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第4話 話

「ジーク、帰って来てたのか」


夜遅くに父が帰って来た。

その顔は相変わらずやつれたままで、過労の色が濃い。


「ただいま……それより父さん、仕事のペースはちゃんと落とさないと。俺が結構稼いでるんだから」


鉱山作業はきついだけあって、かなり給金が良い。

まあ、冒険者家業に比べれば大した額ではないのだが、それでも一般的な仕事としては結構貰える方だ。

そして俺は給料をほぼ丸々家に入れているのだが……父はその金をあまり使おうとしなかった。


母曰く。

俺に何かあった時のために残しているそうだ。


まったく……わざわざ仕事で体を鍛える選択をしたってのに、そこで稼いだ金をちゃんと使って貰えないのなら、俺が効率を落としてまで働いた意味がなくなっちまうっての。


「ははは。まあ今は元気に働けてるから、しんどくなったら遠慮なく使わせて貰うよ」


どうみても今がまさにその時なのだがな……


因みに、父は魔法技師である。

魔法技師ってのは、マジックアイテムを製作する仕事だ。

この仕事も結構稼ぎは悪くなかったりするので、母が病気になる前までは、俺も結構裕福な暮らしをしていた。


「実はさ。俺、鉱山の仕事は止めて来たんだ」

「そうか」

「それがいいわ。きつい仕事なんだし」


俺の言葉に、父と母がにっこりとする。

始めるときも凄く反対されたからな。

親からしたら、子供が苦労するのは見てられなかったんだろう。


ちょっと気が重い……


俺が仕事を辞めて次にするのは、ダンジョンへ入って魔物を狩る事だ。

高速レベリングを決めてる俺の狩りは、鉱山での仕事とは比べ物にならない程危険を伴うことになる。


それを聞かされた両親がどんな反応をするか……

それを考えると、気が重くてしかたない。


よし!

脚色しよう!


親子だからって、全部丸々話す必要はない。

なので両親が受け入れやすそうな内容を、俺は即興でくみ上げる。


「実はさ、俺と一緒にダンジョンへ行ってくれるってパーティーが見つかったんだ。だからそいつらと一緒に、ンジョンで狩りをしようって思ってるんだ」

「ダンジョンで狩りを?ジークがかい?」

「でも、ジークはヒーラーだから……」


俺の言葉に二人の顔が曇る。


「ヒーラーでも良いって、受け入れてくれる仲間さ」

「そうか。だけど……ダンジョンは危険な場所だろう?父さんとしてはちょっと……」

「そうだね。安全とは言い切れないよ。でも……だからこそ、万一の保険にヒーラーが必要になるんだよ。仲間は超慎重な奴らでさ、だから俺もヒーラーなのにパーティーに誘って貰えたんだ。大丈夫、無茶な狩りはしないから安心してよ」


低ランクにもかかわらず、保険の為にヒーラーを入れるチキンパーティー。

こう言っておけば、両親もある程度納得してくれるだろう。

決して危険を冒す事はないと。


「魔物は危険な生き物だって聞くわ。どれだけ慎重に進めても、絶対って事はないのよ。私は、ジークが私の為に無理をして欲しくないの」


母が優しく諭してくる。

自分の為にダンジョンへ行くと思っているようだが……正直な所、俺にとってレベル二百で習得するスキルで母を治すのはおまけに近い。


いやまあ、おまけって言うのは流石に語弊があるが……


とにかく、俺の第一の目標は誰よりも強くなる事だ。

前世の自分さえ越える。

されこそが、俺にとっての至高の命題と言って良い。


そのため、母の病気の回復は次点でしかないのだ。

だから母の事があろうがなかろうが、俺はレベルを上げる為にダンジョンへと向かう事に変わりない。


それをどう伝えればいいのか……


上手い理由も思い浮かばないし、この際真っすぐ伝えてみるか。


「母さん。俺は子供の頃から強くなりたいって思ってた。そしてヒーラーとはいえ覚醒して、そのチャンスを得る事が出来た。だから……自分の力を試してみたい。決して母さんのためだけに、稼ぎの良い仕事としてハンターを選んだ訳じゃないんだ」

「……」


両親が黙って俺の言葉に耳を傾ける。


「鉱山の仕事だってそうさ。体を鍛えるって目的があったから、あそこを選んだんだ。ハンターとしてやっていく下地を作るために。だから分かって欲しい」


ありのままの本音だ。

まあ子供の頃からってのはあれだが。

強さを求めるっていう趣向は、前世の記憶ありきだし。


「わかった。お前がそうしたいなら、父さんはもう反対しない」

「お母さんとしては……貴方にはハンターにならずに、普通のお仕事について欲しかったわ。でも……それがジークの夢ならしょうがないわよね」

「ありがとう。父さん母さん」


二人が理解を示してくれる。

うん、やはりこういう時は真摯に思いを伝えるに限るな。

ま、相手が優しい善人である事前提ではあるが。


「でもこれだけは約束して、ジーク。母さんのために、レベル二百を無理して目指すのだけはやめて欲しいの。だから」

「うん、約束するよ。《《母さんのためにって理由》》で、僕は絶対にレベル二百は目指さない」


俺が目指す目標は最強である。

そのためにレベルは上げるし、当然カンストを狙う

そう、全ては自分自身のため。


その過程でレベルが二百になり、母さんの病を治したとしても……それはおまけに過ぎない。

だからまあ、嘘はついていないって訳である。


さて……明日からレベル上げを頑張るとしようか。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない。続きが期待できそう』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


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