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第7話 面倒くさい

「ん?」


暫くダンジョンを進んだところで、俺は広い空間に出る。

するとそこに見知った姿があった。

メルゴ達だ。


ダンジョンはかなり広いんだが……まさか中で出くわす事になるとはな。


「あん?ジークか……つか、他のメンバーはどうしたんだ?」


此方に気づいたメルゴが声をかけて来る。

俺は最初から一人な訳だが、奴にはパーティーを組んでいると言ってあった。

なのに俺が一人でダンジョン内をうろついていれば、その疑問が口をつくのももっともな事である。


さて、どう答えた物か……


メンバーが俺以外全滅したとでも答えるか?

いや、駄目だな。

全滅する様な状況じゃ、ヒーラー一人で逃げ切るなんて普通は無理だ。

なので違和感が凄い。


仮に相手が信じたとして……万一その事で同情されたりすると、流石に気まずいものがある。


パーティーからはぐれた……も、ありえないわな。

そこまで複雑な地形でもなく、メンバーを分断する罠もないのに、そんな事起る訳がない。


それないっそ、パーティーメンバーが酷い奴らで俺を一人置いてどこかに行ってしまった。

とかの方が筋は通るな。


とは言え、これまた同情される可能性もあるので……


あんまり同情される系の嘘はつきたくないんだよな。

個人的に好きじゃないから。


「実はお前に言ったパーティーってのは真っ赤な嘘で、このダンジョンには一人で入って来てる」


もう面倒くさいので本当の事を話す事にした。

今の弱い状態で、注目を集める様な真似は疎かではある。


だが、所詮こいつらはハンターの中でも末端中の末端だ。

俺の異常性に気付いたとして『とんでもなく強いヒーラーがいる』なんて、そんな言葉を周りが真に受ける訳もない。


なので、この雑魚共に知られる分には何の弊害もないという事だ。


「はぁ?一人でだと?そりゃなんの冗談だ」

「大まじめだぞ。このダンジョン程度の魔物なら、俺の敵じゃないからな。だから一人だ。さっき嘘を答えたのは、お前に絡まれてその相手をするのが面倒だと思ったからに過ぎない。じゃあな」


説明も終わったので、さっさと先に進む。


「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待て!どこ行くんだおい!」


慌てた様子でメルゴが前に回り込んで来た。


「何か用か?」

「いや何か用かじゃねーよ!マジで一人なのか?お前馬鹿なのか?魔物に出くわしたら死ぬぞ?頭おかしいんじゃねーのか」


どうやらメルゴは、俺の話を微塵も信じていない様だった。

ヒーラーは糞雑魚って固定概念があるせいだろう。


「俺はいたって正気だぞ」

「いやだからどこ行く気だよ!」


横をすり抜けようとしたら、メルゴに肩を掴まれそうになって――躱す。


「はぁ……何度も言わさないでくれ。今の俺なら、このダンジョン如き楽勝なんだよ。だから人の邪魔してないで、お前は自分達の狩りにでも集中してろ」

「んな訳ねぇだろ!俺はテメーの事なんかなんとも思ってねーが、死ぬと分かってるやつを一人で行かせられるか」


無駄に正義漢のある奴で困る。

まあ賭けでぶん殴られたり――まあこれは賭けの内容的に仕方ない事だったが――人を小ばかにしてくるような奴ではあるが、ちょっと性格が良くないだけで、決して悪人じゃないからな。

こいつは。


とは言え、だからこそ面倒くさい。

悪人なら止められる事もなかった訳だからな。


「やれやれ……まあそうだな。なら、オークのいるところまで一緒についてきていいぞ。そいつを俺が始末するから、それ見りゃ納得するだろ?」

「おいおい、強がんなよジーク。俺に手も足も出なかったお前が、このダンジョンのオークを一人で倒せる訳ねぇだろ」

「一体いつの話をしてるんだよ」


こいつとの賭けで勝負したのは、もう1年も前の話だ。

あれからだいぶ時間が経ってるってのに、何故そのまま変わりないと思うのか?

ま、口で行っても無駄だろうし、行動で示すとしよう。


「まあいい。ついて来いよ。オーク狩りで俺の実力を見せてやる」


この場でメルゴを殴り倒すのが、俺の力を証明するのには一番手っ取り早い。

が、一応相手は善意で心配してくれているのだ。

そんな相手を殴り倒すのは流石にしのばれるので、魔物を倒す所を見せて納得させる事にする。


「やれやれ。皆、わりぃ。こいつほっとけないから、一緒に行動させてくれ」

「おう、別に構わねぇよ」

「見捨てて死なれたら、寝覚めが悪いしな」


メルゴとその仲間である二人が、俺の後をついて来る。

なので俺は背後を警戒しつつ進む。


また後ろからグサリとやられて死亡なんて、笑えないからな。


転生前の、俺の最後の黒星。

それは味方からの不意打ちだった。

同じ愚を繰り返すつもりはないので、危険性は限りなく0に近い状況だろうと、俺は決して気を抜きはしない。


「お、いた」


「ぶぎゃああああ!!」


ちょっと進んだところでオークと遭遇。

その数は三体。

こいつらをサクッと始末すれば、メルゴも納得す――


「ジーク!下がってろ!」


何故かメルゴが、俺の前に出て剣を構える。

他の二人も同じように動いた。

どうやら俺を守るつもりのようだ。


おいおい、面倒臭い動きしてくれんなよ。

ナイトじゃあるまいし。


まあいいか。

こいつらより先に倒せばいいだけだし。


俺はヒールブーストを発動させる。

そして三人の間を抜けて、オークへと突進した。


「待てジーク!」

「おい!」

「よせ!」

「ぶぎい!」


オークが目の前に迫った俺を狙い、頭上からこん棒を振り下ろして来た。

俺はそれを左手で払う形で軌道をそらし、そのままオークのデカい腹に拳を叩き込む。


俺の一撃を受け、盛大に吹き飛ぶオーク。

そしてその体は光の粒子となって消えていく。

もはやオーク如き一撃だ。


―—俺のレベルは現在十五。


ヒーラーはレベルが上がっても、前衛程身体能力は上がらないクラスだ。

だがそれでも、十五も違えばそれ相応の差にはなる。


更に魔力上昇によるヒールの効果上昇も大きい。

回復量が上がるという事は、肉体の活性度が上がるって事だからな。


なので今の俺のパワーは、ダンジョンに入った時の倍以上となっている。

そりゃオーク如き一撃で倒せるさ。


さらに続けて、残り二匹のオークもそれぞれ一撃で粉砕する。


「おわり……と」


振り返って確認してみると、メルゴ達が唖然とした顔で固まっていた。

まあこれでちゃんと伝わっただろう。

俺の強さが。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない。続きが期待できそう』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


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