↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

第3話 労働

転生先の家は貧しかった。

理由は母親の患っている石化症のためだ。


これ自体に薬はなく、治療薬の類の代金は必要ない。

問題は、石化症によって引き起こされる激痛だ。

それを緩和するための、副作用の少ない痛み止めにかなり金がかかっていた。


父親も一生懸命働いてはいるが、その稼ぎの大半がその薬代で飛んで行っている感じなので、転生先の我が家は貧しい。


正直、最強へと1秒でも早く至るための鍛錬に専念したいというのが本音だ。

だが、苦しむ母親を放っておく訳にもいかない。

なにせ俺を生み、二度目の人生を、チャンスを与えてくれた人な訳だからな。

純粋な親への慕情があるとは言えないが、しっかり恩返しはせんと。


そこで俺が出した答えは、体を鍛えられる類の重労働の仕事に就く事だった。


選んだのは鉱山の堀り子。

つるはしを振り回してガンガン岩面を砕き、鉱物を掘り出す仕事である。


最初は肉体的にきつかったため、軽度のヒールブーストを入れていたが、一年経つ頃にはそんな物なしでも問題ないレベルに体は仕上がっていた。

現場監督の壮年の男には『お前は根性があるからもう一年どうだ?』と誘われたが、俺はそれをきっぱりと断る。


「悪いな。俺はハンターだから、ダンジョンで稼ぐ予定なんだわ」


仕事を軽くこなせるようになった以上、この労働でこれ以上肉体を効率よく鍛えるのは難しい。

そして今の俺なら、ダンジョンにソロで潜ってこの鉱山仕事よりも稼ぐことは容易い筈だ。


なのでここからは、ダンジョンで稼ぎつつレベル上げと、本格的な訓練を並行してやって行くつもりである。


「お、お前覚醒者だったのか?だったらなんでこんな仕事を?」


ハンターは覚醒したクラス持ちを指し、その強さは一般人とは一線を画す存在だ。

レベルが上がった際のステータス上昇に加え、スキルや専用の魔法まで手に入る訳だからな。

なので、覚醒者と被覚醒者の隔たりは大きい。


そのため、普通はこういった仕事に覚醒者が流れて来る事はない。

ダンジョンの方がずっと稼げる上に、レベル上げも出来るからだ。

だから監督は驚いたって訳である。


因みに、覚醒者の割合は全体の5%程度だ。


「俺はヒーラーなんだ。鍛えないと、魔物と真面に戦う事も出来ないからな」


ヒーラーである事を隠す気はない。

ただまあ、虎の子ともいえるヒールブーストをオープンにする気はないが。

あまり目立ち過ぎると、周りに目を付けられる事になってしまうからな。


今の俺は、前世に比べて遥かに弱い。

この状態で全てを曝け出すなど、野犬の群れに裸で突っ込む様な物である。


だから牙は隠す。

少なくとも、自分の身を最低限守れる強さを手に入れるまでは。


「ヒーラーか……こういっちゃなんだが、ヒーラーでダンジョンは厳しいだろう?このままここで仕事をしてた方が、安全に稼げるんじゃないか?」

「若いうちは何事にも挑戦しないと。安定を求めるのは年を喰ってからでいい。だろ?」


相手を納得させるため、それっぽい事を口にしておく。

ま、前世で三十代まで生きてるので、今世と合わせれば全然若くはない訳だが……まあ肉体は若いからな。


「はっはっは、ちげぇねえや!」


監督が俺の言葉に豪快に笑う。

どうやら、適当に口にした理由をお気に召してくれた様だ。


「じゃあ俺はこれで」

「おう!頑張れよ!」


仕事を辞めた俺は家へと帰る。

ここでの仕事は住み込みだったので、三か月ぶりの帰宅だ――だいたい、三か月に一度のペースで帰っていた。


「ああ、ジーク」


現場からはそこそこ距離があり、一日かけて家に帰ると、母が俺に駆け寄ってきて抱きしめて来る。


「ただいま、かあさん」


病に侵され、その体は驚くほどに細い。

待っててくれよ。

そう遠くない未来、レベル二百で取得できるスキルで治してやるからな。


「ごめんなさいね。私のせいで貴方に辛い思いばかりさせてしまって」

「これ位どうって事ないさ。それよりお腹がすいてるんだ。何か食べられる物はない?」

「直ぐに用意してあげるわ。待ってて」

「うん、お願い」


病気の人間を使わず、自分で用意しろと思うかもしれないが、母は自分で出来る範囲は絶対に自分でしたがる人だ。

そして家族のために動かせてあげる事で、少しでも心理的負担を軽減してやりたいという思いから、わざと俺は腹を空かせて返って来たのである。


「今日あたり帰って来ると思ってたの。だからほら、ジークの大好物よ」


出されたのは、鳥タイプの魔物の肉がはいったシチューだ。

そう高い物ではないが、俺はこの母の作ってくれたシチューが大好きだった。


前世では、食いものなんて栄養があれば何でもいいなんて思ってたんだけどな……


この味を知ったら、もうあの頃には戻れそうにない。


「凄く美味しいよ。母さん」


俺は母の出してくれたシチューにがっついた。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない。続きが期待できそう』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。