたら、クリストファー様と歳の近い「あの子」……。


(ああ、そうか……

やっぱり辺境伯は二度切り捨てた王家を許したりしない……。

もう二人とも覚悟が決まってるんだ。


王家に反旗を翻すのか、広大な辺境伯領の独立を目指すのか──どちらであっても次に会う時は剣を交える時だもん。


だから無用な議論もしない。ただ友人として交わす最後の杯を慈しんで……)


きっと、ここからは親友として苦楽を共にした二人だけの、最後の時間なのだ。


(この乙女ゲーム……もしかしてただの恋愛シミュレーションゲームじゃなくて、本当に内乱ルートがあるの……?)


私の暮らす平和だったゴートエルド王国が、まるで黒い霧に覆われて行く様だった。


ヒロインが王子様を攻略して、めでたし、めでたしの物語の結末を迎えたのに──


後は、悪役令嬢らしき自分が幸せになる道を探せば良いだけと考えていたのに──


所詮は乙女ゲームの世界。

それに自分が受け継いだ守護魔法があれば、何処へ行っても何とかなると現実を軽く受け止めていたのかもしれない。


甘い考えだった自分の足元が、大きく崩れる感覚がした。


一歩も動く事が出来ず扉を見つめていると、クリストファー様は悪い予想を追い出すように、私の頭をポンポンと優しく叩いた。


「今夜は疲れただろう、部屋まで送るよ」


私の顔を覗き込んだクリストファー様の夏の青空みたいな瞳には、労りと優しさが滲み出ている。


「何も心配しないでゆっくり寝るといい。両親も私も別に諦めた訳じゃないからね……出来たらもう少し時間稼ぎがしたいが」


「はい」と言おうとして、どうせ嘘はバレてしまうのだと思い直す。


「……とても眠れそうにありません」


「そうか、そうだな。……ルイーズ嬢さえ良かったら少し落ち着くまで部屋で話そうか」


そう言ってクリストファー様が少し乱れてしまった黄金に輝く髪を後ろに撫で付けると、その仕草に初めて大人の男性の色気を感じてしまい、ドキッと心臓が跳ねたが、


「いや、未婚の男女がこんな夜半に部屋で二人きりは、君の評判に傷が……?

やはり不味いか……」


と、眉間にシワを寄せ考え込んでしまった。


こんな非常時でもクリストファー様がいい人で、私はようやく肩から力が抜けたのだった。






ここまで読んで頂きありがとうございます。

今回は区切りが難しく、いつもより長くなってしまい申し訳ありません。

いいねも評価もブックマークも本当に心の支えになってます!

ゆるゆるの設定に加え酷く拙い文章ですが、完結まで頑張ります。

もう少しお付き合い頂けたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] もうクリストファー王、ルイーズ王妃ルートしか平和に終わる道がないじゃんw外堀どころか本丸囲まれてしまっている。 ルイーズさんもう諦めて良き王妃となりましょうって感じですね。
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