第16話 婚外子
「私は今……ギルドのメンバーを集めてるのよ。それであんたに声を掛けたの」
ギルドへの勧誘。
ポーションを飲み、鼻血が止まったメスティアがそう口にする。
ギルドってのはパーティーよりも大きい範囲の集まりで、高難度ダンジョンに挑むような奴らなんかが所属している集団だと思って貰えばいいだろう。
「魅了の力であいつらみたいに支配して、俺をギルドへ入れようって魂胆だった訳か」
俺はメスティアの周りにいる3人へと視線をやる。
「なっ!?そんな訳ないでしょ!」
指摘したらメスティアが声を荒げ否定する。
本気で否定しているように見えるが……この反応が演技なのだとしたら大した女優様って所だな。
「人に思いっきりスキルを使っておいて、そんなつもりはなかったなんてなんの冗談だ?」
「お嬢様の能力はそこまで強力じゃない。あくまでも好意を大きくする程度だ」
どうやら大した効果はない様だ。
まあ、メロウスの言葉を鵜呑みにするつもりはないが。
「スキルは最初のきっかけとして利用してるだけよ。それだけでギルドに縛り付けるなんて出来る訳ないじゃない」
まあ確かに。
短期間なら兎も角、ギルドとなれば長期間行動を共にする事になる。
ずっと解かれずに居続けるってのは少々無理があるか。
「なるほど……しかし解せないな。あんたは英雄様の娘だろ?なら、英雄学園の生徒に声をかければいいだけだろうに。なんでわざわざ、どこの馬の骨とも分からない輩にスキルを使ってまでギルドのスカウトを行うんだ?」
俺を裏切った奴らは、それぞれがハンター育成機関。
英雄学園を設立している。
そこに入れるのはユニークスキル持ちか、超レアなクラスだけ。
そんな奴らが好環境で教育を受ける場所、それが英雄学園だ。
当然そのレベルは一般のハンターを越える。
そして彼女は、そんな英雄学園の一つを所有する英雄の一人娘。
スカウトするなら断然そちらで行うのが効率がいいはず。
なになぜ、在野の有象無象をわざわざスカウトするのか?
それが気になったから尋ねたのである。
「……」
俺の問いに、メスティアがしかめっ面になって顔を伏せ。
メロウスは困った様な顔になる。
どうやら、口にしたくない事情があっての行動の様だな。
「親子喧嘩でもしてるのか?」
ポンと頭に浮かんだ言葉を口にする。
仲が悪いのなら、娘のスカウトの妨害をするのは十分考えられる事だ。
親子だからって、なんでもかんでも仲良しになる訳じゃないからな。
「まあそんな――」
「私は婚外子よ」
メロウスが俺の問いを流そうとして、だが、それを遮ってメスティアが事情を口にする。
婚外子と言うのは、婚姻なしで生まれたこの子だ。
「なるほど」
婚外子は世間体が悪いからな。
なので、正式には認知されていない。
もしくは、認知自体はされてはいるが軽んじられてるって所なんだろう。
どちらにせよ無責任極まりない行為だ。
ま、仲間を裏切るような奴に真面な倫理観がある訳もないか。
まあ……俺も倫理観がしっかりしてるかと聞かれると少しあれだが。
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