第5話 まだここにいるのか?
翌日、俺は早速ダンジョンへと向かう。
住んでる街からは少し離れているので、朝早く出て、着いたのはお昼ごろだ。
「人が多いな」
アクセスはそれ程よくないが、レベル的に大人気な場所なのでダンジョン前にいる人間は多い。
こんな所で油を売ってないでさっさと中に入れよって気はしなくもないが、まあ待ち合わせなんかもあったりするのだろう。
きっと。
俺が最初に選んだのは、レベル三十前後の敵が出るEランクダンジョンだ。
難易度は下から二番目にあたる。
因みにランクは最低のFからE、D、C、B、A。
そしてS、SS、SSSランクの順に上がって行き。
全九段階に区切られている。
まあ区切りはだいたいレベル三十毎だ。
多少前後する事もあるので、少々大まかな区切りだが。
で、敵のレベルからも分かる通り、このダンジョンの適正レベルは三十前後。
なので、レベル一のハンターが単独で挑むのはほぼ自殺行為に近い。
しかも攻撃手段を持たないヒーラーなら、猶更である。
ただし、それは一般的なハンターに限った話だ。
当然俺にそれは当てはまらない。
「あん?ジークじゃねぇか?何でテメーがこんな場所にいるんだよ」
声に振り替えると、そこには鎧を身に着けたメルゴの姿があった。
それとあの日、彼と一緒にいた二人も。
どうやら彼らは、俺と一緒のダンジョンに入るつもりのようだ。
メルゴのレベルは、あの時点で確か八だったかな。
なんにせよ、一年かけてまだこんなダンジョンに来てるのかと思うと、その無能さに憐れみすら感じてしまう。
あ、そうそう。
メルゴは同じ町の生まれで、俺より二つ上の十八歳だ。
「ダンジョンで狩りをするために決まってるだろ」
「はっ!おいおい、そりゃなんの冗談だ?まさかヒーラーであるお前を、パーティーに入れてくれる奇特な奴らがいたってか?こいつは傑作だぜ」
「まあそんな所だ」
メルゴが馬鹿にしてくるが、俺は一々相手にしない。
戦いにおいて、冷静さというのは重要なファクターだ。
常に冷静に相手と自分の状況を分析してこそ、完璧な勝利が手に入るという物。
なので百戦錬磨の俺が、こんな子供の煽り程度で心乱される様な事はない。
「へっ、それでどいつがそうなんだ?」
「お前が気にする様な事じゃない。俺としても、メルゴみたいなガラの悪い奴と知り合いだと思われるとイメージが下がるからな。紹介はしない」
まあパーティーメンバーなんていないから、紹介しようがないだけではあるが。
俺は手を軽く振り、さっさとどこかに行けと、分かりやすいジェスチャーでそれをメルゴに伝える。
「てめぇ……誰のがらが悪いだと?」
メルゴの表情が険しくなる。
まさか侮辱と受け取ったのか?
自覚が無いってのは恐ろしい物である。
ここでこいつと揉めても意味がない。
なので取りあえず、話の方向性をずらして毒気を抜いとくか。
「お前は良いとこの坊ちゃん嬢ちゃんなのか?それとも……がらの良い、品行方正な戦士なんて気持ち悪いの目指してる訳じゃないだろうな?」
「そんなもん目指すか!」
「そりゃよかった。因みに、俺はヒーラーだからな。品行方正だぞ」
「ち、何が品行方正だよ。バカバカしい。ま、精々お仲間に捨てられないよう頑張んな」
上手く行った様で、メルゴ達は俺を置いてダンジョンのゲートへと向かう。
ダンジョンの出入りはゲートを潜る形で、ゲートを潜ると複数ある入り口のポイントにランダムで飛ばされる感じだ。
この際、パーティーを組んでる奴だけが同じ場所に飛ばされる。
まあ中はかなり広いから、少なくともダンジョン内でメルゴと顔を合わせる事はないだろう。
因みにダンジョンからの脱出は、複数ある脱出ポイントのゲートや、ボスや中ボスを倒すと出るゲートを使って出る感じだ。
なので、そこまで辿り着ける実力がない場合、入った時点で死亡がほぼ決まる事になる。
ま、運が良ければ他のパーティーに助けて貰えたりもするんだろうが……
そんな運頼りでダンジョンに入る奴は、ただの愚か者である。
だから余程の事がない限り、自力で脱出ポイントまで辿り着けないようなダンジョンにはいかない。
それが一般的なハンターのムーブである。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
『面白い。悪くない。続きが期待できそう』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。
評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。




